7月10日 求人数急増
Source :U.S. Job Openings Remain At A Historic High, Giving Job Seekers Options (NPR)
7月7日、BLS5月の求人数を発表した。5月の求人数は920.9万人となった。4月は919.3万人で、2021年に入って急増し、2ヵ月続けて高水準になっている。パンデミック拡大で一度はショックを受けて減少したものの、パンデミック以前の増勢に戻ったように見える。

BLS
失業者数/求人数も低下し続け、5月はちょうど1.0となった。つまり、「働くだけ」なら職はある、という状況になっている。

BLS
労働需要は増加しているが、労働供給に戸惑いがある(「Topics2021年7月1日 自発的離職が急増」参照)。そんな状況ではないだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場

7月9日 体重管理薬の承認
Source :Obesity Drug's Promise Now Hinges On Insurance Coverage (NPR)
6月4日、FDAは、体重管理薬"Wegovy"を承認した(FDA Press Release)。副作用が小さく画期的な肥満対策薬ということだが、その薬品の効能については、製薬会社Novo Noldiskのプレスリリースを参照して頂くとして、注目は保険給付の対象になるかどうかである。

現在、肥満対策薬の扱いは概ね次の通り。 そして、民間保険は、Medicareの流れに乗るのが一般的である。

Novo Noldisk米国会社は、現在、2つの戦略に注力している。
  1. 医師、患者、政治家に、肥満は万病の本、肥満は病気であると認識してもらう。

  2. 肥満対策薬をMedicareの給付対象に含めるよう、連邦議会に法改正を働きかける。
生活習慣に関わる事柄を病気として認識するかどうか、価値判断の問題が提起されそうだ。

※ 参考テーマ「医薬品」、「Medicare」、「医療保険プラン

7月8日 Barrett判事の評判
Source :Here Are 5 Takeaways From The Supreme Court Term (NPR)
連邦最高裁判所の判決シーズンを終えて、上記sourceはその評価を行なっている。当websiteとしての関心事項は次の通り。
  1. 最新任のBarrett判事が、思いのほか暴れず、柔軟な対応をしている。就任前の彼女の評価は、"originalist"または""textualist"(憲法の文面に忠実、法律制定の意図を重視する)というものであった(「Topics2020年9月27日 Barrett判事を指名」参照)。ところが、上記sourceでは、コロナ感染症拡大を防止するために州政府が教会での礼拝を規制した事件を合憲と認めたことを例示して、よい判事仲間になっていると評価している。

    当sebsiteでは、7vs2でPPACAは合憲との判決が下されたことを紹介した(「Topics2021年6月20日 PPACA合憲判決3回目」参照)。ここでも、Barrett判事は、連邦最高裁判事就任前の意見を覆して、賛成票を投じた。

  2. 連邦最高裁保守派判事の関心事項は、投票権、労働組合にあったようで、保守派が一致団結して意見集約を図った模様だ。今後、両分野での判決が注目されることになろう(「Topics2021年7月7日 投票権への感覚」参照)。
来期は、堕胎に関する再論議、銃規制、アファーマティブアクションなど、保守派が重視する社会的価値観を巡る訴訟が見込まれている。

※ 参考テーマ「司 法

7月7日 投票権への感覚
Source :Poll: More Americans Are Concerned About Voting Access Than Fraud Prevention (NPR)
上記sourceは、政治姿勢に関する世論調査の結果を紹介している。
  1. 投票権

    『投票をしたいと考える人が確実に投票できる』ことが大事か、『投票資格のない人が決して投票できない』ことが大事かを問うたところ、前者が多数を占めた。しかし、支持党派別ではまったく逆の結果が出ている。
  2. IDの提示

    投票の際に政府発行の写真付きIDを提示すべきと考える人は8割に達している。しかし、ここでも民主党支持者の間では反対の人の割合が4割にも達している。
  3. バイデン大統領

    バイデン大統領の仕事ぶりについては、よくやっているとの評価は約5割。ただし、COVID-19対策はよくやっているとの評価が64%とかなり高くなっている。
上記2.なんかは、日本では当たり前のように感じるが、移民の国の感覚は違うのだろう。

※ 参考テーマ「政治/外交J


日経
7月6日 確定拠出年金は育った
Source :確定拠出年金、確定給付を逆転 加入者941万人に (日経)
2021年3月末時点で、確定拠出年金の加入者約941万人、確定給付年金の加入者約933万人と、確定拠出年金加入者が上回った。確定拠出年金制度は大きく育った(「Topics2019年4月24日 小さく産んで…」参照)。

※ 参考テーマ「日本関連

7月5日 雇用増は大幅だが
Source :Business Should Be Booming - If Only There Were Enough Workers For The Job (NPR)
7月2日、労働統計が公表された(BLS)。6月の雇用増は85.0万人となった(「Topics2021年6月5日 労働参加率が戻らない」参照)。市場の期待を上回る大幅増だ。
バー/レストランなどサービス産業の雇用が大幅に増えている。
ところが、失業率は0.1%ポイント上昇して、5.9%となった。
また、長期失業者(27週以上)の割合も上昇した。
パンデミック発生以前に較べて、依然として680万の雇用が回復していない。
労働市場参加率も横ばいのままだ。
全米25州で、今月中に失業保険給付上乗せ支給が前倒し停止される(「Topics2021年6月13日 失業保険上乗せ給付停止」参照)。しかし、支給停止が労働供給の増加にどれだけ貢献できるかどうかは不透明だ。上記sourceによると、支給停止していない州の方が雇用の増加幅が大きい所もあるそうだ。

※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策

7月4日 ワクチン接種とリアル出勤
Source :Hope For Normalcy Is Growing. Here's What Americans Are Still Worried About (NPR)
上記sourceでは、6月下旬に実施された世論調査の結果を紹介している。

まずは、アメリカ人の懸念事項。下の図は、アメリカ人が経済について最も心配している事柄が、左から多い順に並べられている。
インフレ、賃金、失業…と並んでいくのだが、支持党派別に懸念事項が大きく異なっている。共和党支持者、独立派はインフレへの懸念は高いが賃金に関する懸念は低い。一方、民主党支持者は、インフレへの懸念は低く、賃金に関する懸念が非常に高い。

一見、大きな分裂に見えるが、『実質賃金に懸念を抱いている』と読み解けば、言わばコインの表裏ということになる。

それよりも、住宅コストとガソリンコストへの懸念が真逆になっていることが気になる。

一方、コロナ禍に伴う行動制限については、楽観的行動と消極的行動があい半ばしている。 職場への出勤については、9割が前向きだ。しかも57%の雇用者が、「企業がワクチン接種を出勤の条件として求めてくることはない」と考えている。

いつもの定点観測(Kaiser Family Foundation "KFF COVID-19 Vaccine Monitor: June 2021")でワクチン接種への意向を確認してみると、ワクチン接種スピードは大きく減速している。
ワクチン接種割合が頭打ちになる中で、リアル出勤、外食が増えていくとみられる。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「人事政策/労働法制

7月3日 センサス結果を巡る訴訟
Source :A Supreme Court Fight Over Census Data Privacy And Redistricting Is Likely Coming (NPR)
Alabama州とOhio州は、センサス結果の早期公表を求めて訴訟を起こしている。この訴訟を全米の共和党知事たちが支援している。

訴えの柱は次の2点。
  1. 選挙区見直し(redistricting)に必要な地域住人数を、6月中に提供すべき。(現時点でのCensus Bereauの公表予定は8月16日まで(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照))。

  2. プライバシー保護規定の変更を中止せよ。(変更後にマイノリティに関する情報が一部制限される可能性がある。)
これに対して、6月29日、アラバマ州中部連邦地方裁判所は、この訴えを退ける判決を下した。1.は正確性を確保するためには仕方ないだろう。何せトランプ大統領が集計途中で様々な変更を求めていたのだから。2.については、今から変更をやめるとなると、さらに6~7ヵ月公表が遅れるという。妥当な判決だと思われる。

この訴訟は、直接、連邦最高裁に上訴されるものとみられている。というのも、今回の判決は、連邦地方裁判事2人と第11連邦控訴裁判所判事1人による判決だからだ。 そして、この3人ともトランプ大統領が任命した判事なのである。共和党知事たちの訴えでも、保守派の判事は否決したのである。さて、保守派が圧倒的多数派の連邦最高裁で、どのような判決が下されるのか。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「司 法

7月2日 バイデン政権はMedicaid拡張
Source :Biden quietly transforms Medicaid safety net (Kaiser Health News)
Medicaid加入者は、パンデミック期間に1,000万人の増加となった(「Topics2021年6月28日 Medicaid加入者急増」参照)。上記sourceでは、バイデン政権はMedicaidの役割を拡張しようとしていると説明している。以下、筆者がその根拠として挙げている事例。
  1. バイデン政権は、2021年2月、就業義務規定を認めた全州に対して、その認可を取り消す作業を行なうと通知した。これに基づき、これまでに6州の認可が取り消された(下の地図の赤下線)。

    Kaiser Family Foundation
  2. トランプ政権は、無保険者を診療するテキサス州の医療機関を支援するプロジェクトを推進していた。しかし、バイデン政権はこれを中止した。テキサス州のMedicaid拡充が進まなくなるからだ。

  3. 出産後1年間、母親のMedicaid加入を認める選択肢を州政府に対して提供した。

  4. メンタルヘルスと薬物乱用に対応するために、移動救急サービスを提供するためのMedicaid連邦補助金を準備した。

    (上記3.と4.は、2021年3月に成立した$1.9Tコロナ経済対策法で対応済み(「Topics2021年3月11日 $1.9Tコロナ経済対策法案成立へ」参照)))

  5. Medeicaid給付に、介護が必要な人のための家事サービスを加えることを検討している。Medicaid加入者が高額な施設サービスを回避できるようにすることが目的。

  6. 賃貸家屋の提供も検討している。Medicaid加入者の入院を可能な限り減らすため。

  7. 精神障害や薬物乱用で収監されている人をMedicaid対象者に加えることを検討している。退院後の継続治療が容易になる。

  8. 不法移民をMedicaid対象者に加えることを検討している。地域の感染症拡大を防ぐことができる。
共和党右派の"Repeal and Replace"でもなく、民主党の"Medicare for All/Americans"でもない、"PPACA堅持 + Medicaid拡張"路線だ(「Topics2021年6月24日 バイデンはPPACA堅持」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

7月1日 自発的離職が急増
Source :As The Pandemic Recedes, Millions Of Workers Are Saying 'I Quit' (NPR)
4月の自発的離職(Quits)が395万人となった。
"Quits: Employees who left voluntarily. Exception: retirements or transfers to other locations are reported with Other Separations."(Job Openings and Labor Turnover Survey (BLS)
現在の雇用者数は、パンデミック発生以前と較べて760万人少ない。失業率の改善も途上だ(「Topics2021年6月5日 労働参加率が戻らない」参照)。それなのに、自発的離職の水準が、パンデミック発生以前から一段上がってしまったように見える。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2021年
今回のパンデミックによる労働市場への打撃は、リーマンショック時をはるかに上回る規模であったにもかかわらず、自発的離職の水準の底はリーマンショック時よりも高く、早くもパンデミック発生以前を越えてしまった。
Quits level, Total nonfarm - 2007~2021年
労働参加率の戻りが遅々としていることと合わせて、労働供給サイドの大きな地殻変動が起きていることをうかがわせる。
住む場所を変える、ライフスタイルを変える、職種を変える、職場を変える…。多くの面で変化が起きている。これは女性ばかりではないようだ。

ちょうど、マイケル・サンデル「実力も運のうち 能力主義は正義か?」を読み終えた。本書は、『人間が根本的に必要とするのは、生活を共にする人びとから必要とされることである。労働の尊厳は、そのような必要に応えるために自分の能力を発揮することにある。・・・軸足をGDPの最大化から、労働の尊厳と社会的一体性につながる労働市場の創出に移す』ことを訴えている。

労働供給サイドの地殻変動は、こうしたことが背景にあるのかもしれない。

※ 参考テーマ「労働市場」、「人口/結婚/家庭/生活