12月27日 自治体職員年金格差拡大(2)
Source :2019 Public Pension Funding Study (Milliman)
Sourceは異なるが、アメリカの地方自治体職員年金の資産状況に関するレポートが公表された(「Topics2019年10月3日 地方政府年金の財政状況」参照)。ポイントは次の通り。
  1. 総体でみた積立比率は、2017年から回復基調にある。
  2. ただし、各年金プラン毎に見た積立比率の分散は大きい。格差は拡大しているように思われる(「Topics2018年11月7日 自治体職員年金格差拡大」参照)。
    上位は、
    • Washington State Law Enforcement Officer's and Fire Fighters' Plan 1 and 2 : 125.5%
    • Wisconsin Retirement System : 102.9%
    • Tennessee Consolidated Retirement System : 101.8%
    • New Yorkt Teachers' Retirement System : 101.5%
    • South Dakota Retirement System : 100%

    一方の下位は
    • Puerto Rico Government Employees Retirement System : -1.8%
    • Puerto Rico Teachers Retirement System : 8.1%
    • Kentucky Employees Retirement System : 15.8%
    • Chicago Municipal Employees' Annuity and Benefit Fund : 23.3%
    • New Jersey Teachers' Pension and Annuity Fund : 26.5%
    • Illinois State Employees' Retirement System : 34.6%
    • Connecticut State Employees Retirement System : 36.3%


  3. 2019年の資産配分状況を見ると、実に多彩な投資を行なっていることがわかる。
  4. 資産配分の総体については、ここ数年大きな変化はみられない。
  5. 個別年金プランにおける資産配分と積立比率の間の相関関係はみられない。
※ 参考テーマ「地方政府年金

12月25日 "Georgia Access"
Source :Georgia could be first state to test Trump health proposals (Modern Healthcare)
Georgia州(GA)知事は、今年10月、トランプ政権が打ち出した保険料補助金に関する規制緩和を実現する制度改革案("Georgia Access")を公表した(「Topics2018年10月30日 トランプ政権のExchange改定案」参照)。これを受けて、GA州は、12月27日に連邦政府に承認申請を行ない、来年8月までに認可を受けたいと考えている。

"Georgia Access"の柱は次の3つ。
  1. 連邦政府が提供する保険料補助金(tax credit)を、簡易保険プランにも提供する。ただし、既往症による加入拒否は認めない。

  2. HealthCare.govは利用せず、保険会社等から直接保険プランを購入する。

  3. 州政府は、保険料補助金の総額上限を定める。
GA州は、州知事、州議会上下両院とも共和党が握っている。トランプ政権の意向を汲んだ政策を通しやすい州であり、連邦政府(HHS)も大統領主導の規制緩和第一号として認可することだろう。

簡易保険プランの推奨は、クリームスキミングに伴うExchange保険料上昇を招くとの批判が絶えない一方、安価な選択肢が増えるという主張も根強い。現実の世界はどう動くのか、全米が注目する。

※ 参考テーマ「無保険者対策/GA州」、「無保険者対策/州レベル全般」「無保険者対策/連邦レベル

12月24日 UT州:Medicaid拡充
Source :U.S. allows Utah to expand Medicaid with work requirement (Modern Healthcare)
12月23日、連邦政府は、UT州のMedicaid拡充策を承認する方向であることを表明した。施行は来年1月1日で、約12万人が加入することになる。

【Medicaid Expansion】


Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)

【Work Requirement】


Kaiser Family Foundation
上図の通り、UT州は、就労義務規定が先に認められていたが、拡充は行われていなかった。

※ 参考テーマ「UT州」、「無保険者対策/州レベル全般

12月23日 WA州のPublic Option
Source :Washington State’s Quasi-Public Option (Milbank Memorial Fund)
Washington州(WA)の公的医療保険プラン(public option)は、2021年に施行予定である(「Topics2019年6月5日 州のACA防衛策」参照)。 新制度の主な柱は次の通り。
  1. 標準化プラン

    州ExchangeのBronze, Silver, Goldの類型毎に、標準化されたプランを設計する。Exchangeに参加しようとする保険会社は、標準化されたSilver plan一つと標準化されたGold plan一つを運営しなければならない。この2つを提供すれば、他に標準化されていないプランを販売することができる。標準化されたプランを導入することで、加入者が保険料を比較することが容易になり、競争性が高まる。

  2. 州政府が契約

    州政府が保険会社と契約することにより、標準化プランを州Exchnageに提供する。そのために、契約に必要となる最低要件を州政府が定める必要がある。2021年の施行開始時に、州政府は各countyで最低1社の保険会社と契約し、標準化プランを提供しなければならない。

  3. 診療報酬総額の上限設定

    標準化プランが医療機関等に支払う診療報酬の総額は、同じ医療サービスをMedicareで提供した場合の報酬総額の160%以内にしなければならない。ただし、処方薬分は除く。

  4. 診療報酬額の下限

    • Primary care:Medicare診療報酬額の135%以上
    • 郊外・へき地の病院(critical access and sole community hospitals):診療報酬限度額(allowable costs)の101%
上記sourceの筆者は、このWA州の公的医療保険プランについて、"public option"と呼ばれてはいるものの、正確には、『州政府が診療報酬に関与する、民間保険会社運営保険プラン』であると描写している。その理由は次の2点。
  1. 州政府が保険プランを運営するとなると、高コストとなり、問題が大きい。そこで、民間保険会社と契約することで保険プランを提供することとした。これにより、民間保険会社にとってはもう一つ新たな選択肢ができたことになる。ちょうど、Medicare制度の中で民間保険会社がMedicare Advantageを提供できるようになっているのと同じ形になる。

  2. 医療機関の参加が義務付けられていない。このため、『保険料を安く、医療機関ネットワークは広く』というpublic optionの特徴が弱まる。
とは言え、公的医療保険プランの一形態が試されようとしているのである。その推移に全米が注目している。

※ 参考テーマ「無保険者対策/WA州

12月22日 NJ州:給与歴調査禁止法施行
Source :New Jersey Salary History Ban Takes Effect January 1 (HR Daily Advisor)
来年1月、New Jersey州(NJ)でも給与歴調査禁止法が施行となる(「Topics2019年12月17日 IL州:給与歴調査禁止法施行」参照)。特徴的なのは、違反した企業に重い罰金が課されることだ。 ところで、これまで給与歴調査禁止法が成立している州の数をちゃんと調べていなかったが、本件をフォローしているサイトを見つけた。既に18州が法制化していることがわかった。

Salary History Bans by State @ AccuSource, Inc.
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

12月21日 大学入学者数の減少
Source :Fewer Students Are Going To College. Here's Why That Matters (NPR)
National Student Clearinghouse Research Centerの調査によれば、今年秋の大学入学者数は、前年よりも約25万人減少したそうだ。減少傾向は2012年から続いており、ピークだった2011年と比較して約230万人、11%減っている。これは、大学の形態を問わない。

Student Enrollment At U.S. Colleges Down 11% Since 2011

About 2.3 million fewer students enrolled in college this fall than in fall 2011.

Source: National Student Clearinghouse Research Center

Credit: Daniel Wood/NPR

減少傾向が続いている理由として、上記sourceは次の3点を挙げている。
  1. 経済成長が続いている。

  2. 少子化が進み、高校卒業生が減っている。

  3. 学費が増加している。反対から言えば、州からの支出が減っている(「Topics2014年3月11日 州立大学財政支援の低下」参照)。
上記1.の理由がアメリカらしい。2009年のリーマンショックで景気が急速に悪化した時には、中高年齢層をはじめとした成人が大学に戻っていったが、景気がよくなり、雇用市場がタイトになると、大学に行かなくなる。おそらく日本では逆に作用するだろう。リカレント教育が当たり前になっている社会とそうでない社会の違いだ。

※ 参考テーマ「教 育