10月31日 出生地主義が標的に
Source :Paul Ryan Dismisses Trump Plan To Void Birthright Citizenship Law By Executive Order (NPR)
トランプ大統領は、10月28日のテレビ放送インタビューで、大統領令により不法移民の子供の市民権を剥奪することを検討していると述べた。例え不法移民の子供であってもアメリカで生まれれば市民権を獲得するという、現行の『出生地主義』を大きく転換することになる。

これに対して、ライアン下院議長は、連邦憲法に関わる事項は連邦議会が権能を持っており、大統領令による変更は憲法違反だと反論している。もっとも、彼は既に下院議員を引退することを表明しており、その影響力は弱まっているが。

上記sourceを読んでいて気づいた点を2つ。
  1. 現行の『出生地主義』が導入されたのは、たかだか150年前に過ぎない。アメリカ建国が1776年で242年前、南北戦争終結が1865年で153年前。『出生地主義』は、解放された奴隷と移民に市民権を確実に与えるための方策であったとのこと。これを覆せば、移民排斥、黒人差別の発想につながりかねない危険がある。

  2. 上記sourceで紹介されている2014年の調査結果によれば、約320万人の子供の親が不法移民であり、『出生地主義』により市民権を賦与されている。もしもトランプ大統領の意向が実施されれば、新たに320万人の不法移民が発生することになる。今約1,100万人と言われている不法移民が、約1,400万人に膨れ上がる。しかも、教育を受けられない子供たちが大量に出てくる可能性がある。それだけでなく、既に企業で働いている者でも、不法移民の子供であるということで突然、市民権を剥奪されるかもしれない。職場にとっても大きな影響が出てくる。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

10月30日 トランプ政権のExchange改定案
Source :2 Moves By Trump This Past Week Could Reshape U.S. Health Insurance In Big Ways (NPR)
先週、トランプ政権は、医療保険政策に関して2つの提案を行った。
  1. 州政府の判断で、連邦政府補助金を簡易保険プラン加入のための補助金として利用することを認める。簡易保険プランは、PPACAの定める要件を満たしておらず、既往症により保険加入を拒否できる。

  2. HRAの支払い可能医療費に、Exchange保険プランを含める。施行は2020年(Press Release)。
Exchange側から見ると、前者は加入者が逃げていく可能性があり、後者は加入者が増える見込みが出てくる。一見矛盾しているようだが、トランプ政権や共和党からすれば、前者は確かにExchange消滅策であるが、同時に加入者個人の選択肢を広げることになる。しかも、州政府の権限で可能としている。

また、後者は、自ら保険プランを提供できないような中小企業の保険提供を促すことにつながる。特に、HRAは、個人個人の特定の口座を設ける必要がなく、事業主の帳簿上の勘定で済むため、中小企業にとっては導入しやすい(「医療貯蓄勘定 比較表」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン」、「HSA

10月29日 職場の政治論議
Source :Political Divide in the US Reflected in the Workplace (HR Daily Advisor)
上記sourceは、職場における政治論争に関するアンケート調査結果を紹介している。印象的だった点は次の通り。
  1. 同僚の政治的見解がが自分のものと異なると孤独感を感じると回答した者が43%もいる。政治的見解の相違によって孤独感を感じるというのは、日本の場合とはかなり異なると思う。

  2. その一方で、職場の同僚がみるのではないかと懸念して、SNSに自分の政治的見解を載せないようにしているというのが、60%もある。

  3. 逆に、経営者が政治的見解を明確にすべきと考えているのが46%。今話題のLGBT、不法移民、銃規制についても40%台前半がスタンスを明確にすべきとしている。

  4. ミレニアル世代は、政治的課題に敏感で、上司と政治的見解が異なれば転職すると回答したのが67%に達する。50歳以上ではその割合は15%に過ぎない。
※ 参考テーマ「政治/外交

10月28日 DCプラン複数事業主定義拡大案
Source :DOL Issues Proposed Regulations on Association Retirement Plans (Practical Law)
8月の大統領令に基づき、労働省(DOL)が、退職給付プランにおける複数事業主の定義の変更案を提示した(「Topics2018年9月10日 DC規制緩和大統領令」参照)。内容は、複数事業主による医療保険プラン(AHP)の場合と同様である(「Topics2018年6月20日 AHPs規制緩和」参照)。

ただし、今回の定義変更案は、DBプランには適用されない。そりゃそうだろう。制度の存続自体が危ぶまれている所に、新規参入を認めるわけにはいくまい(「Topics2018年6月1日 複数事業主プランが急速に悪化」参照)。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

10月27日 Medicare処方薬価格の改定案
Source :Trump Aims To Lower Some U.S. Drug Spending By Factoring In What Other Countries Pay (NPR)
10月25日、トランプ大統領は、病院で処方されるMedicare処方薬の価格を引き下げる方策案を発表した。処方薬価格引き下げ案の柱は次の3つ。
  1. Medicare処方薬の平均価格を算出する際、先進諸国における販売価格を要素として盛り込む("International Pricing Index.")。方策案が正式に確定すれば、5年間をかけて順次要素のウェイトを高めていく。
    HHSが同時に公表した27品目に関する調査によれば、Medicare Part Bの処方薬価格は他国の価格に較べて80%も割高とのこと。今回の算式が認められれば、Medicareの支出は、5年間で$17.2Bの削減ができる(Washington Post)。
  2. Medicare処方薬のための価格交渉人制度を導入する。

  3. 処方した医療機関に対する診療報酬を、定率制から定額制に変更する。
    現行制度では、処方薬の売り上げの6%が診療報酬として医療機関に支払われている。これは、価格の高い処方薬を処方するように誘導している。
製薬業界団体のPhRMA、Medicare医療機関は猛反発している。HHSはパブリックコメントを経たのち、2019年春には最終規定を決定し、2020年から新たな価格体系を開始したいとしている。

※ 参考テーマ「Medicare