4月18日 公的年金は要になり得るか? 
Source :Social Security: Good, But Could Be Better (Businessweek)
3月にEBRIが公表した退職後生活への信任調査結果で、『快適な老後生活を送れるだけの資産を有しているか』との問いかけに対して、「有していると思う」との回答が相変わらずの最低水準となった。

上記sourceの筆者は、これに対して「本当か」と疑問を投げかけて、公的年金を老後生活の要と位置づけるべきと主張している。 最初の上限引き上げ、撤廃は、『それができれば苦労しない』という政策担当者のため息が聞こえてきそうである。

ところで、最初のEBRI調査結果に対する評価は、正当なのだろうか。実は、国民の意識は概ね当たっているのではないかと思われる。Natixis Global Asset Management (NGAM)が公表した、世界の退職指標(Natixis Global Retirement Index)によると、アメリカは世界で19番に位置付けられているのである。
この指標は、@健康・医療、A所得水準・分布、B金融・税制、C生活の質の4つの指標を総合して算出している。
この4つの指標のアメリカの順位を見てみると、軒並み20位以下のランク付けとなっている。
ここでも指摘されている通り、アメリカの公的年金の持続可能性に対して国民は疑問を抱いている。そうした状況を改善しない限り、円満な退職後生活は望むべくもない。

※ 参考テーマ「公的年金改革

4月17日 国境警備隊員の心意気? 
Source :Border Patrol agents offer plan to avert furlughs while cuttings costs (Washington Post)
連邦政府の強制支出削減措置で、国境警備も一時帰休の対象となる可能性がある(「Topics2013年3月8日(1) 一時帰休は国境業務から」参照)。これが発動されると、国境警備が手薄となり、不法侵入者、密輸取引の増加につながりかねない。

こうした事態を重く見た国境警備隊員の労働組合は、次のような提案を行った。
  1. 所定外勤務に関わる上乗せ措置を廃止する。
    現行制度では、2週間の勤務時間で、85.5h〜$100hまでは、基本給の1.5倍を支払うことになっている。この1.5倍を1倍に引き下げるという提案である。

  2. 代替措置として、2段階で基本給を引き上げる。

  3. これにより、平均的な国境警備隊員は、上乗せ措置の廃止で$7,000を失い、基本給の引き上げで$4,000を獲得する。

  4. 連邦政府の支出は、初年度$40M、その後は毎年$125Mの削減となる。
移民制度改革の議論が本格化しているが、その大前提となる国境警備が疎かになってはお話にならない。国境警備隊員がそこまで国益を守らなければならない、と一致団結したのかもしれないが、もしかしたら、大統領府または民主党サイドから働きかけがあったのかも・・・。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「移民/外国人労働者

4月16日 連邦政府:同性カップルへの保険提供 
Source :OPM Proposes Extending Fed Health Benefits to Same Sex Partners (GovExec.com)
11日、OPMFEHBPの改革案を提示した。その柱は次の通り。
  1. 現行では、加入形式は、本人のみ(self)と家族(family)しかなかったが、これらに加えて新たに"self plus one"という選択肢を設ける。この形式では、職員本人と、パートナーまたは子供を一人加入させることができる。パートナーは、異性でも同性でも構わない。

  2. 地域限定の給付プランを認める。

  3. 処方薬に関する償還額について、販売会社と直接交渉する。

  4. 加入者の健康状態、健康管理プログラムへの参加不参加などによって、段階別の保険料を設定する。例えば喫煙者には高い保険料を請求する。
同性パートナーへの医療保険提供は、これまで行ってこなかったベネフィットである。『民間企業と同様の体制を準備しなければ、人材を確保できない』というのがその理由である(「Topics2013年4月2日 企業文化としての同性婚」参照)。アメリカ社会では、同性パートナーへの認知度は確実に上昇している。

※ 参考テーマ「同性カップル

4月15日 SB市が拠出を再開 
Source :Bankrupt California city to resume paying pension fund, but not bondholders (Reuters)
Chapter 9による再建中のSan Bernardino市(SB市)は、11日提示した2014年度予算案で、CalPERSへの拠出を再開することを明らかにした。市議会の承認が得られれば、約1年ぶりの拠出再開となる。

他方、年金債などの債権者への元利払いは予定されていない。CalPERSは、SB市のChapter 9入り、職員年金への拠出停止の是非を巡って争ってきたが、これで何とか体面を保つことはできたことになる。なにせ、あのStockton市でさえ、CalPERSへの拠出は停止していなかったのだから。

これで収まらないのは機関投資家の方である。CalPERS vs 機関投資家の争いは、いよいよ正面決戦の時を迎えつつある。

※ 参考テーマ「地方政府年金

4月14日 移民制度改革:上院超党派案 
Source :Broad Outlines of Senate Immigration Agreement Emerge (New York Times)
Immigration Plan Sets 2011 Cutoff for Path to Legalization (New York Times)
移民改革法案を検討してきた上院の超党派議員の間で、大まかな合意ができたようである(「Topics2013年4月1日 ゲストワーカー制度で進展」参照)。上記sourceによれば、概ね次のような内容らしい。 これは、現在国内に滞在する不法移民にとっては、かなり厳しい内容である。少なくとも10年間は不安定な地位のままいなければならないし、10年たっても国境警備が相当改善されなければ、さらに待たされるのである。加えて、E-VerifyやITによる出入国管理は、今でもシステムはあるものの信頼性が低いために利用が進んでいない(「Topics2012年9月19日 杜撰な指紋管理」参照)。SSNがしっかりと管理されるようにならなければ、それらの業務の信頼性が高まるとは思えない。

Obama大統領は、超党派案の骨格をなしている2段階論に対して明確に反対している(「Topics2013年1月30日 超党派の移民制度改革骨子案」参照)。不法移民への法的賦与は、国境機能改善と同時並行で勧めるべきだとしているのである。

大統領は、今回の超党派案をどのようにとらえるのだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

4月13日 MD州:厳しい医療費抑制策 
Source :Maryland’s Tough New Hospital Spending Proposal Seen As 'Nationally Significant' (Kaiser Health News)
MD州政府は、2段階にわたる医療費抑制策を提案した。詳細はまだまだこれから詰めるようだが、上記sourceによれば、大まかに言って次のようになるらしい。 第1段階の目標は、MA州のそれとほぼ同じである(「Topics2012年8月4日 MA州:医療費抑制法案」参照)。ユニークなのは、MD州だけが採用している『公定診療報酬』を使って抑制しようというところである(「Topics2012年11月1日 MD州の医療費抑制策」参照)。診療報酬(=価格)を経済の伸び率以下に抑えれば、目標を達成することはより容易になる。おそらく、MA州よりは達成の難易度は相当下がるだろう。

第2段階の"Shared Savings Program"とは、具体的には"ACO"の活用である。

ただし、ここに一つ難題があるという。

MD州は、HHSとの間で、『Medicareに通常の診療報酬を充てるのではなく、MD州の公定診療報酬を充てる』という特例措置を認める協定を交わしている。しかし、最近のMedicareコストの増加により、今の特例措置協定が失われる可能性が出ている。

MD州の公定価格の方が通常のMedicareよりも高く設定されている。従って、もしこの特例措置がなくなれば、病院などの医療機関は年間約$1Bを失うことになる。他方、上記のような伸び率抑制策が実施されると、収入減は著しいものとなる。

MA州と同様、MD州では、医療・介護分野での雇用創出は著しいものがある。しかし、医療機関の収入が抑制されれば、これまで通りの雇用創出は望めない。

こうした現実を踏まえながら、具体案が練られていくことになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MD州」、「無保険者対策/MA州」、「ACO

4月12日 PBGC保険料率決定権に再挑戦 
Source :Obama Administration Renews Call to give PBGC’s Board Control over Premium Rates (PBGC)
Obama大統領およびPBGCは、PBGC保険料率の決定権をPBGC理事会に賦与するよう、連邦議会に求める。2014年度予算教書で提案した。

本件は、2012年度予算教書でも提案した(「Topics2011年2月17日(2) PBGCに保険料決定権」参照)が、結局、法改正には至らなかった(「Topics2012年7月5日 PBGC保険料大幅引上げ」参照)。

新聞各紙の論説でも支持を得ているし、PBGCの財政健全化、持続可能性確保、保険料負担の公平性から考えて、もう一度挑戦したい、ということである。

ところで、上記sourceのPBGCのプレスリリースで、今の保険料制度の問題点を次のように説明している。
"The current system punishes responsible companies by making them pay for the mistakes of others and punishes plans by raising rates just when companies can least afford it."
この問題は、保険料をどこが決めようとも解決できない。支払い保証制度そのものを止めない限り。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

4月11日 バランスの取れた財政赤字削減策 
Source :The President's Budget for Fiscal Year 2014 (OMB)
通常より2ヵ月遅れて公表された2014年度予算教書が打ち出したのは、"Cutting the Deficit in a Balanced Way"−バランスの取れた財政赤字削減策、である。

大方の予想通り、Obama大統領は、富裕層への増税強化と、公的年金、Medicareの支出削減をセットで行う財政赤字削減策を提案した(「Topics2013年3月16日 社会保障給付削減の条件」参照)。共和党が交渉テーブルに着けるように、という譲歩の姿勢であり、久々のプラグマティスト・オバマの出現である(New York Times)。

予算教書で示された、2つの社会保障制度の支出削減策は次の通り。 当然、民主党議員からは相当な非難が上がるだろう。さて、プラグマティストは今後どう捌いていくのか。

※ 参考テーマ「一般教書演説」、「公的年金改革」、「Medicare