6月8日 州の薬価抑制策
Source :State Policies to Address Prescription Drug Prices (Center for American Progress)
トランプ政権は処方薬価格の抑制策を打ち出してはいるものの、その本気度には疑問符が付いている(「Topics2018年5月19日 処方薬価格抑制策を提案」参照)。そうした連邦政府の姿勢を見透かしてか、州政府レベルでの処方薬価格抑制策が実行に移されている。

上記sourceで紹介されている価格抑制策は次の通り。
  1. 価格設定の透明性を高める ⇒ NV州、CA州、OR州

  2. 州政府の価格交渉力を強化する ⇒ MD州、MA州

  3. 不当な価格引き上げに対する取り締まりを強化する ⇒ MD州

  4. 処方薬輸入を解禁する ⇒ VT州
州レベルでは価格抑制のための地道な努力が始まっている。

※ 参考テーマ「医薬品」、「無保険者対策/州レベル全般

6月7日 Medicare枯渇が早まる
Source :A crucial Medicare trust fund will run out three years earlier than predicted, new report says (Washington Post)
今年も公的年金、Medicareの財政見通しが公表された。
公的年金(OASI)は2034年で基金が枯渇するとの見通しで、これは昨年の推計よりも1年早まっている(「Topics2017年6月24日 公的年金・Medicareの財政見通し」参照)。

一方、Medicare病院保険(HI)の基金枯渇の時期は2026年と、昨年の推計より2年も早まった。これは主に、ペナルティ課税がなくなったことで無保険者が増え、医療機関が患者から代金を徴収できないケースが増えると見られているためである。こんなところにもペナルティ課税ゼロの影響が出ている。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare

6月6日 NJ州:ペナルティ課税実施
Source :New Jersey Becomes Second State To Adopt Individual Mandate; Ohio Attempt To Waive Mandate Rejected (Health Affairs)
5月30日、NJ州知事は、州レベルでの保険未加入者へのペナルティ課税を実施する法案に署名した。これで、州レベルのペナルティ課税は、MA州に次いで2番目となる(「Topics2018年2月19日 州のペナルティ課税」参照)。概要は次の通り。 上記sourceでは、次に続くのはVT州としている(「Topics2018年5月20日 州レベルの個人保険加入義務」参照)。5月28日に州知事が署名して既に法律は成立しているが、施行は2020年とされており、制度設計の詳細はこれから詰めることになっている。

一方、OH州は2019年からのペナルティ課税導入を目指していたが、5月17日、連邦政府から準備不足を指摘され、来年からの施行は難しくなっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/NJ州」、「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/VT州」、「無保険者対策/OH州

6月5日 宗教か差別禁止か
Source :Supreme Court rules in favor of baker who would not make wedding cake for gay couple (Washington Post)
6月4日、連邦最高裁は、同性カップルのウェディングケーキ制作を断ったパン屋の主張を支持する判決を下した。事件の流れは次の通り。 ところが、今回の連邦最高裁の判決で、同性カップルの主張を支持したのは、Ginsburg判事とSotomayor判事だけであった。彼女たちの意見は、『異性カップルには提供する財サービスを同性カップルには提供しなかったことが問題』というものであった。

今から見ると当然の判断のような気もするが、他の最高裁判事達は、CO州市民権保護委員会がパン屋の店主の宗教的信条を尊重しなかったことを問題視しているようだ。さらには、当時、CO州では同性婚が禁止されていおり、禁止されている行為に加担する行為が宗教的信条にも悖るということになれば、断った方の主張も頷ける。

問題は、同性婚が連邦として合法になった時点からの扱いだ。差別禁止と宗教的信条のどちらが優先されるのか、事案は相次いでいるという。連邦最高裁も、今回の判決が今後の司法判断を縛るものではないとしている。しばらくはこうした事案の積み重ねが必要となる。

※ 参考テーマ「LGBTQ」、「司 法

6月4日 VT州:居住者呼び寄せ策
Source :Move to Vermont. Work From Home. Get $10,000. (Or at Least Something.) (New York Times)
Vermont州(VT)は、人口わずか62.4万人という規模の州であり、ワイオミング州に次いで全米で2番目に少ない

そのVT州知事が、5月30日、他州からの移住者に最高1万ドルの補助金を提供するとの州法案に署名した。制度の概要は次の通り。
  1. 受給資格要件:VT州外で事業展開する企業のフルタイマーで、テレワークが可能な人。さらには、2019年に通年でVT州に居住する人。

  2. 補助対象費用:引っ越し、コンピュータ(ハード&ソフト)、高速インターネット接続、シェアオフィス

  3. 受給資格者一人当たり最高1万ドル($5,000ずつ2年に分けて支給)。実際にはこれらの補助対象では1万ドルに達しないと見られている。

  4. 全体の予算額は
    • 2019年:$125,000
    • 2020年:$250,000
    • 2021年:$125,000
    • 2022年以降:残預金があれば、年間$100,000まで

  5. 受給確定は、申請順ベース。
アラスカ州でも完全移住者に年間$2,000を提供しているが、これはすべてのアラスカ州民に石油開発公社の分配金として支払っているものである。

今回のVT州の試みは、仕事は他州でいいけれど、住むのはVT州にしてくれ、という政策だ。悪く言えば「州民税だけいただく」と言っているのと同じだ。

※ 参考テーマ「労働市場

6月3日 無保険者割合は13%に 
Source :CBO Expects Higher Uninsured Rates, Defines Some Short-Term Plans As Coverage (Health Affairs)
5月23日、CBOは、AHP導入と短期保険プランの影響を踏まえて、保険加入の将来推計を公表した(「Topics2018年 1月10日 AHP制度設計案 」参照)。
ポイントは次の通り。
  1. 2018年の保険加入者数は244M人。これは、2016、2017年とほぼ変わらない。また、2028年時点でも243M人と大きな変化はない。

  2. 一方、無保険者数は、2018年で2,900万人。これが2019年には300万人増加する。この増加分の殆どは、保険加入義務に伴うペナルティ課税がゼロとなることが原因である。さらに、2028年には3,500万人となる。このうち、約半数が自らの意思で保険不加入を選択すると見られている。

  3. 65歳以下の無保険者割合は、2018年の約11%から、2028年には13%にまで上昇する。

  4. 企業が提供する保険プランに加入しているのは、2018年で158M人。保険加入者全体の58%を占める。これが、2018年には154M人、保険加入者全体の55%となる。この要因は次の2つ。
    1. 保険加入義務に伴うペナルティ課税がゼロとなる
    2. 保険料の上昇が賃金の上昇を上回る

  5. Medicaid&CHIPの加入者は、2018年で6,700万人。これが2028年には7,000万人にまで増加する。これは、CBOが、いくつかの州でACAに基づくMedicaid加入者の拡大を図ると予測しているためである。

  6. 個人保険加入者は2018年の1,500万人から、2028年には1,200万人に減少する。その大きな要因は、Exchangeでtax credits(保険料補助金)を受け取って保険加入する人達が200万人減少することである。つまりは低所得層がExchangeから出ていくことになる。
やはり、無保険者割合は今後上昇していかざるを得ないようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月1日 複数事業主プランが急速に悪化
Source :PBGC Projections: Multiemployer Program Insolvent in FY 2025 (PBGC)
複数事業主プランに対する保証事業は2025年度に破綻するとの予測が公表された。2025年度に破綻する確率は90%を超え、2026年度になっても破綻しない確率は1%にも満たない。
上図からもわかるように、昨年の予測よりも大幅に悪化している。

法律上、基金が払底してしまえば、保証事業としての支払いは保険料収入の範囲内に限定されてしまい、実質的に保証はできなくなる。今年の大統領予算教書では、可変保険料と脱退保険料の新規導入を提案している。

一方、単独事業主プランの保証事業については、その収支が着実に改善しており、2019年度には実質的な資産超過となる見通しとなっている。
将来見通しにそって保険料の引き上げなどの先手を打った単独事業主プランと、痛みを伴う改革を先延ばしにした複数事業主プランの明暗がくっきりと分かれた。

※ 参考テーマ「PBGC