7月20日 失業保険上乗せ給付継続訴訟
Source :Some Courts Say States Can’t Halt Enhanced Federal Jobless Benefits (SHRM)
連邦政府の給付停止期限(9/6)を待たずに、25州が連邦政府負担失業保険上乗せ給付($300/M)を停止した(「Topics2021年6月13日 失業保険上乗せ給付停止」参照)。これに対して、『州政府は上乗せ給付を連邦停止期限まで継続すべき』との訴訟が行なわれている。 連邦政府の政策なのに、州によって対応がバラバラ。これがアメリカだ。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「労働市場

7月19日 センサス詳細結果まで一ヵ月
Source :Biden's Historic Pick For Census Director Says Bureau Needs To Build Public Trust (NPR)
7月15日、連邦議会上院で、Census Bureau長官に指名されているRobert Santos氏に対する質疑が行われたバイデン大統領による指名は4月13日だったので、ここまで約3ヵ月かかっている。

そもそも、CB長官の指名は、今年1月に内部告発を受けて、前長官が突然辞任したところから始まっている(「Topics2021年1月14日 不法移民作業中止」参照)。前長官の辞任、集計方針の度重なる変更、センサス結果公表の大幅な遅れと、CBに対する信認は大幅に低下している。

そうした厳しい状況の下で指名を受けたRobert Santos氏は、統計の世界では尊敬を集めていることに加えて、ラテン系という特色も兼ね備えている。まさにバイデン大統領の珠玉の指名と言える。上記sourceで紹介されている質疑でも、大きな問題はなさそうで、おそらく順調に承認されるであろう。

そして、その新長官のもとで2020年のセンサス調査結果(地域住人数)の発表が、一ヵ月後の8月16日に待っている(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照)。この日を手ぐすねを引いて待っているのは、共和党である。

センサス結果に基づいて選挙区の見直し作業を行なうのは、州知事および州議会だ。その最新勢力状況は次のようになっている。

2021年7月
州知事
民主党共和党独立系
州議会 民主党 15州3州
共和党7州23州
ねじれ1州1州
2016年12月
州知事
民主党共和党独立系
州議会民主党6州7州
共和党6州26州
ねじれ3州1州1州
「Topics2016年12月3日 2016年秋選挙の総括」参照)
4年前に較べると、共和党がコントロールする州が減り(23←26)、民主党がコントロールする州が増えている(15←6)。それでも、共和党がコントロールする州の方が8つも多く、共和党が多数を握る州議会が30州もある。州レベルでは、依然として共和党が優勢を保っている。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交

7月18日 Breyer判事の去就
Source :Supreme Court Justice Stephen Breyer has not decided when he will retire (Seattle Times)
連邦最高裁判所判事の中で最も高齢なのは、リベラル派のStephen Breyer判事だ。そのBreyer判事がCNNのインタビューで、引退の時期について言及した。
CNN:引退の時期は考えているのか。
Breyer判事:考えていない。
CNN:引退時期を決める要素は何か。
Breyer判事:第1に健康、第2に法廷だ。
Breyer判事は今年83歳(8月)で、さる6月のPPACA合憲判決の主文を書くなど、いまだに意気軒昂だ(「Topics2021年6月20日 PPACA合憲判決3回目」参照)。既に来期のスタッフの確保など、着々と準備を進めており、さらさら引退する気配はない。

Current Justices of the US Supreme Court (as of July 16, 2021)

Name Born Appt. by First day University
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-26 October 26, 2020 Notre Dame Law School
しかし、民主党、リベラル派から、あからさまな『引退コール』が巻き起こっている。大統領と連邦議会上院の多数を民主党が握っている間に早く引退し、若いリベラル派の判事に引き継げ、というのである。次の中間選挙で民主党が上院多数を失えばどうなるか、居ても立っても居られないそうだ。

※ 参考テーマ「司 法

7月17日 拡大子供税額控除
Source :The Expanded Child Tax Credit Is Here. Here's What You Need To Know (NPR)
7月15日、拡大子供税額控除(Expanded Child Tax Credit, ECTC)の支払いが始まった。今年3月に成立した$1.9Tコロナ経済対策法(American Rescue Plan Act of 2021)に基づいた支給である(「Topics2021年3月11日 $1.9Tコロナ経済対策法案成立へ」参照)。

これはバイデン大統領が力強く推進している政策で、ホワイトハウスHPも特設ページを設けている。

今回の支給の特徴が判るよう、2020年のCTC(Child Tax Credit)と2021年のECTC(Expanded Child Tax Credit)の比較表を作成してみた("Child Tax Credit" Investopedia)。
 2020年 CTC2021年 ECTC
支給対象17歳以下の子供17歳以下の子供
支給額$2,0005歳以下:$3,600
6-17歳:$3,000
親の所得制限
Modified Adjusted Gross Income
(AGI+海外所得)
夫 婦:$400,000~
その他:$200,000~
夫 婦:$150,000~
世帯主:$112,500~
単 独: $75,000~
支給減額$50/$1,000毎$50/$1,000毎
還付上限額$1,400支給額と同じ
支給時期 納税申告時に所得税と相殺 7~12月:月央に$300/$250(総額の半分を先払い)
残額を納税申告時に相殺。場合によっては返納。
支給総額は$15B、約6,000万人の子供が対象となる。

上の比較表から、支給額を増額して対象者を絞っていることがわかる。所得制限を絞っていることから、全額還付も可能としている。何よりも特徴的なのは、総額の半分を先払いしてしまうことにある。子供を抱えた低所得層に現金を配ることができる。

ECTCは2021年限りだが、バイデン大統領はこの政策が気に入っており、2025年までの延長を求めている。しかし、連邦議会の理解は得られていない。

そうした状況の中で、強力な助っ人が現れた。何とYellen財務長官が「ECTCを恒久措置にすべき」と発言したのだ(NPR)。こうした給付拡大措置に対して恒久化を求める財務長官というのは珍しいのではないだろうか。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交

7月16日 複数事業主プランへの支援策
Source :American Rescue Plan Act of 2021 (PBGC)
企業年金複数事業主プランへの支援策が動き出した。今年3月に成立した$1.9Tコロナ経済対策法(American Rescue Plan Act of 2021)で、複数事業主プランに対する支援策が盛り込まれていたが、7月9日、その執行のためのPBGCルールが公表され、7月12日に発効した。(「Topics2021年3月11日 $1.9Tコロナ経済対策法案成立へ」参照)

3月の救済法に盛り込まれた支援策の柱は次の通り。
存続が危ぶまれる複数事業主プランに対して、総額$94Bを交付する。対象となるプランは200以上、加入者、受給者は300万人以上。
民主党のプラン救済案が取り込まれた形だ(「Topics2021年2月16日 複数事業主プラン対処法案」参照)。

PBGCルールに基づいて、既に持続可能性を失っている、または2022年3月11日までに持続可能性を失う見込みのプランなど緊急性を要するプランについては、既に支援申請が始まっている(「Topics2020年9月16日 PBGC財政状況の変化」参照)。

しかし、このPBGCルールを分析して、課題を指摘するレポート(Akin Gump)が公表されている。
  1. 2051年までの給付に必要な手当てをすることになっているが、その後の給付については何も言及されていない。

  2. 2021年3月11日時点での企業拠出割合を維持するよう求められている。

  3. プランからの脱退率については、予め定められたマスの仮定数値を用いるよう求められている。
最後の脱退率は結構重要なポイントで、力のある企業が抜けてしまうと、残された体力のない企業群でプランを支えなければならなくなり、結局は拠出額を引き上げたり、最悪の場合は解散せざるを得なくなる。上記レポートが主張したいのは、複数事業主プランがこれで安泰で持続可能になったということはなく、本当に複数事業主プランを継続するかどうかを熟慮すべきだ、ということだ。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

7月15日 都会のオフィスはなくならない
Source :Why Remote Work Might Not Revolutionize Where We Work (NPR)
パンデミック以前に較べ、リモートワークが格段にやりやすくなったことから、都会のオフィスはなくなるという考えが広まっている。そうすれば、高いオフィス賃料は不要となり、従業員は生活コストの高い地域から脱出し、通勤の苦痛を回避できる。

しかし、上記soruceは、そうした「職場」革命は起きないとの説を紹介している。その理由として、次のような項目を挙げている。
  1. 頭脳労働者は、頭脳労働者とのリアルな交流を求める。

  2. 異業種交流、マッチングは、企業が集積した地域で頻繁に起きる。

  3. 企業は、リモートワーク専門のフルタイマーを求めていない。
最後の3.については、実際のアンケート調査結果も出ている。リモートワークのみの新規採用フルタイマーは、パンデミック以前は2%だったが、現在は6~7%と3倍増になっている。しかし、たかが6~7%で、新規採用者の1割にも満たない。企業が求めているのは、週2回くらいはリモートワークでもいいけど、他は出勤する人材なのである。つまり、都会のオフィスを放棄するつもりはないのである。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働市場

7月14日 転職願望と働き方
Source :Monster: 95% of workers surveyed considering changing jobs (HR Dive)
上記sourceで紹介されている調査結果によると、
  • 95%が転職したいと考えている

  • 92%が勤務先の産業を変えたいと思っている
と、労働供給側に大きな地殻変動が起きている。

その背景にあるのは、①本人の燃え尽き、②現職に成長の見込みがない、③求人が急増している(「Topics2021年7月10日 求人数急増」参照)、といった事象である。

その一方で、エントリーシート作成疲れ、就活疲れも訴えている。

ところで、上記の『①本人の燃え尽き』は、大きな社会的課題となっているようだ。リモートワークと同時に家族のケアをしなければならないといった焦りや、今まで気づかなかった余暇の楽しみを味わいたい、家族との時間がより重要に感じられるようになった等々の気付きが入り混じっている(Washington Post)。

このような事象に対応して、企業側は、"Wellness Days(全社休業。毎月1回金曜日)"の設定、有給休暇の積み増し、ハイブリッド勤務・勤務時間の自己決定などで離職引き留めを図っている。

COVID-19からの回復後の労働市場は、勤務形態がリアルかリモートかといった単純な選択肢ではなく、大きな構造変化を経験しそうである。

※ 参考テーマ「労働市場」、「人事政策/労働法制

7月13日 WA州介護保険
Source :Employers Must Collect Employee Premiums under the New “Washington Cares” Program Starting 1/1/2022; Employee Window to Obtain Alternate Coverage Closes on 11/1/2021 (Littler)
今年4月21日、Washington州(WA)知事が署名し、"Long-Term Services and Supports (LTSS) Trust Act"が施行となった。これで、WA州は、全米で初めて州立介護保険制度("WA Cares Fund")を実施することになる。

制度のポイントは次の通り。
  1. 保険料を支払い、WA州在住で介護サービスを受けている人に、一人当たり$36,500(生涯分)を上限に現物給付する。上限額は物価スライドを適用。

  2. 給付の開始は、2025年1月1日から。

  3. 受給権の要件は次の通り。
    1. 5年以上の中断なく10年以上勤務し、保険料を支払った。
      または、
    2. 過去6年間のうち3年以上働き、かつ各年とも500時間以上働き、保険料を支払った。

  4. 給付される介護サービス例(上記source掲載一覧表

  5. 介護サービス利用料は、加入者ではなく、登録介護サービス事業者に直接支払われる。

  6. 保険料は、Washington州の勤労者が義務的に負担する。負担の上限は設けられていない。
    • 2022年1月1日~:勤労報酬$100あたり$0.58(保険料率0.58%)。
    • 2024年1月1日~:隔年で引き上げを検討。ただし、保険料率の上限は0.58%。

  7. 企業は、源泉徴収義務のみを負う。保険料負担はない。

  8. 2021年11月1日以前に民間介護保険に加入している場合には、非加入を選択できる。非加入申請期間は2021年10月1日から2022年12月31日までの期間のみ。ここで非加入が認められれば、生涯非加入を継続、再加入はできない。また、非加入選択期間は将来設けられない。

  9. 自営業者は非加入を選択できる。
保険料負担の上限、課税対象所得の上限などは設けられていない。一方で、給付の上限は生涯$36,500と定められている。社会保険制度としては積立方式だが、高所得者から低所得者への所得移転が事実上仕組まれている。

WA州では、介護サービスを必要とする高齢者が増えているが、Medicareで給付されるサービスは限られており、Medicaidを利用しようとすると貯蓄を取り崩すように要求されてしまう。そこで、こうした州立介護保険制度が必要になったという説明だ。

こうした州立介護保険制度が検討されているのは、CA、IL、MI、MN州だそうだ。これから徐々に広がっていきそうだ。

※ 参考テーマ「公的介護保険

7月11日 テレワークとFMLA
Source :What Federal and State Leave Laws Apply to Your Remote Employee? (FMLA Insights)
COVID-19感染拡大に伴い、テレワーク、リモートワークが広がっている。上記sourceでは、その際、連邦FMLAが適用されるのか、州独自のFMLAが適用されるのか、考察を行なっている。

例題として、『TX州の中堅企業に勤める社員が、RVに乗って夏はFL州、秋はMA州、冬はNJ州に赴き、各地でリモートワークを行なう』というケースを想定している。

  • 連邦FML: 取得要件に、勤務先の事業所から75マイルの範囲で働いていることが定められているため、TX州から遠く離れたリモートワークでは、FMLを取得することはできない。

  • 各州FML: MA、NJ州には州独自の有給FMLがあり、一定の要件さえ満たせば取得可能である。なお、現時点で州独自の有給FMLを導入しているのは、9州+D.C.となっており、3年前よりは少し増えている(「Topics2018年3月2日 有給病気休暇:制度設計が進まない」参照)。
企業サイドでは、ようやくリモートワークに関する社内規定を本格的に導入し始めたところだろう。その際、リモートワークを企業側から求めている場合と、従業員側から求めている場合で、取り扱いが異なる可能性があることに留意する必要がある。

また、最近では日本でも例が出始めている(NHK)が、海外からリモートワークを行なう場合にも、かなりの配慮が必要になろう。

FMLAに関して参考になるサイトをまとめておく。
連邦FMLA, Department of Labor

State Family Medical Leave Laws, Naional Conference of State Legislatures

Paid Family and Sick Leave in the U.S., Kaiser Family Foundation

State Paid Family Leave Laws, Naional Partnership for Women and Families

FMLA Insights, Jeff Nowak of Littler
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制