6月6日(1) CPI標本縮減
Source :Why some economists are worried U.S. inflation data (NPR)
トランプ政権下の歳出削減、人員削減策が、物価統計に悪影響を及ぼしている。6月4日、BLSは次のようなステートメントを公表した。
  1. 全米にわたり、地域のサンプル数を削減した。

  2. いくつかの地域では、4月からデータの収集事態を停止した。

  3. CPI-Uにもたらす影響は最小限にとどまるものの、部分的には変動が大きくなる可能性がある。
これからトランプ関税の影響が本格化する局面であり、こうした統計標本の縮小がどのような影響をもたらすのか、専門家は大きな懸念を抱いている。特に、FRBは神経をとがらせていることだろう。

また、物価統計は、様々な政策の中で「物価連動」という形で反映される。公的年金支給額がその典型である(「Topics2025年5月16日(2) 2026年COLA予測が低下」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

6月6日(2) 異性愛者を差別
Sources :SCOTUS unanimously sides with straight Ohio woman in ‘reverse discrimination’row (HR Dive)
Supreme Court sides with straight Ohio woman who claimed workplace discrimination
職場における性差別について争われている事案、"Ames v. Ohio Department of Youth Services"は、概ね次のような経緯を辿っている。
  1. Marlean Amesは、Ohio州Department of Youth Serviceに20年間勤務してきた。

  2. その間、昇進を阻まれて、代わりにレズピアン女性が昇進し、Ames氏は実質的に降格させられた。

  3. そのAmes氏の後任には、ゲイの男性が採用された。

  4. Ames氏は、職場における性差別だとして、Ohio州Department of Youth Serviceを相手取って訴訟を起こした。

  5. 第6控訴裁判所は、マジョリティ集団に属する人が差別を訴える際には、"background circumstances"が必要であるとの考えを示し、原告の訴えを退けた。
6月5日、連邦最高裁は、全員一致で第6控訴裁判所の判決を覆し、差し戻しを決定した。この判決は、マジョリティ集団であれ、マイノリティ集団であれ、職場において性、性自認、性指向に基づく差別されてはならない、との考え方を示したものであり、その訴えに別の条件を設けることを禁じたことになる。

極めて真っ当な判決である。しかも、全員一致という力強いメッセージを伴っている。この判決をもって、アメリカ社会におけるDEIの後退などと指摘してはならない。

※ 参考テーマ「LGBTQ

6月6日(3) 宗教団体の雇用保険免除認める
Source :Unanimous Supreme Court sides with Catholic Charities in Wisconsin case (NPR)
Catholic Charities Wisconsin支部は、州政府に対して と主張していた。これに対して、州政府は、宗教団体と言えども雇用保険免除は認められないとしていた。

同州最高裁は州政府の主張を認めていたが、6月5日、連邦最高裁は、全員一致でCCUSAの主張を認めた。

WI州と同様の雇用保険制度を採用している州は、上記sourceによれば46州もあり、それらへの影響もあり得る。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

6月4日(1) 労働需給状況は安定(2)
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
6月3日、BLSが、4月末の求人数を発表した。4月末の求人数は739.1万人で、前月比2.7%の増加となった(「Topics2025年5月2日(1) 労働需給状況は安定」参照)。まだまだ反転したとは言い切れない状況だ。
労働力人口に占める求人数の割合は4.4%と上昇した。
新規雇用数は557.3万人と微増だった。
失業者数/求人数は、1.0と横ばい。
4月の自発的失業(Quits)は319.4万人と減少。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2025年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2025年
アトランタ連銀による時間給のデータは、4月も前年比4%台前半で概ね収束している。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
※ 参考テーマ「労働市場

6月4日(2)IL州:PBM改革法案可決
Source :Illinois legislature passes massive PBM reform bill (NCPA)
5月31日、IL州議会は、Prescription Drug Affordability Act(H.B. 1697)を可決した。州知事は、同法案を支持する旨を表明しているので、成立に向かうものと思われる。

上記sourceでは、詳細はわからないが、医薬品の値付け、経営に関する監査など、相当厳しくPharmacy Benefit Management(PBM)を制約するものとなるようだ。

※ 参考テーマ「医薬品

6月4日(3) ベネフィット制度変更案
Source :The One Big Beautiful Bill Act (Tax Reform): Employee Benefits and Executive Compensation Breakdown (Proskauer Rose LLP)
上記sourceは、連邦議会下院で可決された歳出フレーム法案(H.R.1 - One Big Beautiful Bill Act)のうち、従業員ベネフィット、幹部報酬に関する制度変更案について解説している(「Topics2025年5月23日 Big Beautiful法案下院可決」参照)。

同法案は、現在、上院で審議中であり、間違いなく修正がなされると思われる。成立した段階で精査していこうと考えている。

※ 参考テーマ「ベネフィット