8月10日 IL州退職貯蓄プラン参加義務拡大
Source :Illinois Expands its Secure Choice Mandatory Retirement Savings Program (Jackson Lewis P.C.)
Illinois州の退職貯蓄プラン"Illinois Secure Choice"の加入義務付け範囲が拡大される。制度改正のポイントは次の通り。
  1. プラン参加を義務付けられる企業:従業員25人以上 ⇒ 従業員5人以上

    • 従業員16~24人の企業の参加義務:2022年9月1日以降

    • 従業員 5~15人の企業の参加義務:2023年9月1日以降

  2. 従業員の拠出率:5% ⇒ 拠出率の自動引き上げ制導入(最大10%)

  3. 参加義務のある企業が参加しなかった場合のペナルティ:1年目$250/従業員、2年目$500/従業員 ⇒ 2年が連続である必要はない。(明確化)
Illinois州は、州立退職貯蓄プランのパイオニアである(「Topics2015年1月7日 IL州:自動加入年金プラン法案成立」参照)。先日紹介した各州の現状でも、先頭で紹介されている(「Topics2021年5月27日 州立退職貯蓄プランの現状」参照)。しかし、企業の参加義務付けに関しては、CT州に遅れをとってしまったようだ(「Topics2021年8月7日 CT州退職貯蓄プラン試運転」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月9日 学生ローン返済停止措置延長
Source :Education Department Announces 'Final Extension' Of Student Loan Payment Freeze (NPR)
8月6日、教育省(Department of Education)は、連邦学生ローン返済、利払い停止措置を、2022年1月31日まで延長すると発表した(Press Release)。この延長がなければ、同措置は9月30日で終了する予定であった(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」参照)。

なお、教育省は、今回の延長措置が『最終("a final extension")』としている。今から、来年2月1日からの返済、利払い開始に備えるよう求めている。

上記sourceで紹介されているアンケート調査結果(今年春に実施)によれば、「9月30日に返済停止措置が終了したら、支払いに困ることになる」との回答が3分の2に達している。こうした声を背景に、Warren上院議員など民主党左派グループは、少なくとも3月末までの延長を求めると同時に、教育省の権限で学生ローン残高のうち$50,000を債務免除すべきであると要求している(Press Release)。これはかねてからの彼女の主張である(「Topics2021年2月21日(1) $10,000 vs $50,000」参照)。

※ 参考テーマ「教 育

8月8日 7月も雇用大幅増
Source :Restaurants Are Dangling Vacation And Matching 401(k), But Many Workers Aren't Biting (NPR)
8月6日、労働統計が公表された(BLS)。7月の雇用増は94.3万人となった。先月に続き、市場の期待を上回る大幅増だ(「Topics2021年7月5日 雇用増は大幅だが」参照)。

業種別では、サービス、レジャー/ホスピタリティが増えている。
失業率も5.4%と、6月から0.5%ポイント低下した。
パンデミック発生以前に較べて、依然として570万の雇用が回復していない。
長期失業者(27週以上)の割合は39.3%と、先月の42.1%から若干低下したが、相変わらず高止まりしている。
加えて、労働市場参加率も61.7%と、横ばい状態が続いている。
サービス、レジャー/ホスピタリティで雇用が増加しているとは言っても、求人をすれども見つからないという状況が広まっている。上記sourceでは、Wheat Pennyというレストランの窮状が紹介されている。 レストランとしては破格の条件を用意している。にもかかわらず、応募が全くないという。

失業給付の上乗せが終了する9月になれば労働供給は戻ってくるかもしれない。また、9月に学校が始まれば、戻って来るかもしれない。そういう期待がある反面、コロナ感染の再拡大は暗い影を投じている(「Topics2021年8月6日 ワクチン接種動向(7月)」参照)。企業が相次いで職場での勤務の再開を延期し始めているのである(「Topics2021年7月30日 出勤時のワクチン接種義務化」参照)。
  接種義務付け
(出勤の場合)
職場勤務再開出勤頻度
Google9月⇒10月18日
Facebook10月許可制在宅勤務
Apple×10月に延期3Ds/W
Amazon×秋⇒2022/1/33Ds/W
Microsoft9月
twitter未 定期間限定なしの在宅勤務OK
※ Microsoftについて、接種義務化との報道(8/3日経)があったので、×から○に修正。Amazon、twitterについては職場勤務再開延期の報道(8/7日経)があったので修正。
職場への出勤がなければ、オフィス街や歓楽街での食事は増えてこない。レストランにとっては顧客の来店が減ってしまう可能性が高いのである。

※ 参考テーマ「労働市場

8月7日 CT州退職貯蓄プラン試運転
Source :Connecticut to Launch Pilot of Auto-IRA Program (AMERICAN SOCIETY OF PENSION PROFESSIONALS & ACTUARIES)
Connecticut州の州立退職貯蓄プラン(MyCTSavings)のパイロットプログラム参加募集が始まった(「Topics2016年5月3日 CT州:退職貯蓄プラン法案可決」参照)。パイロットプログラムは、9月開始予定とされている。

パイロットプログラムの概要は次の通り。
  1. 従業員5人以上の企業で、適格退職貯蓄プランを提供していない企業が参加できる(義務ではない)。

  2. 従業員は19歳以上で、120日以上CT州で就業していることが求められる。

  3. 参加した企業の従業員には、通知が届く。その際、従業員には3つの選択肢がある。
    1. 何もしない ⇒ 自動的にプラン加入となり、給与の3%がRoth IRAに拠出される。拠出金は、Target Date Fundで運用される。

    2. プラン内容を変更する ⇒ 給与の3%拠出を増減できる。また、運用先も変更できる。

    3. プラン加入を辞退する ⇒ 30日以内に退出選択が可能。
MyCTSavingsの正式運用は、2022年早期を予定している。正式運用になれば、従業員5人以上かつ適格退職貯蓄プランを提供していない企業の参加が義務付けられる(「Topics2021年5月27日 州立退職貯蓄プランの現状」参照)。従って、ある程度社内準備が進んでいる企業は、このパイロットプログラムに参加することになるだろう。

一方、従業員5人未満の企業には参加義務はない。こうした企業も同プランに参加すれば、従業員はIRAまたはRoth IRAの選択ができるようになる。その際のデフォルトはIRAとなる。従来から持っていたIRAの管理も、同プランが引き継ぐことになる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月6日 ワクチン接種動向(7月)
Source :KFF COVID-19 Vaccine Monitor: July 2021 (Kiaser Family Foundation)
これまでずっと見てきたワクチン接種動向の7月調査結果を確認する。
  1. 少なくとも1回は接種した人の割合は67%。1ヵ月前が65%だから、ほぼ頭打ち状況。すぐに打ちたいという人の割合も10%で横ばい。
  2. まだ打っていない人のうち、約1/4が年内には打ちたいとしている。しかし、絶対打たない(46%)、たぶん打たない(15%)人の割合が6割に達しており、今後の大きな伸びは期待できない。
  3. ワクチン接種に対する姿勢が鮮明に分かれるのは、『民主党支持者⇔共和党支持者』、『都会の居住者⇔郊外の居住者』。ちょっと悲惨なのは、無保険者がワクチン接種割合が低く、抵抗感も強いこと。
  4. 絶対に打たないとしている人々は、コロナ感染を恐れておらず、むしろワクチン接種の方がリスクが高いと考えている。
こうしたワクチン接種状況を背景に、デルタ株への変異に伴って感染者数が急増している。

Johns Hopkins University & Medicine
また、リスクレベルも上がってきている。

Brown School of Public Health
労働市場に影響が及んでくるかもしれない。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「無保険者対策/連邦レベル

8月5日 選挙区見直しの主導権
Source :Redistricting battles kick off early as Democrats scramble to try to cut into GOP advantages (Washington Post)
センサス調査詳細結果公表予定日である8月16日が近づいてきた(「Topics2021年4月27日 センサス結果第1弾」参照)。上記sourceは、各州がざわつき始めたという報道であるが、今回は、誰が選挙区見直しを行なうかについて、基礎的な情報を確認しておく。

下の地図群は、左側が『各州のどの機関が選挙区割り案を作成するのか』である。。徐々に独立機関を設置する州が増えていることがわかる。一方、右側は『実際に案作りに参画する人の党派別はどうか』である。確実に共和党陣営が拡大していることがわかる。
2000年
2010年
2020年
Source : Who Draws the Lines (All About Redistricting
主導権を握っている州数の党派別推移を2000年から見ると、 と、議会が選挙区割りをにぎっているところを共和党がどんどん押さえてきているのである。

そして、これを選挙区数でみると、下図のようになる。
何と4割強の選挙区で、共和党が影響力を発揮できる構図になっているのである。

しかも、人口移動が起きているために、民主党が強いCA、NY州で議席数を減らし、共和党が強いTX、FL、NC州で議席数が増えている。

今月から、来年11月の中間選挙に向けたつばぜり合いが始まる。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「中間選挙(2022年)

8月4日 Amazon労組再投票か?
Sources : Amazon Warehouse Workers In Alabama May Get To Vote Again On Union (NPR)
Amazon union election results should be set aside due to misconduct, NLRB officer recommends (CNN)
今年4月、Amazon集配所での労組結成が否決された。しかし、その後、労組が企業側に違反があったとしてNLRBに訴えていた(「Topics2021年4月12日 Amazon労組反対」参照)。その結果、1回目の結果にかかわらず再投票を行うことになると、8月2日、労組側が公表した。

ただし、この公表分をよく読んでみると、
  1. 労組の意見を聴取する審判員が、Amazon側に違法行為があったと判断し、NLRB支部の判事に対して投票のやり直しを推奨する、

  2. 今後の手続きのことは、NLRBに直接聞いてくれ、
とあり、まだ決定した訳ではないようだ。実際、報道機関がNLRBに問い合わせてもコメントは得られなかった。

パンデミック対応で郵便による投票を実施したのだが、違法行為のポイントはその投票箱の設置の仕方だそうだ。

いずれにしても、全米が注目した投票結果だけに、今後の推移が気になるところである。

※ 参考テーマ「労働組合

8月3日 NLRB/EEOC委員
7月28日、NLRB委員指名が承認された(「Topics2021年7月22日 DOL/NLRB人事」参照)。 共和党のCollins議員 (R-ME)、Murkowski議員 (R-AK)の2人が、いずれも賛成票を投じた。この結果、NLRB委員構成は次のようになった。なお、新任委員の就任の日付はまだわかっていない。なにせ、HPが未だに旧委員構成のままなのだから。※ 8月5日時点でHP更新を確認
【2021年8月5日時点】
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chairman
2021.1.20~
Lauren McFerranDPresident Obama①2014.12.17~2019.12.16
②2020.7.29~2024.12.16
MemberJohn RingRPresident Trump2018.4.16~2022.12.16
MemberMarvin E. KaplanRPresident Trump①2017.8.10~2020.8.27
②~2025.8.27
MemberWilliam J. EmanuelRPresident Trump2017.9.26~2021.8.27
David ProutyDPresident Biden2021.8.28~2026.8.27
MemberGwynne WilcoxDPresident Biden2021.8.5~2023.8.27
General CounselJennifer AbruzzoDPresident Biden2021.7.22~2025.7.21
一方、EEOC委員構成については、事務局長が空席となっている(「Topics2021年2月12日(2) EEOC/NLRB委員」参照)。
【2021年8月1日時点】
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chair
2021.1.20~
Charlotte A. BurrowsDPresident Obama①2014.9.12~2019.7.1
②~2023.7.1
Vice Chair
2021.1.20~
Jocelyn SamuelsDPresident Trump2020.10.14~2021.7.1
MemberJanet DhillonRPresident Trump2019.5.15~2022.7.1
MemberKeith E. SonderlingRPresident Trump2020.9.22~2024.7.1
MemberAndrea R. LucasRPresident Trump2020.9.22~2025.7.1
General Counsel
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合

8月1日 連邦職員にワクチン接種要請
Source :Biden orders tough new vaccination rules for federal workers (AP)
7月29日、バイデン大統領は、国民向け演説の中で、連邦政府職員に対してワクチン接種を求めた(The White House)。ポイントは次の通り。 連邦政府職員は400万人、連邦政府契約企業従業員は700万人近くにのぼると見られている。

アメリカでは、成人の2回接種割合は60%程度、1回接種は69.3%。明らかに伸び悩んでいる(「Topics2021年7月4日 ワクチン接種とリアル出勤」参照)。そのような状況の中で、なんとかワクチン接種率を高めようとするバイデン政権の決断だが、いろいろな所から反発をくらっている。

先ず、共和党議員並びに共和党支持者達だ。州レベルでは、企業が雇用の条件としてワクチン接種を求めることを禁止する法案が100以上提出されている。実際、全従業員にワクチン接種を求めている企業は、10%にも満たない。

また、労働組合の中にも反対しているところが出てきている。

一方、全米商工会議所(USCC)は、バイデン大統領の方針を歓迎するとのコメントを出している。社会の安全を確保するためにワクチン接種を急ぐべきだ、との立場だ。

ワクチン接種を巡るバイデン政権の立ち位置は、政治イシューになりつつある。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活