6月20日 PPACA合憲判決3回目
Source :Obamacare Wins For The 3rd Time At The Supreme Court (NPR)
6月17日、連邦最高裁は、PPACAの合憲性を認める判決を下した(「Topics2020年11月12日 最高裁:PPACA審理開始」参照)。これで制度発足後、連邦最高裁が合憲性を認めたのは3回目である。

加えて、最高裁判事の賛否が7対2と、賛成が大きく上回っている。 (○=合憲 ×=違憲 △=保留)

Current Justices of the US Supreme Court

Name Born Appt. by First day University ①2012年6月 ②2015年6月 ③(2020年11月) ③2021年6月
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale ×××
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale ××××
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard ×
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-26 October 26, 2020 Notre Dame Law School
驚きは、保守派のClarence Thomas判事が寝返ったのである。これで、Roberts長官は、安心して合憲意見書の書き手をBreyer判事に預けられたのだろう。また、トランプ大統領指名の判事3名のうち、2名が賛成している。

こうした状況から、PPACAの合憲性を巡る訴訟はしばらくないものと思われる。制度として安定したと判断される。

Medicaid拡充策、Exchange、既往症に基づく保険加入拒否の禁止など重要なPPACAの柱のおかげで、COVID-19の感染爆発を乗り切れていることも現実である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「司 法

6月19日 AR州:Medicaid拡充策代替案
Sources : Senate Approves ARHOME, new version of Medicaid expansion (The Senate of Arkansas)
Medicaid Expansion in Arkansas: A Timeline (ACHI)
これも見落としていた動きだ。Arkansas州(AK)は、Medicaid拡充策に就労義務規定を盛り込んでいたが、司法からノーを突きつけられていた(「Topics2020年2月19日 控訴裁も就労義務規定停止」参照)。また、バイデン政権も認めない方針を打ち出している(「Topics2021年1月29日(1) 医療保険強化策を指示」参照)。

そうした状況の中、AK州議会は、Medicaid拡充策の代替案(SB 410)を可決した。そのポイントは次の通り。
  1. Medicaid拡充プラン(Arkansas Health and Opportunity for Me, ARHOME)は、従前案と同じく民間保険で運営する。

  2. 働いていない、学校に通っていないなどの場合には、従来の伝統的なMedicaidに移行する。

  3. 民間保険の方が、様々な保険給付が付加的についているため、働くインセンティブとして作用する。

  4. 医療機関への診療報酬も、従来のMedicaidよりも高い水準になるので、医療機関にとってもお得である。

  5. 同プランが施行されれば、約31.1万人の加入が見込まれる。
この法案の可決は3月30日だったが、州知事の署名を得て、4月5日に法制化された。また、この法案の施行に必要な財源手当て法案についても、4月20日に州議会で可決され、州知事に送致されている(州知事が署名したのかどうかは確認できなかった)。

AR州政府は、7月までに連邦政府(HHS)に提出する意向だ。

なお、上記sourceでは、2013年からこれまでのAK州のMedicaid拡充策の変遷をまとめている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/AR州

6月18日 州別企業保険プランの現状
Source :Employer-Provided Health Coverage: State-to-State 2021(AHIP)
上記sourceは、企業提供医療保険プランの現状を、州別にまとめた資料。州別医療保険政策を考える際に、参考になる。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/州レベル全般

6月17日(1) Juneteenth祝日に
Sources : House moves quickly to send Biden a bill creating Juneteenth federal holiday (Los Angeles Times)
Juneteenth Will Be a New Holiday for Feds, Although It’s Unclear When (Government Executive)
6月16日、連邦議会下院は、Juneteenthを連邦の祝日にするという法案(S 475)を可決(Roll Call 170)し、大統領に送付した。上院は、前日の15日に可決している。 連邦祝日の正式名称は、"Juneteenth National Independence Day"。

ところで、今年のJuneteenth(6月19日)は土曜日である。通常、連邦祝日が土曜日に当たる場合には、連邦政府職員の休日は金曜日に移される。連邦議会から大統領に送付されたのが水曜日であり、ぎりぎりのタイミングである。しかも、下院がこの法案を可決した時点で、バイデン大統領は訪欧からの帰路で、Air Force Oneの機中である。

バイデン大統領が署名することは間違いないだろうが、それが何時なのか、今年の6月19日は連邦の祝日になるのか、連邦職員は休みを取れるのか。たくさんの課題を一日で決めなければならない。

(6月18日 追記)

6月17日午後、バイデン大統領がS 475署名した。これにより同法案は発効した(NPR)。6月19日(土)は連邦の祝日となる。

これに先立ち、OPMは連邦政府職員の祝日の取り方について、ガイドラインを公表した。ポイントは次の通り(Government Executive)。
  1. ほとんどの連邦職員は、6月18日金曜日が休みになる。

  2. 6月18日に閉鎖となる連邦機関で働くパートタイマーは、休みとなる。

  3. 6月18日または19日に開く連邦機関で働く職員は、休日特別手当を受け取る。

  4. 6月18日に働くスケジュールになっていない場合には、6月17日木曜日を休みにするか、休日特別手当を受け取る。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

6月17日(2) 気候変動とERISA
Sources : DOL Plans Minimum-Wage Hike for Contractors, Help for Tipped Workers (SHRM)
Executive Order on Climate-Related Financial Risk (The White House)
見落としていました。5月20日に出された「気候変動に伴う金融面でのリスクに関する大統領令(Executive Order on Climate-Related Financial Risk)」では、労働省に対して、気候変動に関連する金融面でのリスクへの対応を検討するよう、指示が出た。該当部分は次の通り。

Sec. 4 Resilience of Life Savings and Pensions. In furtherance of the policy set forth in section 1 of this order and consistent with applicable law and subject to the availability of appropriations, the Secretary of Labor shall:

  (a) identify agency actions that can be taken under the Employee Retirement Income Security Act of 1974 (Public Law 93-406), the Federal Employees’ Retirement System Act of 1986 (Public Law 99-335), and any other relevant laws to protect the life savings and pensions of United States workers and families from the threats of climate-related financial risk;

  (b) consider publishing, by September 2021, for notice and comment a proposed rule to suspend, revise, or rescind “Financial Factors in Selecting Plan Investments,” 85 Fed. Reg. 72846 (November 13, 2020), and “Fiduciary Duties Regarding Proxy Voting and Shareholder Rights,” 85 Fed. Reg. 81658 (December 16, 2020);

  (c) assess — consistent with the Secretary of Labor’s oversight responsibilities under the Federal Employees’ Retirement System Act of 1986 and in consultation with the Director of the National Economic Council and the National Climate Advisor — how the Federal Retirement Thrift Investment Board has taken environmental, social, and governance factors, including climate-related financial risk, into account; and

  (d) within 180 days of the date of this order, submit to the President, through the Director of the National Economic Council and the National Climate Advisor, a report on the actions taken pursuant to subsections (a), (b), and (c) of this section.

久しぶりに、ERISA、受託者責任が議論されそうである。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「受託者責任」、「DB/DCプラン

6月16日 大統領令で最低賃金引上げ(2)
Source :DOL Plans Minimum-Wage Hike for Contractors, Help for Tipped Workers (SHRM)
労働省(DOL)は、6月11日、大統領令に基づく法令の見直しに関する方向性について公表した。

上記sourceによると、連邦政府と契約している企業の最低賃金については、次のようなスケジュールを想定している。赤字の部分が新しい情報である(「Topics2021年4月29日 大統領令で最低賃金引上げ」参照)。
  1. 通常の労働者に関する最低賃金は、
    1. 2022年1月30日~:新規の契約において、$15/h(現在は$10.95/h)

    2. 2022年3月30日までに:全ての契約において$15/hが盛り込まれた状況にする。

    3. 2023年1月1日以降:CPIに連動

  2. チップ受取労働者に関する最低賃金は、
    1. 2022年1月30日~:$10.50/h(現在は$7.65/h)

    2. 2023年1月 1日~:上記通常労働者最低賃金の85%

    3. 2024年1月 1日~:上記通常労働者最低賃金と同額(=チップ受取労働者最低賃金の廃止)
この最低賃金引上げ措置により、最低賃金労働者の年収は、約$21,900から約$30,000に増加する。

※ 参考テーマ「最低賃金

6月15日 OK州:Medicaid拡充加入者数
Source :More than 100K Oklahomans sign up under Medicaid expansion (Modern Healthcare)
Oklahoma州(OK)のMedicaid拡充が、7月1日から施行される(「Topics2020年7月3日 OK州:Medicaid拡充」参照)。

それに先立ち、6月から加入手続きが開始された。当局の発表では、既に10万人以上が加入手続きを終えた。都市部で6万人、郊外部で4万人という内訳だ。

当初の計画では、約21.5万人が加入すると見込まれていて、それに必要な経費は$1.3B、うち州政府負担は$164Mとなっている。しかし、最終的には当初計画以上の申請があるものと見られている。昨年7月当時のコロナ感染状況から今年初めにかけて大幅に悪化し、それに伴って、所得を失ったり、企業保険プランを失ったりした人が大幅に増えているためだ。

Johns Hopkins University & Medicine
逆に言えば、昨年7月に拡充を決めておいてよかったとも言える。

ところで、Medicaid拡充の状況は、1年前に較べてわずかだが広まっている。NE州が拡充済みとなっている(「Topics2020年7月23日 NE州:Medicaid拡充」参照)。拡充しないのは12州のみであるが、下図で施行予定となっているMO州は、拡充申請を取り下げており、どうなるかは不透明なままだ(「Topics2021年5月15日 MO州:Medicaid拡充申請取り下げ」参照)。。

Center for Budget and Policy Priorities
※ 参考テーマ「無保険者対策/OK州

6月13日 失業保険上乗せ給付停止
Source :These Four States Are Cutting A Key Lifeline For The Unemployed (NPR)
7月12日、4つの州が、連邦政府負担失業保険上乗せ給付を停止した。Mississippi州(MS)、Missouri州(MO)、Iowa州(IA)は「$600+$300」の全額、Alaska州(AK)は「$300」のみの給付停止だ(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)(「Topics2021年3月8日 コロナ経済対策法案上院修正可決」参照)。これらの措置により、30万人が影響を受けると言われている。

そして、6月から7月にかけて、続々と上乗せ給付停止が予定されている(「Topics2021年5月26日 失業給付上乗せ停止を検討」参照)。いずれも共和党が州知事を務めている州だ。先の4州と合わせて、合計25州にのぼる。
これらの州知事は、『ワクチン接種が広がった。それなのに雇用が戻らない。失業給付上乗せがあるからだ』という考え方だ。

しかし、当websiteで既に紹介した通り、労働市場に戻らない理由は様々な事情による。特に、女性の場合は失業給付上乗せだけではとても説明できないほど、その理由は多様だ(「Topics2021年6月5日 労働参加率が戻らない」参照)。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「労働市場

6月12日 大学進学者数が急減
Source :Spring Numbers Show 'Dramatic' Drop In College Enrollment (NPR)
大学への進学者数が大きく落ち込んでいる。

昨年秋の進学者数は、前年比3.6%減。今年春の進学者数は、前年比3.5%減だった。
2012年頃から続いている減少傾向がより一層鮮明になった(「Topics2019年12月21日 大学入学者数の減少」参照)。
特に、community collegesへの進学が前年比9.5%減と、大きく落ち込んだ(「Topics2020年12月11日 Community Colleges入学者減少」参照)。Community collegesは、州政府からの財政支援が大きく、中低所得層の子供たちにとっては、高学歴を取得できる絶好の機会となっている。大きく落ち込んでいる理由は様々のようだが、コロナ禍で家計収入が毀損したことが最大の理由の一つになっていることは間違いない。

機会平等の最後の砦とも言うべきcommunity collegesすら、経済的理由で進学を断念せざるを得ないということは、アメリカ社会にとって大きな危機である。

※ 参考テーマ「教 育

6月11日 "Network Workers"法案
Source :Uber and Lyft Ramp Up Legislative Efforts to Shield Business Model (New York Times)
Uber/Lyftは、CA州に続いてNY州で、gig workersを独立請負契約者として位置付けようと試みている(「Topics2020年11月5日 CA州:Prop.22可決」参照)。

両社は、一部の労働組合関係者と相談しながら、"Network Workers"法案を検討している。その概要は次の通り。
  1. Gig workersを独立請負契約者として位置付ける(従業員ではないと位置付ける)

  2. Gig workersに職業別組合を結成する権利を認める(ドライバーと配達員は別々)。仮に結成されれば、15万人の労働組合員が誕生する。

  3. この労組との労使交渉により、最低賃金を設定する。

  4. また、DCプランのようなポータブルなベネフィットを提供する。

  5. 労組結成にあたっては、単一の労働組合に対して、会社のEメールシステムを通じてドライバー・配達員にアクセスする権利を付与する。

  6. 対象となる労働者の10%が労働組合に加入した場合、全対象労働者を代表する唯一の労働組合となる。

  7. 組合費の徴収は、労働者の売り上げの中から会社が代理徴収する。

  8. 労使交渉中の労働争議を禁止する。

  9. 公的な失業保険を適用しない代わりに新しい制度を設ける。給付水準は低く、受給する条件も厳しくなる。

  10. Gig workersの労働に関する自治体によるルール設定を禁止する。
5.~8.は、まさに「御用組合」の性格である。流石に労働組合本流筋からは賛同を得られていないようだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合