10月10日(1) IBMもワクチン接種義務化
Source :IBM says all U.S. employees must be vaccinated by Dec. 8 or face unpaid suspension (CNBC)
IBMは、アメリカの従業員にワクチン接種を義務付けることを決めた。ポイントは次の通り。
  1. アメリカの従業員は、12月8日までにワクチン接種を完了しなければならない。

  2. それまでに接種しなければ、無給の自宅待機となる。ワクチン接種を完了すれば、給与は支払われる。

  3. 健康上、宗教上の理由での免除を認める。

  4. 無給自宅待機となっても、同社の401(k)プラン加入資格は有している。同社プランでは、12月15日に企業分(最高6%)が拠出される。
連邦政府の契約企業として守らなければならない、というのがその理由だ(「Topics2021年10月3日(1) 航空会社への接種義務化圧力」参照)。United Airlinesも同様の理由でワクチン接種を義務付けたが、IBMはワクチン未接種従業員の解雇までは踏み込まない(「Topics2021年9月30日 UA vs Delta」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」、「DB/DCプラン

10月10日(2) 保険料割引を政府が是認
Source :Feds OK health plan discounts for coronavirus vaccination (HR Dive)
10月4日、連邦政府3省(DOL、HHS、DOT)は、企業提供保険プランにおいてワクチン接種をした従業員の保険料を割引することを容認すると公表した。ただし、割引率の上限は30%である。

既にEEOCが公表しているガイドラインを連邦政府として是認するということだ(「Topics2021年8月13日(2) ワクチン接種と保険料」参照)。

Delta航空に続く企業が増えてくることになろう(「Topics2021年9月30日 UA vs Delta」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」、「医療保険プラン

10月9日 労働市場への復帰が進まない
Source :August's jobs numbers were bad. September was even worse, but there's room for hope (NPR)
10月6日、労働統計が公表された(BLS)。9月の雇用増は19.4万人と、8月に続いて急ブレーキがかかっている(「Topics2021年9月4日 雇用増幅急落」参照)。サービス、レジャー関連が増加している。
失業率は4.8%と、8月から0.4%ポイント低下した。こちらは順調に低下し続けている。
パンデミック発生以前に較べて、依然として500万の雇用が回復していない。
長期失業者(27週以上)の割合は34.5%と、先月の37.4%から低下したが、相変わらず高止まりしている。
加えて、労働市場参加率も61.6%と、完全に横ばい状態が続いている。特に、女性の参加率の低迷が目立つ。
労働市場は逼迫状態になっている一方、労働者の市場参加が進まない。学校が再開されても、失業保険加算給付が終了しても、労働市場に戻ってこないのである。

労働市場に参加していない人の中で、仕事を得たいと考えている人数は、まったく回復していない。
その一つの理由として、上記sourceでは、高齢者の回復が進んでいないことが考えられるという。労働市場への復帰ではなく、リタイアを選択した人の割合が高いのかもしれない。

もう一つはコロナ感染の再拡大である。アメリカの感染者数は、大きく下がらないまま再び増加傾向に入っている。

Johns Hopkins University & Medicine
危険な状況が全米に広がっている状況は、先月と変わっていない。

Brown School of Public Health
コロナ感染が収まってきた時に、労働市場への参加意欲がどのようになっているのかがポイントだろう。

※ 参考テーマ「労働市場

10月8日 2022年企業プランは4.7%増
Source :Employers expect a 4.7% increase in health benefit costs for 2022 as they focus on improving employee benefits rather than cost-cutting, Mercer survey finds (Mercer)
こちらは、2022年の企業提供保険プランの動向を調査したものだ。ポイントは次の通り。
  1. 医療保険コストの伸びは4.7%と、2020-21を上回りそうだ。
  2. ただし、2022年は例年以上に不確定要素が多い。

    1. 過去2年間、治療・診療を遅らせたり止めたりした影響がどのように出てくるか。

    2. コロナ関連の医療費がどれくらい増えるのか

    3. 労働市場の逼迫、賃金の上昇、医療物資の不足、医療費開示ルール(「Topics2021年8月25日 医療費開示拒否」参照)がどのような影響をもたらすか。

  3. 従業員の医療費負担を増やそうと考えている企業は38%のみで、2021年の47%から大きく減少している。

  4. その結果、従業員の負担割合は22%と、2021年と同水準にとどまる。大企業だけに限ってみると、従業員の負担割合を縮小しようと考えている企業が32%、増やそうとしている企業が17%だ。
企業提供保険プランにおける企業の役割が見直されているようだ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

10月7日 保険プランは復元
Source :Key Findings (Segal)
2022年の医療保険プランの動向を調べた調査の結果が公表された(2022 Segal Health Plan Cost Trend Survey Report)。ポイントは次の通り。
  1. 全体を通して、パンデミック以前のレベルにほぼ戻った。

  2. 医療保険コストの伸びは、ほぼ7%前後。
  3. 入院コストの上昇が、その大きな要因となっている。
  4. 処方薬、特に特効薬については大きな伸びとなる。
  5. 特効薬の新規利用がその要因となっている。
  6. 2020年は、パンデミックの影響で、診療・治療を止めたり延期したりしたため、医療保険プランのコストは大きく減少した。
  7. 2021年のコスト抑制策として、①高免責額保険プラン、②医薬品管理プログラムの活用が注目されている。
※ 参考テーマ「医療保険プラン

10月6日 連邦職員接種免除申請
Source :US Unveils Guidance for Federal Vaccine Mandate, Exemptions (Associated Press)
10月4日、OMBが、連邦政府職員のワクチン接種免除申請プロセスの概要について公表した。ポイントは次の通り。
  1. 他の安全措置が講じることができない場合、健康上でも宗教上でも免除申請は却下される。

  2. ワクチン接種免除申請が却下された場合は、そこから2週間以内に1回目の接種を受けなければならない。

  3. 妊婦については、健康状態によっては接種を遅らせることを検討する。

  4. ワクチン未接種の職員は、マスク着用、ソーシャルディスタンスの確保を求められ、出張は認められない。

  5. 未接種職員の検査方法については、数週間後に公表する。

  6. 11月8日:ワクチン接種終了期限。

  7. 11月22日:ワクチン接種完了期限。ワクチン接種完了とは、ファイザー、モデルナは2回、J&Jは1回接種後、2週間経過したことを指す。
ファイザー、モデルナの場合、1回目と2回目の間に4週間おくとすれば、ワクチン未接種の連邦政府職員にはもう時間が残されていない。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月3日(1) 航空会社への接種義務化圧力
Source :American, Alaska Airlines and JetBlue will require their employees to be vaccinated (NPR)
White Houseの担当官が、American, Delta, Southwestの3航空会社との間で、ワクチン接種の義務化について話したそうだ。バイデン大統領の提案によれば、100人以上を雇用する民間企業としては、ワクチン接種または週毎の検査でよい。しかし、連邦政府との契約企業としては、週毎の検査という選択肢はない(「Topics2021年9月11日 民間企業接種義務化大統領案」参照)。

American AirlinesのCEOは、検討中だが、ワクチン未接種の従業員は、American Airlinesで働くことはできないだろう、と公言している。

Deltaは、保険料上乗せ措置を導入している(「Topics2021年9月30日 UA vs Delta」参照)。しかし、連邦政府契約企業としては義務付けしなければならない。同社は検討中ということである。

Southwestも検討中である。

他の航空会社では、United Airlinesは既に接種義務化を導入している(「Topics2021年9月30日 UA vs Delta」参照)。Alaska AirlinesとJetBlue Airwaysも接種を義務化するだろうと述べている。

一方、American航空のパイロット組合の推計では、パイロットのうち4,200人(30%)が未接種という。AmericanとSouthwestのパイロット達は、ワクチン接種だけでなく、定期的検査を含む別の選択肢を認めるように求めている。

連邦政府契約企業のワクチン接種義務化の期限は、12月8日である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月3日(2) 連邦最高裁は接種義務化に寛容
Source :Supreme Court justice has turned down NYC teachers' appeal of the vaccine requirement (NPR)
10月1日、連邦最高裁は、NY City教職員のワクチン接種義務化差し止め請求を棄却した。時系列は次の通り。 今年8月、Amy Coney Barrett判事も、Indiana大学生の大学ワクチン接種義務化差し止め請求を棄却した。同判事は、コロナ感染症拡大を防止するために州政府が教会での礼拝を規制した事件を合憲と認めたこともある(「Topics2021年7月8日 Barrett判事の評判」参照)。リベラル、保守両派の判事が義務化差し止め請求を棄却したことになる。

連邦最高裁は、ワクチン接種義務化に寛容な判断を示している。

※ 参考テーマ「司 法」、「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月1日 大学アスリートは従業員か
Source :Private College Athletes Are Employees, NLRB Top Lawyer Says (Bloomberg)
NLRBの事務方トップが、「私立大学のアスリートは労働法上の従業員である」と発言した。

この発言をしたのは、NLRB General CounselJennifer Abruzzo氏だ。彼女は、NLRBでのキャリアが長く労働法を熟知している。上院での指名承認投票では、副大統領の投票により可決されており、党派色の強い人物である(「Topics2021年7月22日 DOL/NLRB人事」参照)。

Abruzzo事務局長の主張のポイントは次の通り。
  1. 私立大学のアスリートは、連邦法上の従業員である。

  2. 一定の要件を満たすアスリートは、労働法に基づく保護を受ける権利がある。

  3. 最近の連邦最高裁の判決は、大学スポーツは利益を生み出す組織であることを示唆している。

  4. 大学アスリートはアマチュアであるとのNCAAの主張は否定する。

  5. スポーツ協会と大学は、学生アスリートの共同雇用主である。
上記3.の最高裁判決とは、今年6月の"National Collegiate Athletic Association v. Alston"事件で、『学生アスリートが教育に関するベネフィットを受け取ることを妨げることはできない』との考え方を全員一致で採択したことを指している。

もしも事務局長の主張をNLRBが容認した場合、私立大学の学生アスリートは労働組合を結成することができることになる。

今のところ、事務局長の主張を通すに当たって、2つの障害があるという。
  1. 2015年、Northwestern大学アメリカンフットボールの選手たちは従業員であるかどうかが争われた。その際、NLRBは全員一致で訴えを棄却した。しかし、学生アスリートが従業員であるかどうかについての判断を示していない。その判断を明確にすることは、労使関係の安定性を強化することにはならないというのが、その理由だった。

    現在のNLRB議長Lauren McFerran氏は、その判決に参加していたが、その立場を変えたという意思表明は行われていない。

  2. NCAAのようなスポーツ協会には、州立大学などの公立大学も多く参加している。
アメリカンフットボールやバスケットの大学選手は、プロに直結していることは明白だ。卒業を待たずにプロチーム入りする例もよく見る。大学と選手との関係に、プロ的な要素がだんだん浸透してくることは避けられないのであろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合