2月28日(1) コロナ経済対策法案下院可決
Source :House Passes $1.9 Trillion COVID-19 Plan; Biden Calls For 'Quick Action' From Senate (NPR)
2月26日、$1.9Tコロナ経済対策法案(H.R.1319)が連邦議会下院で可決された。民主党から2人が反対票を投じた。果たして上院で一致団結できるかどうか、不安な状況だ。

内容は、この資料の通り(「Topics2021年1月16日 バイデン$1.9Tプラン」参照)。バイデン大統領が提案した際には、連邦最低賃金を$15/hに引き上げることを盛り込んでいたが、上院のルールに抵触するとの決議が行われている(「Topics2021年2月8日 最低賃金引上げは一時お預け」参照)。最低賃金引き上げは、別途の法案で審議される(「Topics2021年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)。

現行の失業給付は3月14日に期限切れとなる。上院に残された時間は、2週間である。

※ 参考テーマ「政治・外交」、「解雇事情/失業対策」、「最低賃金

2月28日(2) 最賃上げは競争力強化策
Source :Costco To Raise Minimum Wage To $16 An Hour: 'This Isn't Altruism' (NPR)
2月25日、連邦議会で開催された「最低賃金引上げ法案2021」に関する公聴会で、CostcoのCEOは、来週から初任給を$16/hに引き上げると表明した(「Topics2020年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)。

Costcoは、2019年に初任給を$15/hへ引き上げた。また、全米の従業員約18万人のうち、半数以上は$25/hの賃金を受け取っている。

CEOは、『こうした賃上げは、決して利他的行為ではなく、長期的に見て転職を最小限に抑えるとともに、従業員の生産性を最大にするための戦略だ』と述べている。

当sebsiteで紹介してきた通り、多くの大企業が最低賃金の引き上げに積極的である。全米商工会議所も最低賃金引き上げを支持しているものの、$15/hは高すぎると主張している。

一方、CNBCが実施したアンケート調査によれば、小規模企業の54%が連邦最低賃金引き上げに反対し、33%が引き上げられれば解雇せざるを得ないと考えている。一方で、4割以上の小規模企業が最低賃金引き上げに賛成していることも見逃せない。
(最低)賃金引き上げは、企業の競争力強化のツールである。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月27日 新規失業大幅減
Source :Weekly jobless claims drop sharply but labor market remains challenged (CNBC)
2月25日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は73.0万人、前週から11.1万人の大幅減少となった(「Topics2021年2月19日(1) 新規失業2週連続増」参照)。先週の数値が下方修正となったため、2週連続の減少となっている。49週間で累計7,963万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は441.9万人と、こちらも10.1万人の減少となった。

また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は45.1万人と、6.1万人の減少となった。

専門家の見立てによると、今回の申請件数減少はテキサス州をはじめとした豪雪・寒波の影響であり、来週の発表数字は再び増加するとされている。

一方、COVID-19感染状況を見ると、波は確実に収まりつつある。

Johns Hopkins University Health
また、感染リスクレベルは改善し、レッドゾーンがかなり縮小している印象だ。ようやく、バイデン政権のコロナ対策が浸透し始めたようだ。

Brown School of Public Health
※ 参考テーマ「労働市場

2月26日 同性婚増加
Source :One in 10 LGBT Americans Married to Same-Sex Spouse (GALLUP)
上記sourceは、アメリカにおける同性婚カップル数の推計を行なっている。
  1. 調査対象は、15,000人超の成人。

  2. うち、5.6%がLGBTと自認。

  3. LGBTと自認する者の半分以上はbisexual。

  4. LGBTの中で同性婚をしている者の割合
    ※連邦最高裁同性婚合憲判決は2015年6月(「Topics2015年6月27日 最高裁判決:同性婚は基本的権利」参照)

    • 同性婚合憲判決の6ヵ月前 ⇒ 7.9%
    • 同性婚合憲判決の1年後 ⇒ 9.6%
    • 2020年平均 ⇒ 9.6%

  5. 成人の中で同性婚をしている者の割合

    • 同性婚合憲判決の6ヵ月前 ⇒ 0.3%
    • 同性婚合憲判決の1年後 ⇒ 0.4%
    • 2020年平均 ⇒ 0.6%

  6. 現時点で150万人の成人が同性婚をしている。つまり、同性婚は75万件あると推測できる。

    • 同性婚合憲判決の6ヵ月前 ⇒ 36.8万件
    • 同性婚合憲判決の1年後 ⇒ 49.1万件
    • 2020年平均 ⇒ 75万件

同性婚の件数は、連邦最高裁判決後、着実に増えている。こうした社会の流れは、LGBT差別禁止法案に影響を及ぼすであろう(「Topics2021年2月25日 LGBTQ差別禁止法案」参照)。

※ 参考テーマ「LGBTQ」、「人口/結婚/家庭/生活

2月25日 LGBTQ差別禁止法案
Source :House To Vote On Equality Act: Here's What The Law Would Do (NPR)
連邦議会下院は、Equality Act (H.R.5)に関する採決を今週中に行う予定だ。下院HPで示されている法案の概要は、次の通り。
"This bill prohibits discrimination based on sex, sexual orientation, and gender identity in areas including public accommodations and facilities, education, federal funding, employment, housing, credit, and the jury system. Specifically, the bill defines and includes sex, sexual orientation, and gender identity among the prohibited categories of discrimination or segregation.

The bill expands the definition of public accommodations to include places or establishments that provide (1) exhibitions, recreation, exercise, amusement, gatherings, or displays; (2) goods, services, or programs; and (3) transportation services.

The bill allows the Department of Justice to intervene in equal protection actions in federal court on account of sexual orientation or gender identity.

The bill prohibits an individual from being denied access to a shared facility, including a restroom, a locker room, and a dressing room, that is in accordance with the individual's gender identity."
性的指向、性自認に基づく差別の禁止を明文化するとともに、それが適用される範囲を大幅に拡大することが目的である。

これらだけなら、昨年の連邦最高裁判決の法定化という意味しか持たない(「Topics2020年6月16日 連邦最高裁:性に基づく解雇は違法」参照)。しかし、今回の法案は、次の2つの重要な意味合いを持っている。
  1. Equality Actは、Religious Freedom Restoration Act(RFRA)に優先する。

    信仰を理由にLGBTQへの対処を異なるものにしてはならない、ということで、これは保守派にとっては我慢ならないところだろう。

  2. 連邦法であることから、LGBTQ差別禁止の州法を持たない州(27州)にも効力が及ぶ。

    州レベルでの差別禁止法を連邦法が上回ることに反発する州が出てくることは十分あり得る。
法案成立の可能性であるが、連邦議会下院では、2019年に同様の法案を可決しており、今回も下院での可決の可能性は高い。

問題は、連邦議会上院で、今回の法案についてはfilibusterを回避するためには60票の賛成が必要となる。ということは、上院共和党議員からの賛成が必要になる。いつもリベラル寄りの投票を行うCollins議員は2019年の法案で賛成票を投じたが、Murkowsi議員は態度を明らかにしていない。また、Romney議員は宗教の自由を侵すとして法案に反対する意向を示している。今のところ、上院での可決の見通しは立っていない。

もしも、上院が可決、バイデン大統領が署名して法案が成立したとしても、司法判断を求める動きが出てくる可能性が高い。2018年6月、連邦最高裁は、同性カップルにウェディングケーキを提供することを宗教的理由で断ったパン屋の店主を支持する判決を下した(「Topics2018年6月5日 宗教か差別禁止か」参照)。差別禁止か宗教的自由かを迫った裁判で、連邦最高裁は、技術的な理由ではあるものの宗教的自由を選択したのである。

当時の連邦最高裁判事は、次の通りであった。この中で、判決に反対した、つまりはLGBTQ差別禁止が優先と判断したのは、Ginsburg判事とSotomayor判事だけであった。

Current Justices of the US Supreme Court (as of June 28, 2018)

Name Born Appt. by First day
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005
(Anthony Kennedy) 01936-07-23 July 23, 1936 Ronald Reagan 01988-02-18 February 18, 1988
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991
Ruth Bader Ginsburg 01933-03-15 March 15, 1933 Bill Clinton 01993-08-10 August 10, 1993
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017
そして、今の判事の構成は次のようになっている。当時、LGBTQ差別禁止が優先と判断したGinsburg判事は死去し、保守派が6人と多数を占めている。しかも、最近就任したBarrett判事は、カトリック教徒で、保守強硬派と見られている(「Topics2020年9月27日 Barrett判事を指名」参照)。

Current Justices of the US Supreme Court (as of October 27, 2020)

Name Born Appt. by First day University
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-27 October 27, 2020 Notre Dame Law School
Equality Actの合憲性が連邦最高裁に持ち込まれた際、同性婚の合憲性について判事の間で意見が分かれているうえに、宗教的自由に対する優先性が認められるのかどうかを判断しなければならず、最高裁判事達にとって極めて難しい課題になるだろう(「Topics2020年10月9日 同性婚合憲性の行方」参照)。

(2/26追記)

2月25日、連邦議会下院は、Equality Act (H.R.5)を可決した(NPR)。賛成218、反対208であった。これで、同法案は上院に送付される。

※ 参考テーマ「LGBTQ」、「司 法

2月24日 ワクチン接種インセンティブの賛否
Source :Pros and Cons of Vaccine Incentives (HR Daily Advisor)
少し前に、コロナ対策で企業はワクチン接種を従業員に義務付けるのではなく、接種インセンティブの提供に動いていることを紹介した(「Topics2021年2月21日(2) ワクチン接種の義務付け」参照)。

しかし、接種インセンティブの提供についても、賛否両論があるようだ。その点について、上記sourceは整理している。そのうえで、インセンティブの提供ではなく、情報提供等による奨励(encourage)という道もあることを説いている。

その中で、一つ気になることがあった。ワクチン接種のインセンティブを提供すると、『ワクチン接種の是非について、職場における論争を加熱してしまう』というものだ。

コロナ対策ワクチンに関するGALLUPの調査結果を見てみると、次のようになっている。
  1. Partisanship and Vaccine Uptake Strategies(2020年12月18日)

    " Americans who are ideologically conservative and politically Republican are the most resistant to getting a vaccine, while Democrats' currently high degree of willingness to be vaccinated has been shown to be quick to change."

  2. U.S. Readiness to Get COVID-19 Vaccine Steadies at 65%(2021年1月12日)
つまり、職場でインセンティブを提供すると、従業員の政治的指向に伴う対立を先鋭化させかねないということなのだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交

2月23日 アメリカ統合の鍵は既婚者
Source :Married Americans are different (AEI)
上記sourceでは、昨年11月の大統領選挙で、結婚しているかいないかでトランプ氏に投票した割合が大きく異なっていたことがわかったと説明している。
  1. AIEの調査によれば、男女ともに結婚している人の半分以上はトランプ氏に投票した。
  2. Los Angeles Times/Reality Check Insightsの世論調査では、さらに詳細を調べている。
      既婚者同棲者独身者
    トランプ氏に投票した割合45%20%18%
    バイデン政権が全アメリカ人のために政治を行なうと信じている割合53%63%73%
    自分がアメリカンドリームを生きていると考える割合87%19%24%
    自分が保守派だと思っている割合32%10%16%
    自分がリベラル派だと思っている割合23%38%32%
    自分が中道派だと思っている割合45%52%52%
    政治的指向が近いコミュニティで暮らしたいと考える割合8%17%17%
    政治的妥協が可能だと考える割合65%71%72%
最後に、筆者は、もしもバイデン政権・議会民主党がアメリカの統合を望むのであれば、既婚者の考え方を理解し、家族に優しい政策から始めるべきだと結論付けている。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活」、「大統領選(2020年)

2月22日 Flexworkをより重視
Source :Survey Demonstrates Importance of Post-COVID Workplace Flexibility (HR Daily Advisor)
ポスト・コロナ時代にも働き方の柔軟性がますます重要になる、との調査結果が紹介されている。ポイントは次の通り。

  1. どうしても実際の職場で働きたい。 ⇒ 11%

  2. 一部リモートで働きたい。 ⇒ 89%

  3. 柔軟な働き方ができない企業では働きたくない。 ⇒ 35%

  4. 平均すると、最低週2日はリモートで働きたい。

  5. 男性の方が、実際の職場で働きたいと考える割合が大きい。 ⇒ M 22% vs W 13%

  6. 51歳以上の従業員で、家で働きたい。 ⇒ 92%
  7. 18~30歳の従業員で、家で働きたい。 ⇒ 56%

  8. 経理・財務部門の従業員で、どうしても実際の職場で働きたい。 ⇒ 17%
  9. マーケティング部門の従業員で、どうしても実際の職場で働きたい。 ⇒ 9%
※ 参考テーマ「Flexible Work

2月21日(1) $10,000 vs $50,000
Source :Debate Over Student Loan Forgiveness Hinges On 2 Numbers: $10,000 Vs. $50,000 (NPR)
連邦学生ローンの借入者は4,300万人、債務残高は$1.6Tにのぼるとされている。民主党政権は、学生ローン債務免除を主張しているが、その限度額を巡って対立が起きている。これは、バイデン大統領就任当初から争われている(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」参照)。
  • 債務免除上限額は$10,000:バイデン大統領

    1. 法律改正による。大統領令には債務免除に関する権限はない。

    2. $10,000超の債務免除は、救済する必要のない者を援助することになる。
      1. 債務残高$10,000未満の借入者は、借入者全体の1/3以上を占める。

      2. こうした借入者は、1学期だけとか、1、2年だけとか通学し、学位を取得していない。

      3. 学位を取得せずに借入が残っている者は返済に苦しんでいて、破綻する可能性が高い。逆に、学位を取得した者は債務返済できる可能性が高い。

      4. 約800万人の借入者が破綻しており、その多くは借入残高が$10,000未満である。

      5. 借入者が破綻した場合、連邦所得税の還付、給与、公的年金給付が差し押さえられてしまう。

      6. 学生ローン残高の1/3以上は、家計所得上位20%の家庭の出である。

  • 債務免除上限額は$50,000:ウォーレン、シューマー両上院議員

    1. 大統領令による。

    2. 借入者の約80%が$50,000以下の債務を負っている。

    3. $50,000の債務免除を行なえば、特に黒人家庭の財産増に役立つ。
どうも、政策効果ではバイデン大統領の主張が正解のようだ。

※ 参考テーマ「教 育

2月21日(2) ワクチン接種の義務付け
Source :Survey: Only 6% of US employers plan to mandate COVID-19 vaccination (HR Dive)
上記sourceでは、従業員のコロナワクチン接種に関する企業側の考えを調査した結果が示されている。ポイントは次の通り。
  1. ワクチン接種を義務付けた ⇒ 1%未満

  2. ワクチン接種が可能になれば接種を求める計画である ⇒ 6%

  3. ワクチン接種の義務付けに懸念を抱きつつ検討している ⇒ 43%

  4. ワクチン接種の義務付けが従業員の反発を招くと懸念している ⇒ 79%
ワクチン接種の義務付けに懸念を抱いているのは、従業員のやる気への悪影響や、ワクチンの副反応に対する法的責任を心配しているからだ。

一方、従業員を対象にした別の調査では、
  1. ワクチン接種を義務付けるべきではない ⇒ 53%

  2. 仮に義務付けられた場合、退職を考える ⇒ 43%
と、義務付けに対する反発が強い。こうした職場の雰囲気が企業側に伝わっているのだろう。まだワクチン接種が始まっていなかった12月の調査では、ワクチン接種を義務付ける方が好ましいと考える企業が71%もあったのだから。

EEOCは、ワクチン接種に関するガイドラインにおいて、
  • 企業が従業員に対してワクチン接種証明書を提出するよう求めることができる

  • ワクチン接種をしていない従業員が職場に入らないようにすることができる
としている。

しかし、現時点で、企業側はワクチン接種を義務付けるよりは、インセンティブの提供に注力している。

もっとも、Fauci教授によれば、アメリカ国民の大半がワクチン接種を受けられるのは5~6月、接種が終わるのは夏の終わりになるという(2月16日発言)。その頃までは義務付けても詮無いことだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/雇用法制