7月31日 犯罪歴の壁低下
Source :Survey: Increasing Number of US Workers Support Hiring People with Criminal Records (SHRM)
求人を出しても採用できない。そうした労働市場の中での従業員確保策の一つとして着目されているのが、犯罪歴を持つ人の採用だという。そうした動きが出ている背景には、次のような3つの要素があると思われる。
  1. 職場において、犯罪歴のある人との協働が受け入れられつつある。

  2. 犯罪歴のある人を雇用する企業を、社会貢献に積極的に取り組んでいる企業と見る傾向が強まっている。

  3. "Ban the Box"を導入する州が増えている(「Topics2020年6月17日 "Ban the Box"の広がり」参照)。
2020年9月時点での"Ban the Box"の整備状況は次の通り(National Employment Law Project (NELP)調査) ※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働市場

7月30日 出勤時のワクチン接種義務化
Source :Google, Facebook Mandate Vaccines For Employees At U.S. Offices (NPR)
7月28日、GoogleとFacebookは、従業員が職場に出勤するようになる前にワクチン接種を受けるよう求めると発表した。詳細は今後詰めるとしている。

上記sourceで紹介されているハイテック企業の対応は、次の通り。
  接種義務付け
(出勤の場合)
職場勤務再開出勤頻度
Google9月⇒10月半ば
Facebook10月許可制在宅勤務
Apple×10月に延期3Ds/W
Amazon×3Ds/W
Microsoft9月
twitter期間限定なしの在宅勤務OK
※ Microsoftについて、接種義務化との報道(8/3日経)があったので、×から○に修正。
Googleは、社員のワクチン接種割合が想定以上に高いことを理由に、出勤の場合の接種義務化に踏み切ったと説明している。

なお、上表のtwitter以外の企業は、NPRを財政支援しているそうだ。ちょっとびっくり。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

7月29日 CA州:不法移民Medicaid加入資格緩和
Source :California expands Medi-Cal, offering relief to older immigrants without legal status (Los Angeles Times)
7月27日、CA州知事が予算関連法案(AB133)に署名し、一定所得以下で50歳以上の不法移民のMedi-Cal(CA州のMedicaid)への加入が認められることになった。ポイントは次の通り。
  1. 低所得で50歳以上の州民のMedi-Calへの加入を認める。

  2. 合法的住民かどうかは問わない。つまり、不法移民でも加入を認める。

  3. 加入資格所得は、2022年5月1日~。

  4. この措置のために、平年ベースで年額$1.3Bを要する。
この規制緩和のおかげで、約23.5万人の不法移民がMedi-Calに加入できるようになる。予算関連法とはいえ、正式に不法移民がMedicaidに加入できるようになるのは初めてである。ただし、この部分に要する費用について、連邦政府負担はない。全額州政府負担となる。

CA州では、既に25歳未満の不法移民はMedi-Calへの加入を認めている。この時にも予算関連法案として処理した(「Topics2019年6月11日 CA州:不法移民若者にMedicaid」参照)。

今回の法案成立により、不法移民でMedi-Calに加入できない層は、26~49歳のみとなった。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「移民/外国人労働者

7月28日 Walmart:大学教育全額支援
Sources : Walmart Offering Full College Tuition And Books For Employees (NPR)
Walmart To Pay 100% of College Tuition and Books for Associates (Walmart Press Release)
7月27日、Walmartは、従業員の大学教育費用を全額負担すると発表した。8月16日に開始し、対象となる従業員は、パートタイマーを含める全従業員150万人である。今後5年間で$1B近くの費用負担となる。

もともとWalmartは、従業員の大学教育を金銭的に支援するプログラムを始めていた。2018年6月に始めた"Live Better U education program (LBU)"では、大学に通う従業員に$1/Dを提供していた。Walmartによれば、これまで52,000人がプログラムに参加し、8,000人が卒業、28,000人が在学中とのことである。

しかし、これでは従業員の負担感は拭えず、学生ローンを組めば大きな負債が残ってしまう。

そこで、今回、$1/Dを廃止し、大学教育に必要となる資金を全額Walmartが負担することとしたのである。また、LBUプログラム対象の大学も4校増やした(*:新規対象)。 この従業員に対する大学教育支援の変更は、いろいろな狙いが窺われる。
  1. 最大の狙いは、従業員の確保、採用のためである。Walmartは、既に最低賃金を$15/hに引き上げると公表している(「Topics2021年2月19日(2) Walmartの賃上げ」参照)。しかし、州最低賃金を$15/hに引き上げる動きは既に始まっているし、連邦政府も契約企業に求めることとしている(「Topics2021年6月16日 大統領令で最低賃金引上げ(2)」参照)。こうした中で、従業員を惹きつけるベネフィット戦略が必要だった。

  2. コロナ禍からの回復が見えてきている中、求人をしても思うように採用できず、従業員不足が現実のものとなっている(「Topics2021年7月10日 求人数急増」参照)。労働供給サイドに働き方の見直しをしようとの動きがみられる(「Topics2021年7月1日 自発的離職が急増」参照)。ならば、そうした労働供給サイドの地殻変動を後押しするようなベネフィットを提供して、従業員を惹きつけよう。

  3. さらに言えば、従業員が大学卒業資格を取得して仮に転職したとしても、コアな顧客に転じてくれる可能性は高い。

  4. 大学教育支援について、WalmartはStarbucksとともに、先頭を走っている(「Topics2014年6月19日 スターバックスの学士取得支援策」参照)。今回のプログラム改変で、Starbucksに大きく水をあけようとしている。

  5. 現代のアメリカ社会における最重要課題の一つが、学生ローン債務だ(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」参照)。学生ローンなしに大学卒業資格を取得できるというプログラムは、従業員にとって魅力的なだけでなく、アメリカ社会への貢献をアピールできる。

  6. 大学側も、進学者数が減少していることに困っている(「Topics2021年6月12日 大学進学者数が急減」参照)。Walmart側で進学者を増やしてくれて、しかも授業料は同社が負担するということならば、願ったりかなったりである。
※ 参考テーマ「ベネフィット」、「教 育」、「労働市場

7月27日 自発的退職のサイン
Source :13 Signs That Someone Is About to Quit, According to Research (Harvard Business Review)
上記soruceは少し古い記事なのだが、自発的離職が増加している中で、改めて注目されているということなのだろう(「Topics2021年7月1日 自発的離職が急増」「Topics2021年7月14日 転職願望と働き方」参照)。そこでは、12ヵ月以内に自発的に退職する従業員が発している13のサインを抽出している。
  1. Their work productivity has decreased more than usual.
  2. They have acted less like a team player than usual.
  3. They have been doing the minimum amount of work more frequently than usual.
  4. They have been less interested in pleasing their manager than usual.
  5. They have been less willing to commit to long-term timelines than usual.
  6. They have exhibited a negative change in attitude.
  7. They have exhibited less effort and work motivation than usual.
  8. They have exhibited less focus on job related matters than usual.
  9. They have expressed dissatisfaction with their current job more frequently than usual.
  10. They have expressed dissatisfaction with their supervisor more frequently than usual.
  11. They have left early from work more frequently than usual.
  12. They have lost enthusiasm for the mission of the organization.
  13. They have shown less interest in working with customers than usual.
いずれも尤もな指摘である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

7月23日 MA州:個人ペナルティ
Source :Massachusetts sets 2022 individual-mandate coverage dollar limits (Mercer)
Massachusetts州(MA)は、2007年から医療保険加入を義務付ける皆保険制度を導入している(「Topics2021年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)。

上記sourceでは、現在の制度概要を紹介している。そのうち、数値に関するものは次の通り。
  1. 免責額(「Topics2020年6月27日 MA州適格プラン免責額」参照)
  2. 窓口負担上限額
  3. 企業へのペナルティ:保険未加入従業員一人当たり$50(※ 企業に保険プラン提供義務はない)

  4. 個人へのペナルティ
最後の個人へのペナルティを、初期のころと比較してみると次のようになる(「Topics2010年12月25日 MA州ペナルティ引き上げ」参照)。
FPL 150.1~200 FPL 200.1~250 FPL 250.1~300 FPL 300.1~ (18-26歳) FPL 300.1~ (27歳以上)
2008 $17.5/M ($210/Y) $35/M ($420/Y) $52.5/M ($630/Y) $56/M ($672/Y) $76/M ($912/Y)
2010 $19/M ($228/Y) $38/M ($456/Y) $58/M ($696/Y) $66/M ($792/Y) $93/M ($1,116/Y)
2011 $19/M ($228/Y) $38/M ($456/Y) $58/M ($696/Y) $72/M ($864/Y) $101/M ($1,212/Y)
・・・
2021 $23/M ($276/Y) $44/M ($528/Y) $66/M ($792/Y) $142/M ($1,704/Y)
明らかにFPL300%超のペナルティが大きく引き上げられている。しかも、連邦レベルで導入されていたペナルティ(2018年に0%。「Topics2017年12月21日 ペナルティ課税ゼロ」参照)よりも、かなり高い水準となっている(「Topics2016年10月29日 ペナルティを選択」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

7月22日 DOL/NLRB人事
Source :DOL, NLRB Nominees Appear Before Senate Committee (SHRM)
7月15日、連邦議会上院で、DOL賃金・労働時間監督官とNLRB委員の指名に関して、質疑が行われた。 David Weil氏は、2014~2017年、同職に就いていた。その間の主な実績は次の通り。
  1. 時間外手当の対象者の大幅拡大を提案した(「Topics2016年5月20日 残業代対象者新ルール」参照)。 ただし、施行されることはなく、最終的にはトランプ大統領の下、拡大幅を大きく縮小して2020年に施行された(「Topics2019年9月26日 残業代対象者新ルール施行」参照)。

  2. 独立契約者、共同経営者の定義の見直しを提唱。その後も独立契約者については、連邦レベルで定義の厳密化を主張している。
    ※ CA、IL、MA、NJ各州では、独立契約者について、"ABC test"と呼ばれる厳密な定義を設けて、被用者の範囲を広げている。
    • The worker is free from the control and direction of the hiring entity in connection with the performance of the work (Absence of control).
    • The worker performs tasks that are outside the usual course of the hiring entity's business (Business of the worker).
    • The worker is customarily engaged in an independently established trade, occupation or business of the same nature as the work performed for the hiring entity (Customarily engaged).
    ※※ 連邦議会で審議中の"PRO Act"が成立すれば、連邦レベルでもこの"ABC test"が導入されることになる(「Topics2021年3月12日 "PRO Act"下院可決」参照)。
また、同氏は"wage theft"の防止にも取り組むと証言した(「Topics2014年9月10日 Wage Theft」参照)。

一方、NLRBメンバー指名されているWilcox氏は労働組合の弁護士、Prouty氏はSEIUの地域代表者と、親労組である。独立契約者、共同経営者に関する定義の論議が再び俎上に乗ることは間違いない(「Topics2021年3月15日 独立契約者・共同経営者の定義変更」「Topics2021年5月7日(2) 独立契約者定義取り下げ」参照)。

現在のNLRB委員構成は、次の通り(「Topics2021年2月12日(2) EEOC/NLRB委員」参照)。
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chairman
2021.1.20~
Lauren McFerranDPresident Obama①2014.12.17~2019.12.16
②2020.7.29~2024.12.16
MemberJohn RingRPresident Trump2018.4.16~2022.12.16
MemberMarvin E. KaplanRPresident Trump①2017.8.10~2020.8.27
②~2025.8.27
MemberWilliam J. EmanuelRPresident Trump2017.9.26~2021.8.27
Acting General CounselPeter Sung OhrDPresident Biden2021.1.25~2025.1.24(?)
現在は一人空席で、Emanuel氏の任期終了が今年8月27日に迫っている。上の二人の指名が承認されれば、ようやくリベラル派が多数となる。加えて、事務局長(General Counsel)についても、バイデン大統領はJennifer Abruzzo氏を指名し(The White House)、7月21日、上院で承認された(Roll Call Vote 273)。投票内容は50 vs 50で副大統領の賛成投票により決した。彼女はNLRBの経験が長いそうだ。任期は4年だ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合