9月6日 厳しさが続く雇用情勢
Source :Job Gains Slowed Again In August As Employers Added 1.4 Million Jobs (NPR)
8月の雇用統計は、140万人の雇用増、失業率は8.4%となった。失業率は7月より低下したものの、雇用増加幅は減少している。しかも、このうち23.8万人はセンサス調査のための一時雇用であり、実力ベースはさらに低い。

雇用情勢はまだまだ厳しさが続きそうだ。

※ 参考テーマ「労働市場

9月5日 CA州政府ジェネリック供給法案
Source :California may be the first state to develop its own generic drugs (Los Angeles Times)
8月31日、California州(CA)議会は、CA州Health and Human Services Agency(CHHS)に対して、製薬会社と提携して広範囲のジェネリックを供給するよう命じる法案(SB-852)を、圧倒的多数で可決した。これが実現すれば、州政府がジェネリックの供給に直接関与する最初の例となる。

法案の内容、手続きに関するスケジュールは次の通り。
2020年9月30日CA州知事の署名期限
2021年1月までにCHHSと製薬会社の事業提携契約
2022年7月までに供給するジェネリックのリスト化
2023年7月までにリスト化されたジェネリックの製造の可否判断
同法案では、慢性病で医療費の高い症状に対応したジェネリックを優先するよう求めている。例えば、糖尿病だ。また、郵送が可能となるように求めている。

こうした取り組みにより、処方薬にかかるコストを抑制し、ひいては保険料を抑制しようという試みである。

既にUtah州に本拠を置く非営利製薬会社Civica Rxとの間で、提携に関する協議が始まっている。また、ジェネリック製薬協会(Association for Accessible Medicines)は、歓迎の意向を表明している。

一方、ブランド品製薬会社を代表するPhRMAは、静観の構えだ。

※ 参考テーマ「医薬品」、「無保険者対策/CA州

9月4日 新規失業減少
Source :New Jobless Claims Drop Below 1 Million, But There's A Caveat (NPR)
9月3日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は88.1万人と、13万人減となった(「Topics2020年8月28日 新規失業は小康状態」参照)。23週間で累計5,929万人となる(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は1,325万人と、約124万人の減少となった。

ただし、今回から季節調整の手法を変更したようなので、統計数値の連続性という観点からは、手放しで減少を喜ぶことは控えるべきだろう。季節調整前の数値で見ると、新規失業保険申請数は若干ながら先週よりも増えている。

また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.9万人
と、3週連続の増加となった。ギグワーカーの苦境が続いている。

※ 参考テーマ「労働市場

9月3日 保険料課税 for 再保険
Source :What Does the NJ Health Insurance Tax Mean for Employers? (Corporate Synergies)
New Jersey州知事は、州再保険制度のための財源を調達するために、医療保険プランの保険料に2.5%の課税を行なう法案に署名した。対象となる医療保険プランは個人保険プランと大企業提供プランで、小規模企業プラン、非営利歯科プラン、Medicaid、Medicareは対象からはずれる。

再保険制度の導入は、医療保険プランの保険料全般を抑制し、加入者を増やす効果が認められている。このため、再保険制度を導入する州が徐々に増加している(「Topics2020年8月18日 NH/PA州:再保険制度導入」参照)。NJ州は、既にCMSからの承認は得ており、今回の法案成立により再保険制度の骨格の一つが明確になったことになる。

ただし、財源調達のために保険料に課税すれば、その効果は一部相殺されてしまう。

今年1月段階での資料なので、すべての再保険制度導入州をカバーしている訳ではないが、ざっと見たところ、少なくとも次の7州は、財源として保険料課税を採用している(CMS資料)。
Alaska, Colorado, Delaware, Maryland, Montana, New Jersey, Oregon
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/CO州」、「無保険者対策/MD州」、「無保険者対策/NJ州」、「無保険者対策/OR州」、「無保険者対策/その他州

9月2日 年金保険料徴収の猶予
Source :The Payroll Tax Delay Is Here, But So Is Confusion About It (NPR)
9月1日、コロナ感染症拡大対応策として、従業員負担分の年金保険料(Social Security Tax)の徴収猶予が可能となった。これは8月8日の大統領令に基づく措置である。概要は次の通り。
  1. 企業は、従業員負担分の年金保険料(6.2%)の源泉徴収を猶予することができる。

  2. 期間は、2020年9月~2020年12月。

  3. 対象となる従業員は、2週間分の給与が$4,000以下。

  4. 猶予した分は、来年前半に支払わなければならない。
徴収猶予はあくまで一時的な猶予であり、負担を免れる訳ではない。年金保険料負担について決定ができるのは連邦議会であり、大統領には権限がない。しかし、トランプ大統領は、自分が再選されれば、徴収猶予措置を恒久化すると述べている。

本件について、企業側では評判が悪い。全米商工会議所は、不公平で実効性がないと批判している。
  1. 猶予は一時的であり、来年は倍の負担を従業員に求めなくてはならない。

  2. 仮に猶予した場合でも、猶予後に従業員が退職してしまえば、企業がその猶予分を負担せざるを得なくなる。

  3. そもそも、詳細が示されたのが、施行日直前の8月28日(金)付IRSガイドラインで、企業側の対応ができない。
もしもトランプ大統領が再選され、本措置が恒久化されれば、公的年金(Social Security)にとっては大打撃となる。コロナ禍前の試算では2034年に基金が枯渇すると推計(「Topics2020年4月25日 年金/Medicareの余命」参照)されており、この時期が大幅に前倒しとなる。

やはり、トランプ大統領は、アメリカ社会のセーフティネットを壊そうとしているとしか思えない。

※ 参考テーマ「公的年金改革

9月1日 火種となるセンサス
Source :Running Out Of Time, Census Scales Back A Critical Step: Checking Its Own Work (NPR)
いよいよ、国勢調査(センサス)が終盤を迎えている。9月30日までに調査を終え、年末までに結果を提出しなければならない。

今回のセンサス調査は、これまでとは異なる環境で実施されている。
  1. トランプ大統領から、連邦政府、州政府の情報を統合して、市民権を有する国民の数を算出しろとの指示が出ている(「Topics2019年7月13日 市民権質問最終決定」「Topics2020年7月15日 州民情報の収集」参照)。

  2. 最近になって、やはりトランプ大統領から、不法移民の情報も要求されている(「Topics2020年7月25日 センサスから不法移民除外」参照)。

  3. センサス調査の基準日である今年4月1日の後、コロナ感染症拡大の影響で、多くの人々(特に学生)が移動してしまっている。

  4. オンラインで提出された回答について、住所に割り当てられた12桁のIDなしに精査、集計しなければならない。
こうした厳しい環境の中で作業を進める中、期限を守るために、いくつかの技術的な精査作業が省略されているらしい。10年に1回のセンサスは、連邦下院議員の議席配分をはじめ、連邦政府の支出配分から、選挙区の見直しまで、これから10年間のアメリカ政治に大きな影響をもたらす。そのセンサスの結果の信頼性が低下するようでは、アメリカ社会が信条とする民主主義の根幹が揺らぐ。

さらに、今回は、「アメリカ在住の人数」だけでなく、「市民権を持っている人数」まで示される。どちらを基に議席を配分するのか、財源を配分するのか、今から火種になることは明らかだ。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交