10月19日 DC:通勤ベネフィット義務化
Source :Employers Face New Penalties Under Washington, D.C.’s Commuter-Benefit Law (SHRM)
11月14日以降、D.C.で活動する企業は、従業員に対して通勤ベネフィットを提供することを義務付けられる。対象となる企業の要件は、従業員20人以上。

また、対象となる従業員の要件は、次のいずれかに該当する場合。 企業が提供しなければならない通勤ベネフィットの形態は、次のいずれかに該当するもの。
  1. 従業員の選択に基づき、月額最大$265を給与から差し引いて通勤費用に引き当てる。税制上は所得控除の対象。企業側のコストは管理費のみとなり、コストは一番安くて済む。

  2. 従業員の選択に基づき、企業側が通勤定期を提供したり、バンの相乗り費用を還付する。自転車通勤費用もこれに含まれるが、2025年までは所得税課税対象となる。こちらも月額最大$265が限度となる。

  3. 企業側が通勤サービス(シャトルバス、バンの相乗り、バス等)を現物で提供する。従業員の負担はなく、企業側にとっては最もコストのかかる選択肢となる。
こうした通勤ベネフィットの提供を怠ると、罰金が累積的に膨らんでいく。 従業員20人の最低規模の企業が、施行後1年間通勤ベネフィットを提供しないと、その間の罰金総額は15万8,000ドルになる。翌年以降も提供しなければ、毎年、19万2,000ドルを負担しなければならない。この金額は相当に重い。

一方、税制上の扱いは、いずれも従業員の所得税課税対象とはならない(除く2025年までの自転車通勤費用手当)。他方、法人税上は損金算入できない(「Topics2018年11月21日 ベネフィット関連の所得税変更」参照)。

今回のD.C.と同様の通勤ベネフィット提供義務は、NJ州、NY市、SF市でも導入されているという。大都市で活動する企業にとっては、従業員を確保するためのショバ代として認識するしかないだろう。

※ 参考テーマ「ベネフィット

10月18日 "They"
Sources : He, She, They: Workplaces Adjust As Gender Identity Norms Change (NPR)
5 Ways To Make The Office More Welcoming For People Of All Gender Identities (NPR)
人材の多様性、高度人材の確保の観点から、LGBTQへの差別をなくそうとの動きがアメリカ企業の中で進んでいる。しかし、例え経営者が重要経営課題として取り上げたとしても、企業内で従業員の意識が一朝一夕に変わる訳ではない。増してや、経営者自身の意識が変わっていなければ、何も変わらない。

従業員として提出しなければならない書類で、男女しか選択肢が用意されていないケースは多い。特に、医療保険関係は柔軟性に欠ける。一方、職場の同僚のもっぱらの関心事は、『パンツの中はどうなっているんだ。』

連邦最高裁の今期の事案の一つは、LGBTQは職場における差別禁止法で保護されるか、である。既に判事による意見聴取が始まっており、全米の注目が集まっている("Trump Appointee Gorsuch Plays Coy In LGBTQ Employment Rights Case" NPR)。判決は来年6月になるとみられているが、どのような判決が出たとしても、職場におけるLGBTQへの配慮はアメリカ企業社会の最大の関心事項となろう。

企業の本気度が問われる段階に来ている。

そこで、上記sourcesでは、経営層が採るべき5つの手段を紹介している。
  1. LGBTQに関する疑問への回答は、自分で調べてみる。インターネットでも書籍でもたくさん用意されている。

  2. 従業員が使用したいという代名詞を使用する。"They"は、LGBTQが好む代名詞であり、単数形で使用しても構わないというのが通説になりつつある。
  3. 名前に言及する時に、代名詞についても併せて言及する。

  4. LGBTQにとっても、そうではない人にとっても、最も悩ましいのがトイレ問題である。性に拘わりなく使える一人用個室トイレを用意する。
  5. LGBTQが疑問に思うことをいつでも質問できる風土を形成する。
職場は、教育機関と同様、様々な人が集まる場である。互いが互いを尊重する姿勢が大事であることは普遍であろう。

※ 参考テーマ「LGBTQ

10月16日 PPACA攻撃の総括
Source :Trump Is Trying Hard To Thwart Obamacare. How's That Going? (NPR)
上記sourceは、トランプ政権のPPACAへの対応について、政権発足後2年半の総括を行なっている。ポイントは次の通り。
  1. 先ずは、PPACA全体の廃止、新たな医療保険制度の創設(Repeal and Replace)を目指したが、連邦議会審議の最終段階で共和党がまとまることができず、関連法案は廃案となった(「Topics2017年9月27日 再挑戦を断念」参照)。

  2. 直後、トランプ大統領は次々に大統領令を繰り出し、PPACAの部分修正を求めた(「Topics2019年10月13日 オバマケア破壊大統領令」参照)。これまでの主な修正は次の5点。

    1. 個人加入義務に伴うペナルティ課税の税率をゼロに(「Topics2017年12月21日 ペナルティ課税ゼロ」参照)

    2. Medicaid就労義務規定を許容(「Topics2018年1月30日 Medicaid:就労義務規定の許容」参照)

    3. Exchange参入保険会社への補助金を終了

    4. 短期保険プラン(skinny plan)の加入期間を3ヵ月から12ヵ月未満に延長(「Topics2018年3月13日 短期保険プランの拡充」参照)

    5. 連邦立Exchange(39州)(HelathCare.gov)への加入支援活動・予算が大幅に削減された(「Topics2019年3月28日 州立Exchnage加入者数維持」参照)
個別修正のうち、上記Aはあまりうまくいっていない(「Topics2019年6月22日 AR州:就労義務規定不発」参照)。一方、上記@、C、Dの相乗効果から、連邦立Exchange加入者数は減っている。トランプ大統領の大統領令は、着実にPPACAに打撃を与えつつあるのだと思う。そうしたことから発する危機感が、州立Exchangeへの流れを促している(「Topics2019年10月13日 州立Exchangeへの流れ」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

10月13日 州立Exchangeへの流れ
Source :States take back control of their ACA marketplaces (Modern Healthcare)
連邦と協力して運営するExchangeから離脱し、州政府立Exchangeに移行しようとする動きが強まっているという。上記sourceでそうした動きを強めている州として、Maine, Nevada, New Jersey, New Mexico, Pennsylvania, Oregonの6州が挙げられている。PA州は州知事が民主党、州議会が共和党となっているが、その他の5州はいずれも州知事、州議会ともに民主党が握っている。
これらの州は、連邦政府=トランプ大統領が次々とPPACAの規制を弱体化させようとすることに危機感を抱き、無保険者割合が上昇してしまうことを避けるために、Exchangeを州政府がコントロールできるようにしておきたいという意図を持っている。

一方、共和党が州知事、州議会を握っている州も、逸早くPPACAの軛から逃れたいとの意図から、州立Exchangeへの移行を模索している。つまり、どの州にも州立Exchangeへの移行を指向しているのだ。

仮に、この動きが現実になれば、個人の医療保険マーケットは州別にバラバラになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル