1月30日 最低賃金$15/hへの懸念
Source :Employers Likely to Seek Exceptions in $15 Minimum Wage Bill (HR Daily Advisor)
バイデン大統領が打ち出した連邦最低賃金$15/hへの引き上げに対し、早くも懸念の声が上がっている(「Topics2020年1月26日 最低賃金$15/h第一歩」参照)。
  1. 小規模企業、個人事業はとっても負担が大きく、例外措置を講じるべきだ。

  2. 特に、COVID-19感染拡大に伴い、レストラン、旅行、レジャー、運輸などの業種では大打撃を受けている。そこに最低賃金引き上げが重なれば、とても耐えられない。

  3. 既に自主的に賃金を$15/hに引き上げると表明している企業にとっても、連邦最低賃金が$15/hになってしまえば、自社従業員は『最低賃金』で雇われていることになる。これは雇用政策上、不利になる。(「Topics2020年12月17日 Starbucksの最低賃金」参照)

  4. 最低賃金を$15/hに引き上げることを決めている州もあるが、その引き上げペースはゆっくりとしたものであり、企業の負担増に配慮している。それに較べて、連邦下院民主党が提示したスケジュールはペースが早すぎる。(「Topics2020年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)
最後の4点目の指摘はその通りだ。そもそも現時点での水準が$7.25/hと低く、しかも$15/hに到達するまでに実質4年間しかみていない。4年間で$7.75の引き上げ幅だ。
一方、CA州のスケジュールは、6年間で$5の引き上げとなっている(「Topics2016年4月7日(1) CA州:最低賃金$15」参照)。
現  在$10.00/h
2017年1月$10.50/h
2018年1月$11.00/h
2019年1月$12.00/h
2020年1月$13.00/h
2021年1月$14.00/h
2022年1月$15.00/h
2023年~CPI上昇率で引き上げ
また、NY州のスケジュールは、NY市こそ相当早いが、郊外地域のスケジュールは相当手厚く配慮されている(「Topics2016年4月7日(2) NY州も最低賃金$15」参照)。
 NY市(従業員11人以上)NY市(従業員10人未満)Nassau, Suffolk, Westchesterその他地域
現  在$ 9.00/h$ 9.00/h$ 9.00/h$ 9.00/h
2016年末$11.00/h$10.50/h$10.00/h$ 9.70/h
2017年末$13.00/h$12.00/h$11.00/h$10.40/h
2018年末$15.00/h$13.50/h$12.00/h$11.10/h
2019年末$15.00/h$13.00/h$11.80/h
2020年末$14.00/h$12.50/h
2021年末$15.00/h定められた指標により
$15/hまで引き上げ
※ 参考テーマ「最低賃金

1月29日(1) 医療保険強化策を指示
Sources : Biden Revokes Trump Abortion Policy, Takes Steps To Shore Up Affordable Care Act (NPR)
FACT SHEET: President Biden to Sign Executive Orders Strengthening Americans’ Access to Quality, Affordable Health Care (The White House)
1月28日、バイデン大統領は、連邦政府関連省庁に対し、医療保険制度全般を見直すよう大統領令を発した。その中で触れられた具体策は次の2点。
  1. HealthCare.govに特別加入期間(2月15日~5月15日)を設ける。

  2. Medicaidの特例としてきた「就業義務規定」を見直す。
昨年、COVID-19感染が拡大し始めた時期、連邦議会民主党では、Exchangeへの中途加入を認めるべきだとの意見が盛り上がっていた(「Topics2020年3月24日 Exchange中途加入」参照)。それが実現しそうな流れになった。

Medicaidの就労義務規定については、12州が認められている(「Topics2020年10月27日 GA/NE州:就労義務規定認可」参照)。しかし、そのうち4州は司法によって施行が止められており、そのほかの8州はまだ施行に至っていない(Kaiser Family Foundation)。いわば、ここで就労義務規定が廃止になっても現実的には大きな問題とはならない。
加えて、連邦最高裁でその有効性が審理されることになっており、その結論は今年6月までには示される(「Topics2020年12月7日(3) 就労義務規定 最高裁が審理」参照)。

いよいよ、民主党政権によるPPACA強化への道が始まる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

1月29日(2) 新規失業一進一退
Source :Jobless claims rise less than expected at 847,000 first-time applicants (CNBC)
1月28日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は84.7万人、前週から6.7万人の減少となった(「Topics2021年1月22日 新たな失業者は増加」参照)。一進一退を繰り返している状況だ。45週間で累計7,647万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は477.1万人と、こちらも20.3万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.1万人
9/ 5: 86.8万人
9/12: 67.5万人
9/19: 61.6万人
9/26: 50.8万人
10/3: 37.9万人
10/10:33.7万人
10/17:34.5万人
10/24:35.9万人
10/31:36.2万人
11/7: 29.6万人
11/14:32.0万人
11/21:31.9万人
11/28:28.8万人
12/5 :41.5万人
12/12:45.4万人
12/19:39.7万人
12/26:30.8万人
1/ 2 :16.1万人
1/ 9 :28.5万人
1/16 :42.4万人
1/23 :42.7万人
と、こちらは3週連続で増加となった。

一方、COVID-19感染状況を見ると、バイデン効果なのか、波が収まりつつあるように見える。。

Johns Hopkins University Health
また、現時点で手が付けられない状況に陥っている州は、ほぼ全州という状況が続いている。

COVID Exit Strategy
※ 参考テーマ「労働市場

1月28日 最低賃金引上げ法案2021
Source :House Dems seek to boost minimum wage to $15 by 2025 (HR Dive)
1月26日、下院民主党は、連邦最低賃金引き上げ法案(The Raise the Wage Act of 2021)を提出した。

ポイントは次の2点。
  1. 連邦最低賃金(Minimum Wage)を2025年までに、段階的に$15/hまで引き上げる。その後は、民間賃金(中位数)上昇率に合わせて変動させる。

  2. Subminimum WageTipped Minimum Wageを縮減、廃止する。(「Topics2015年2月8日 Tipped Minimum Wage」参照)
想定スケジュールは次のようになっている。
課題は、雇用への影響だ。2019年7月、CBO連邦賃金引き上げの雇用への影響を試算、公表している。それによると、連邦最低賃金を$15/hに引き上げた場合、130万人の雇用が失われる。
この点をどう評価するのか、またこうした現象が本当に生じるのか、これから争点になろう。

2019年にも下院民主党は同様の法案を提出していて、下院では可決したものの、上院で審議未了となった(「Topics2019年3月16日 最低賃金引上げ法案」参照)。今回は、上院で多数を握っていることから、可決、成立する可能性が高まっている。先の大統領令とともに、着々と手を打っている(「Topics2021年1月26日 最低賃金$15/h第一歩」参照)。

※ 参考テーマ「最低賃金

1月26日 最低賃金$15/h第一歩
Sources : Biden Aims for Federal Contractors to Pay a $15 Minimum Wage (Government Executive)
Executive Order on Protecting the Federal Workforce (The White House)
Fact Sheet: President Biden’s New Executive Actions Deliver Economic Relief for American Families and Businesses Amid the COVID-19 Crises (The White House)
1月22日、バイデン大統領は、連邦政府職員並びに連邦政府契約会社従業員に関する最低賃金について、大統領令を発した。
  1. OPMは、大統領に対し、連邦職員の最低賃金を$15/hに引き上げるよう推奨する報告書を提出する。

  2. 同じく、OPMは、連邦政府契約会社従業員の最低賃金を$15/hにすることを求める大統領令を発出するための準備作業を開始する。
これが実現すると、民間企業従業員70万人の賃金が引き上げられることになるそうだ。また、連邦政府と契約しているコールセンターなどでは女性従業員が多く、大きな支援になると見られている。

バイデン大統領は、『連邦最低賃金$15/h』実現への第一歩を踏み出したことになる(「Topics2021年1月16日 バイデン$1.9Tプラン」参照)。

※ 参考テーマ「最低賃金

1月25日 ギグワーカーとバイデン政権
Source :Biden campaigned on making gig workers employees. Now he has to convince Democrats. (Washington Post)
バイデン大統領は、選挙キャンペーン中、ギグワーカーを『従業員』にすべきだ、と訴えていた。しかし、連邦レベルでそのような法制を目指すことは簡単ではなさそうだ。

上記sourceでは、その理由がいくつか挙げられている。
  1. ギグワーカーの働き方が一様ではない。しかも、そうした働き方に求めれているのが、金銭であったり、自由な働き方であったりと、ギグワーカーの労働インセンティブが多様である。連邦政府の法制で一つの働き方/雇い方のパターンを創出するのは難しい。

  2. 昨年11月のCA州州民投票により、CA州AB5が大差で否決された(「Topics2020年11月5日 CA州:Prop.22可決」参照)。

  3. ビジネス活動を重視する民主党中道派や、共和党の基盤が強い選挙区から選出されてきた民主党議員が、消極的な姿勢を示している。

  4. ハリス副大統領の義理の兄弟が、Uberの法務担当役員を務めている。彼女ばかりでなく、オバマ政権で重職を務めていた人たちが、ギグワーカーを利用した企業の役員に就いている。
ここでバイデン政権が消極的な姿勢に転じれば、今度は民主党左派が黙っていない。実際、昨年2月、連邦議会下院では、民主党が主導してギグワーカーに団体交渉権を賦与する法案(the Protecting the Right to Organize Act)を可決している。

バイデン政権にとっては、進むも退くも厳しい場面である。そうなると、しばらくは州ごとの取り組みになるしかない(「Topics2020年7月30日 Uber/Lyft包囲網」参照)。これは企業にとっては面倒な状況となる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

1月24日 労組加入率/組織率上昇
Source :Union Membership Byte 2021 (Center for Economic and Policy Research)
1月22日、労働統計局(BLS)は、2020年労働組合加入率/組織率を公表した。

2020年の加入者は、昨年に較べて減少しているものの、加入率/組織率とも上昇した(データ)。COVID-19によって雇用が大幅に減少したために、分母が小さくなったことが大きな要因だ(「Topics2021年1月9日 雇用減に転落」参照)。
それは、州別に見ても、昨年取り上げたNY州、TX州とも同じ傾向となった。

BLS
民間部門、公的部門で見ても、男女別で見ても、この傾向は同じだ。
男女の数字を見ると、男性の上昇幅は0.1%ポイントだが、女性の上昇幅は1.3%ポイントとなっている。ここでも、女性の雇用が大きな打撃を受けたことがわかる(「Topics2020年4月9日 女性比率ダウン」参照)。

※ 参考テーマ「労働組合

1月23日 移民政策執行制度の見直し
Source :Biden Suspends Deportations, Stops 'Remain In Mexico' Policy (NPR)
1月20日、Department of Homeland Security (DHS)は、次の3つの措置を発表した。
  1. 1月22日から100日間、不法移民の国外退去措置を停止する(Press Release)。(「Topics2019年11月18日 恐怖の日々」参照)

  2. 1月21日より、Migrant Protection Protocols (MPP)の適用を停止する(Press Release)。これは、メキシコ以外の国から陸路でメキシコ・アメリカ国境に到達し、難民申請を行なおうとする者を、メキシコ側にとどめ置き、裁判所の審理を待たせるというプログラムで、別名"Remain in Mexico"と呼ばれている。2019年1月の開始以来、約6万人がこのプログラムに入って、裁判所の審理を待っている。さらに、ホンジュラスから難民キャラバンが押し寄せようとしている(「Topics2021年1月20日 ホンジュラス難民の波」参照)。

  3. 移民政策の執行制度を全面的に見直す(Memorandum)。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

1月22日 新たな失業者は増加
Source :Unemployment Claims Stay Stubbornly High As Biden Takes Office (NPR)
1月21日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は90.0万人、前週から2.6万人の微減となった(「Topics2021年1月15日 新規失業大幅増」参照)。先週の大幅増から水準としては下がっていない。44週間で累計7,561万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は505.4万人と、こちらも12.7万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.1万人
9/ 5: 86.8万人
9/12: 67.5万人
9/19: 61.6万人
9/26: 50.8万人
10/3: 37.9万人
10/10:33.7万人
10/17:34.5万人
10/24:35.9万人
10/31:36.2万人
11/7: 29.6万人
11/14:32.0万人
11/21:31.9万人
11/28:28.8万人
12/5 :41.5万人
12/12:45.4万人
12/19:39.7万人
12/26:30.8万人
1/ 2 :16.1万人
1/ 9 :28.5万人
1/16 :42.4万人
と、こちらは2週連続で大幅増となった。新規失業保険申請件数とギグ・ワーカーの申請数の合計で見ると、先週よりも大きく増加している。雇用状況は依然として悪い。

一方、COVID-19感染状況を見ると、さすがに頭打ち感が出てきた。

Johns Hopkins University Health
また、現時点で手が付けられない状況に陥っている州は、ほぼ全州という状況が続いている。

COVID Exit Strategy
※ 参考テーマ「労働市場

1月21日 バイデン Day 1st
Source :What Did Biden Do On His 1st Day As President? (NPR)
1月20日、バイデン氏第46代アメリカ大統領に就任した。就任日早々から、次々とアクションを打ち出している。

当websiteの関心事項は、次の通り。
  1. 連邦学生ローンの返済、利払い停止措置を、9月30日まで延長する(NPR)。もともと連邦議会で決定した『2兆ドル対策』に含まれていて、その後、連邦政府として延長していたが、その延長期間も1月31日までとなっていた(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)。

    こうした救済措置が、債務免除にまで進展するかどうかはわからないが、少なくともバイデン氏は、選挙期間中に、公務に就いた者の学費ローン債務については$10,000を限度に免除することを支持していた(「Topics2020年11月20日 新政権:学生ローン免除へ」参照)。民主党のウォーレン、シューマー両上院議員は、学生一人当たり$50,000までの免除を提案している(「Topics2019年11月27日 学生ローン債務免除提案」参照)。

  2. 移民政策を抜本的に改革するための法案を議会に提案する(NPR)。
    1. Dreamers(子供の時にアメリカに連れてこられた不法移民)、一定の農業従業員等に対して、即時にグリーンカードを発給する。発給から3年後に市民権の申請を認める(「Topics2020年6月21日 連邦最高裁:DACA終了差し止め」参照)。

    2. その他の不法移民には、5年後にグリーンカードを発給する。発給から3年後に市民権の申請を認める。

    3. エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスに対し、難民キャラバンに対処するために4年間で40億ドルを供与する(「Topics2021年1月20日 ホンジュラス難民の波」参照)。

    4. 移民法で用いられている"alien"を"noncitizen"に改める。

  3. メキシコ国境での壁の建設を全て中止する(「Topics2016年11月14日 WallとFence」参照)。

  4. センサス調査結果から、不法移民を除外した数字を作成せよとのトランプ大統領の指示を撤回する(「Topics2020年7月25日 センサスから不法移民除外」参照)。これにより、不法移民のカウント作業は正式に中止される(「Topics2021年1月14日 不法移民作業中止」参照)。
何よりも、The White Houseの情報発信が正常に復したことに安堵した。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「教 育」、「移民/外国人労働者」、「人口/結婚/家庭/生活