3月31日 国民医療費の長期推計
Source :CMS Office of the Actuary Releases 2021-2030 Projections of National Health Expenditures (CMS)
3月28日、CMS数理部が、国民医療費(NHE)の長期推計(2021~2030年)を公表した。ポイントは次の通り。
  1. 10年間の平均年間増加率は5.1%。2030年のNHE総額は$6.8T。

  2. GDP増加率も5.1%のため、2030年のNHEのGDPに占める割合は、2020年19.7%、2030年19.6%と変わらず。

  3. 10年間の後半(2025~2030年)の平均年間伸び率は5.3%と高まる。

  4. 全国民に占める保険加入割合は、2021~2年は91.1%。コロナ感染症が収まると加入割合は従前に戻り、2030年には89.8%に低下する。

  5. Medicareの10年間平均年間増加率は7.2%。Medicaidのそれは5.6%

  6. 民間医療保険からの支出は、2021年6.3%増、2022年8.3%増となったのち、2024年にかけて従前に戻っていく。その後徐々に増加率は低下し、2030年には4.6%増となる。

  7. 小売り処方薬は、10年間平均で5%増。
国民医療費とGDPの伸び率がほぼ一致するようであれば、医療費負担増に対する国民の警戒感は低下するだろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

3月30日 離職増勢が続く
Sources : Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
4.4 million in U.S. quit or changed jobs in February as turnover remained high (Washington Post)
3月29日、BLSが、2月末の求人数を発表した。2月末の求人数は1,126.6万人。1月が若干の上方修正(1,128万人)されたため、微減となった(「Topics2022年3月10日 労働需給逼迫続く」参照)。

BLS
また、新規雇用数は669万人となり、若干の増加となった。

BLS
失業者数/求人数は、4ヵ月連続の0.6となった。

BLS
1月の自発的失業(Quits)は426万人と上方修正され、2月は435万人(P)の増加となった。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2022年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2022年
この動きを、労働市場全体の中の位置づけを見てみると、
  1. 求人数の割合は7.0%
  2. 自発的離職者の割合は2.9%
と、歴史的にみても極めて高い水準になっていることがわかる。

そして、FRBの分析によれば、転職した労働者の賃金上昇率は、現職にとどまった労働者よりも高くなっている。転職は所得増に貢献しているのである(「Topics2022年3月25日(2) 高学歴は離職成功」参照)。
※ 参考テーマ「労働市場

3月29日(1) 新味のない予算教書
Sources : Biden's new budget calls for funding police and taxing billionaires (NPR)
Remarks by President Biden Announcing the Fiscal Year 2023 (The White House)
3月28日、バイデン大統領は、2023年予算教書を公表した。当websiteの関心事項は次の通り。
  1. Child Tax Creditの延長

  2. Medicareへの処方薬価格交渉権付与

  3. Pell Grantの倍増(対象家計所得上限額を5万ドルから1.3万ドルに引き下げ)
上記1.と2.は、BBB法案に盛り込まれていたものを再度強調している(「Topics2021年11月21日 下院BBB法案可決」参照)。

※ 参考テーマ「一般教書演説

3月29日(2) 短大卒の選択肢
Source :Community college enrollment is down, but skilled-trades programs are booming (NPR)
Community Collegesへの入学者数が2年連続で減少している(「Topics2022年1月14日(2) 大学入学者数減少続く」参照)。コロナ禍の中、教育に対する考え方に変化が生じていると考えられる。

上記sourceによれば、Community Collegesの学科別入学者数を見ると、農業や建設業の関係のコースでは入学者数が増えていることがわかる。
特に、建設業では深刻な求人難が生じており、Community Colleges卒でも高給与を獲得できる状況にあるという。若者にとって選択肢が広く用意されていることは重要である。

※ 参考テーマ「教 育」、「労働市場

3月25日(1) Exchange加入者急増
Source :2022 Open Enrollment Report (CMS)
2022年のExchange加入者数が公表された。
  1. 加入者総数は1,450万人。前年比21%増となった。うち、HealthCare.Gov運営州(33州)が1,030万人、州立Exchange州(17州+D.C.)が430万人。
  2. 中でも、TX州の加入者増加率は42%と抜きん出ている。次に増加率が高かったのはGA州の36%。両州とも無保険者割合が高く、TX州が17.5%で全米第1位、GA州が14.5%と第2位である(いずれも2020年)。

    KFF
  3. このようにExchange加入者が増えた要因は、一つは新型コロナ感染症拡大であり、もう一つはExchange加入者に対する保険料補助金の拡大である(「Topics2021年2月28日(1) コロナ経済対策法案下院可決」参照)。
この保険料補助金の拡大策は、何もしなければ2022年12月31日に失効する予定となっている。そうなってしまった場合、2023年のExchange加入者は大幅に減少してしまう可能性もある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」「無保険者対策/州レベル全般

3月25日(2) 高学歴は離職成功
Source :Majority of workers who quit a job in 2021 cite low pay, no opportunities for advancement, feeling disrespected (Pew Research Center)
自発的離職が歴史的な高水準で推移している(「Topics2022年3月10日 労働需給逼迫続く」参照)。上記sourceは、そうした離職者を対象とした調査の結果である。
  1. 離職の3大理由は、①給料が安い、②昇進の機会がない、③尊重されていない、となっている。ちなみに、コロナワクチン接種の義務化を挙げた人は8%もいる(「Topics2021年8月19日(1) 従業員は接種義務化に両論」参照)。

  2. 転職先の給与が増えたと回答している人が56%。大卒に限れば66%が増えたと回答している。

  3. また、昇進の機会が増えたと回答している人が53%。大卒に限ると63%が増えたと回答している。
       
概して、高学歴労働力が"Great Renegotiation"に成功しているようだ(「Topics2022年1月27日(1) "The Great Renegotiation"」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

3月24日(1) PPACA定着
Source :Obamacare at 12 (AEI)
PPACA(通称オバマケア)が成立してから12年が経つ(「Topics2010年3月31日(1) 医療保険改革法に署名」参照)。連邦議会の共和党上院議員は、「大統領府と連邦議会を取り返したら、オバマケアを廃止する。そのための代替案を準備しなければならない」と主張しているそうだ。

上記sourceは、保守系シンクタンクのAEIに掲載されているコメントだ。「いつでも医療保険政策は選挙民に重視されているが、だからと言って、10年以上も定着している現行制度を廃止することにつながるとは限らない。」と苦言を呈している。

その背景にあるのは、PPACAに対する好感度の変化だ。下図は、Kaiser Family Foundationの定点観測だが、好ましいと考える人の割合が高まっている。特に、コロナ感染症拡大局面では、PPACAへの評価は高まったであろう(「Topics2020年12月24日 Exchange加入者増加」参照)。
そもそもオバマケア廃止を叫ぶこと自体、共和党内でも相手にされなくなっている(「Topics2021年6月24日 バイデンはPPACA堅持」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月24日(2) 独立契約者定義迷走
Source :Court puts Trump-era independent contractor test into effect, prompting DOL to eye new rule (HR Dive)
「独立契約者の定義」が迷走を始めた。ことの流れは次の通り。 しかしながら、トランプ政権時代の独立契約者の定義が施行されるまでには、まだまだ紆余曲折がありそうだ。上述の判決を受けて、バイデン政権労働省は、控訴裁判所に持ち込むとともに、新たな定義規則を採用するべく検討を始めるとの意向を示した。

独立契約者とは何なのか、連邦レベルでしばらく混乱が続いていく。ただし、州法はその影響を受けない

※ 参考テーマ「雇用政策/労働法制