11月20日 週4日制の向き不向き
Source :Is the Shorter Workweek for Everyone? (SHRM)
MS Japanが週4日制を試みたことは当websiteで紹介した(「Topics2019年11月14日 MS Japan:週休3日」参照)。上記sourceによると、アメリカでは既に15%の企業が週4日制(週労働32時間)を施行しているそうだ。従業員の70%は、週5日制は時代遅れだと感じている。

従業員からみれば、健康、運動、家族関係などが改善し、生産性も高まると考える。一方、企業側も、管理コストの削減、女性の雇用促進につながり、メリットを享受する。また、能力の高い従業員を採用できるメリットもある。

しかし、上記sourceは、週4日制が向いている職業と向いていない職業があると指摘している。

歯医者や獣医などは、予約制を活用できるので、週4日制に向いている。一方、小売業やレストラン、ホテルなどの接客業、製造業、教師などは、時間給が適用されているため、向かないという。スウェーデンの介護施設で週4日制を導入したところ、看護師を増員せざるを得なくなった。また、2008年、Utah州が州政府職員に週4日制を導入したところ、生産性が高まり、職員のモラルも高まったが、州民の不満が高まってしまい、結局、週5日制に戻した。

結局、社会が週4日制を受け入れることができるかどうかで決まってくるわけで、どうしても時間はかかるだろう。しばらくは、一部の労働者が活用できる『柔軟な働き方』として位置付けることになろう。

※ 参考テーマ「Flexible Work

11月19日 NC州:選挙区割り修正案
Source :Democrats Could Gain At Least 2 House Seats Under New N.C. Redistricting Plan (NPR)
11月15日、North Carolina州議会は、連邦議会下院議員選挙の区割り修正案を決議した。先の10月に州裁判所が「現行の区割りが民主党にとって著しく不利で、州憲法に違反している」との判決を下したことに対応したものである。

今年6月に連邦最高裁が「各州の選挙区割りに対する判断は示さない」と決めてから、最初の区割り修正である(「Topics2019年6月29日 最高裁:ゲリマンダリング判断不能」参照)。

修正案は州裁判所の承認が必要だが、このまま認められると、現在、13議席中10議席を占めている共和党が2議席失う可能性があるそうだ。民主党議員は、はそれでも不公平性が残っているとして反対したが、数で共和党に押し切られた形だ(NC州議会)。

仮に州裁判所が承認したとしても、この区割り修正は2020年の下院議員選挙で使用されるだけだ。その後は、2020年実施の国勢調査結果に基づいて、新たな選挙区割りを検討することになる。しかも、NC州は1議席増える見込みだ。新たなゲリマンダリングが可能となる。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活

11月18日 恐怖の日々
Source :Months After Massive ICE Raid, Residents Of A Mississippi Town Wait And Worry (NPR)
ICEが、8月7日にMississippi州で不法移民の一斉摘発を行なってから約3ヵ月が経過した(「Topics2019年8月9日 不法移民一斉摘発」参照)。この時に拘束された680人のうち、400人は他人のSSNを使用していた(「Topics2019年8月27日 不法移民の就労実態」参照)。また、身分証明書窃盗、移民証明書偽造などの罪で119人が起訴されている。

拘束された者や不法就労がはっきりとしている者は職を解かれ、その家族の生活は厳しいものとなっている。また、前回の一斉摘発を免れたとしても、不法移民にとっては毎日が不安の連続となっている。摘発対象となった鶏肉加工工場のあるMonton市には3,462人が住んでおり、そのうち342人が拘束された。同工場の従業員は1,000人を超えており、今後の余波は免れない。職を失う、働き手を失う恐怖は蔓延していることだろう。

こうした窮状を見かねて、不法移民家族に救済の手を差し伸べようとする住民がいる一方、一斉摘発を歓迎する住民もいる。2016年の大統領選で、同市のあるScott Countyの選挙民の約60%がトランプ氏に投票した。保守色の強い地域なのである。一斉摘発は、こうした住民の間の溝をさらに広げることにつながった。

『DACAは違法』との連邦最高裁判決が下れば、全米中にこうした恐怖と断絶が広がることになる(「Topics2019年11月15日 DACA裁判の行方」参照)。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

11月17日 『性差別』への司法判断
Source :What’s the Meaning of ‘Sex’? Supreme Court Will Finally Provide the Answer (HR Daily Advisor)
今月初旬、連邦最高裁は、性に関する自認、性指向に基づく差別に関する3つの事件の意見陳述を設けた。来年6月までには、この3件に対する判決を示し、『性差別』に関する考え方を明示することになる。上記sourceでは、Roberts長官、Kavanaugh判事、Gorsuch判事の3人が判決の行方を決める鍵とされている。いずれも保守系の判事だ。

既に大企業等では対応が始まっているが、連邦最高裁の判決が出れば、それに基づき、企業の対応は一気に全米に広がっていくだろう(「Topics2016年11月21日 いよいよ職場のトイレ」参照)。

一方、当websiteで紹介したことのある学校のトイレ問題をめぐる第4控訴裁判所の判決も、同時並行で行われる。一旦、地裁に差し戻されたが、今年夏に地裁が性自認に基づくトイレの使用を認める判決を出し、学校側が控訴している(「Topics2016年4月22日 第4控訴裁が学校トイレで判決」参照)。

同性婚と同様、アメリカ社会の方向性を一気に決める判決となろう(「Topics2015年6月27日 最高裁判決:同性婚は基本的権利」参照)。

※ 参考テーマ「LGBTQ

11月16日 残業代計算の代替案
Source :DOL Proposes Updates to ‘Fluctuating Workweek’ Overtime Calculations (SHRM)
11月5日、労働省(DOL)は、週ごとの労働時間が変動する場合の残業代計算式の代替案を公表した。

通常、残業代が支払われる労働者に対する残業代の計算式は、次の通り。
残業代=時間給×1.5×残業時間
一方、今回示された代替案は次の通り。
残業代=(週固定給/実労働時間)×0.5×(週実労働時間−40h)
ただし、この代替算定式を利用する場合の条件が付いている。
  1. 従業員の週ごとの労働時間が実際に変動している。
  2. 従業員が受け取る週給が固定されている。実際に予定されていた労働時間よりも少なく働いたとしてもこの週固定給が支払われる。
  3. 企業と従業員の間で合意ができている。
DOLは、11月5日から30日間、パブリックコメントを受け付ける。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

11月15日 DACA裁判の行方
Source :DACA in question as Supreme Court conservatives voice doubts about its legality (Los Angeles Times)
11月12日、連邦最高裁において、DACAの適法性についての意見陳述が行われた。そもそも若い不法移民の強制退去を大統領令(オバマ大統領)によって遅らせることが適法であったかどうかが争点である(「Topics2012年6月17日 若い不法移民を保護」参照)。

連邦裁判所判事は、ほぼ党派色通りの意見を持っているようで、キャスティングボートを握っていると思われるRoberts長官も、大統領令の適法性に疑問を示す質問をしていたそうだ(「Topics2018年10月7日 Kavanaugh判事就任」参照)。

DACA対象者は70万人と言われている。彼らが一斉に強制退去という事態は、アメリカ社会に大きな衝撃をもたらすだろう。ちなみに、2018年にNPRが実施した世論調査では、Dreamersに法的地位を賦与することに65%が賛成している(「Topics2018年2月8日 若い不法移民には寛容」参照)。最高裁の判決が来年6月に出るとすると、大統領選の最中である。その影響は大きい。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2020年)

11月14日 MS Japan:週休3日
Source :Microsoft Japan Says 4-Day Workweek Boosted Workers' Productivity By 40% (NPR)
今年の夏、Microsoft Japanは試験的に週休3日制を実施した。週5日間の労働から4日間に短縮する一方、給与は変更しなかった。その結果、生産性は40%アップしたそうだ。電気代が23%削減できたことに加え、印刷部数が60%減った。

併せて、内部会合のやり方も変更し、 としたそうだ。

MSは、この週休3日制を他の国でも実施するのかどうか、恒久化する検討をしているのかどうかは明らかにしていない。

勤務日数は短ければ短いほどよいのか。2018年に行われた調査結果がその回答を示している。『給与が同じであれば、週何日働きたいか?』との問いに対する答えは次の通りの分布となっている。
0日⇒ 4%
1日⇒ 7%
2日⇒ 7%
3日⇒20%
4日⇒34%
5日⇒28%
専門家の分析では、働き手は闇雲な労働日数の削減よりも"flexibility"を求めているという。この傾向はここ数年変わらない(「Topics2015年8月2日 賃上げより喜ばれるもの」参照)。

※ 参考テーマ「Flexible Work

11月13日 夫婦別々のプラン
Source :29% of couples have separate health insurance—and they may be onto something (CNBC)
上記sourceによると、夫婦で別々の医療保険プランに加入している割合は29%にのぼるそうだ。
理由は、
  1. 配偶者が医療保険プランの提供を受けている場合には、当該配偶者の加入を認めない企業が約11%。

  2. 配偶者の加入を認める場合でも、33%の保険料特別加算が求められる。これは別の保険プランに加入した場合とほぼ同様の負担。
ということだ。

企業側はだいぶ前から医療費抑制策として配偶者加入のハードルを上げてきている(「Topics2016年8月11日 企業の医療費抑制策」参照)。子供が生まれれば家族プランに加入するだろうから、子供がいない夫婦が別々の保険に加入していると考えれば、ほぼ目一杯のところまできているのではないか。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

11月12日 Medicare for All財源案
Source :Ending the Stranglehold of Health Care Costs on American Families (Elizabeth Warren)
11月1日、Elizabeth Warrenが、Medicare for Allの財源案を公表した。ポイントは次の通り。
  1. 医療費の総額は、今後10年間で$52T。これは、現行制度を維持した場合と同じ。

  2. Medicare for Allでは、管理コストを大幅に削減できる。

  3. 医療機関への償還額は、現行Medicare償還額の平均110%とする。

  4. 処方薬価格の改革と効果に基づく診療報酬に変えることにより、医療費の伸びを経済成長率の範囲内に収める。CBOは、今後10年間の平均成長率を3.9%と見込んでおり、包括払い方式を導入し、償還額を抑制することで、医療費の伸びをその範囲内に収める。

  5. 現行制度で連邦政府がMedicare、Medicaidで負担している額はそのまま維持する。

  6. 州政府が負担している額もそのまま維持する。ただし、将来的には現行よりも少ない額の負担となる。

  7. 現行制度のもと、国民は保険料、免責額、窓口負担等で、今後10年間で$11Tを負担する。Medicare for Allではこれらの負担がゼロになる。中間層への増税は求めない。

    (企業拠出金)

  8. 現行制度のもと、企業は、今後10年間で$8.8Tを負担する。これをそっくりそのまま"Employer Medicare Contribution"として負担してもらう。ただし、実際の負担は、今後10年間で$200B減少するはずである。

  9. 企業拠出金の算出式は、次の通り。

    1. 過去数年間の従業員一人当たり平均医療負担額を算出する。

    2. 初年度企業拠出金=上記従業員一人当たり平均医療負担額×国民医療費伸び率×従業員数×98%

    3. 自営業者は免除。

    4. 従業員50人未満で、現在医療保険プランと提供していない企業は免除。

    5. 新規企業や従業員が50人を超えた企業については、国民一人当たり平均医療費×従業員数を拠出する。

    6. 企業の従業員一人当たり平均医療負担額は、やがて国民一人当たり平均医療費となる。


  10. 上記拠出方法で今後10年間で$8.8Tに不足する場合には、経営者報酬が極端に高い大企業に"Supplemental Employer Medicare Contribution"を求める。

  11. 現行税制の下で、$1.4Tの税収増が生じる。
    1. 従業員の手取り収入が増える⇒約$1.15Tの税収増
    2. HSA等の医療貯蓄勘定が不要になる⇒約$250Bの税収増

    (金融機関課税)

  12. 金融機関に、債券、株式、デリバティブ販売額の0.1%を課税する。総額は今後10年間で$800B。

  13. 大規模金融機関には、債務や市場リスクを少なくするよう誘導するための課税をする。総額は$100B。

    (国際企業課税)

  14. 海外に生産拠点や雇用を移転している大企業に、正当な負担を求める。総額は今後10年間で$2.9T。

    (富裕層課税)

  15. $50M以上の財産に2%、$1B以上の財産に6%の財産税を課税する。対象は75,000人。$1T以上の増収。(「Topics2019年10月2日 民主党左派の格差是正策」参照)

  16. 富裕層(上位1%)にキャピタルゲイン課税(所得税よりも重い)を実施する。⇒約$2Tの増収。

    (不法移民の合法化)

  17. 国内在住の不法移民に市民権を賦与する。これにより、税収は$400B増える。

  18. 軍事支出を抑制し、$798Bを捻出する。
ほとんど政策全般にわたるウォーレン候補の思想が読み取れる内容となっている。クリントン前候補ではとても提案できない内容だ。それだけに反発も大きかろう。

Medicare for Allに対する支持率は、財源案公表前から大きく低下してきている。
財源問題が明らかにできないでいたことが響いている。今回のウォーレン候補の財源案提示が、どのような効果をもたらすのか、注目しておきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2020年)