2月20日 過半の州で連邦立Exchange
Source :Federal Government To Run Insurance Marketplaces In Half The States (Kaiser Health News)
2月15日、State-Federal Partnership EXchangeの申し込み期限を迎え、全米におけるExchangeの姿がぼんやりと見えてきた。
Exchange & Medicaid (2013.2.20.現在)

State Health Insurance Marketplaces (CMS)
Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
今のところ、26の州で連邦立のExchangeが運営されることになっている。『今のところ』と断っているのは、州立も州・連邦立もまだ仮認可状態、または仮認可すら下りていない状況だからである。実際、MS州の州立Exchangeは不認可となり、案の定、連邦立に移ってしまった(「Topics2013年2月15日(2) MS州立Exchange不認可」参照)。 また、UT州は小規模企業は州立Exchange、個人は連邦立Exchangeにできないかと提案(「Topics2013年2月15日(1) UT州のExchange後退」参照)している。こうした提案をHHSがどのように受け止めるか、まだまだ攻防は続いている。

それでも、HHS長官が宣言しているように、2014年の保険加入は今年10月1日に始まってしまう。誰がExchangeを運営することになるかは、国民・州民、企業にとっては関係ない。本格的な準備が進むことを願うばかりである。

なお、Minnesota州がMedicaid加入資格を拡充することにしたそうなので、上記資料にも反映しておいた。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

2月19日 Emergency Medicaid
Source :$2 Billion Medicaid Program Helps Mostly Illegal Immigrants (Kaiser Health News)
恥ずかしながら、"Emergency Medicaid"という公的医療サービスがあることを初めて知った。低所得層のための公的医療保障がMedicaidだが、これに加入するには公的な身分証明が必要となる。しかしながら、公的な身分証明ができない、例えば不法移民の場合でも、診療の必要性があると認められる場合には、Medicaidサービスを提供する、というのである。つまり、不法移民などにとっては最後の頼みの綱となる制度だ。

特徴は次の2点。
  1. 医療チームによりEmergency Medicaidに該当すると判断されれば、費用負担は一切ない。ただし、緊急事態に至る前に予め認定されるということはない。(Emergency Medicaid

  2. 対象となりうるタイプは、次の通り。
このEmergency Medicaidに充てられる費用はおよそ$2Bで、そのほとんどが不法移民に使われており、中でも多いのが出産だという。

こうした状況をとらえ、『Emergency Medicaidが不法移民を惹きつけている』との主張が行われているそうだ。確かに、この制度を利用して出産すれば、その子はアメリカ国民となり、その母親ということで市民権を獲得できるケースも出てくるだろう。

それにしても、我々日本人の目から見れば、アメリカ社会は『不法』移民になんと寛大なことか。寛大だから不法移民が増えるのか、不法移民が増えているから寛大なのか、因果関係は不明だが・・・。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「移民/外国人労働者

2月18日(1) MA州:健康増進に税優遇 
Source :Wellness Program Tax Credit Incentive (CBG)
MA州政府は、一定の要件を満たした健康増進策を提供する企業に税額控除を認める提案を行った。税額控除制度のポイントは次の通り。 中堅中小企業が対象となる所がいい。大企業やその従業員は、かなりの割合で健康志向になっており、健康増進策も保険料抑制のために自主的に進めている。その意味で、政策効果の高いところを狙ってきている。

MA州は、将来の医療費抑制に向かって着々と手を打ちつつある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

2月18日(2) MA州:医療費は再び上昇見込み
Source :Danger ahead? Massachusetts health costs are rising – fast (Washington Post)
その一方で、足許の医療費の伸びはなかなか抑制できていない。2013年の医療費の伸び率は、6〜12%にまで上りそうだという。

昨年8月、MA州議会は「医療費抑制法」を成立させている(「Topics2012年8月4日 MA州:医療費抑制法案」参照)。そこでは、2013〜2017年の5年間は、『医療費伸び率≦MA州GSP伸び率』となることを目標と定めている。2013年のMA州のGSP伸び率を3.6%と置いており、医療費伸び率推計は、この目標の倍以上となる。

では、医療費伸び率が目標を上回った場合に同法ではどうするかというと、同法によって新設された"The Health Policy Commission Board"が医療機関の診療状況を確認し、医療費抑制に向けた経営改善計画を提出させるようにする。同委員会の権限はここまでで、監視機能はあるが強制力のある規制機能は保有していないのである。

こうした観点から、医療費抑制法の効力を疑問視する声が強まることは確かだろう。しかし、同法に基づく政策は今年から始まったばかりであり、医療政策の効果が現れるには時間がかかる。中長期的な観点からMA州の試みを注視していきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

2月17日 移民制度改革で労使協調 
Source :Business and Labor Unite to Try to Alter Immigration Laws (New York Times)
従来、移民制度改革では対立してきた労使だが、ここに来て協調的な動きに向かっているという。労使の意見がそろいつつある課題は次の3点。
  1. アメリカ国内に滞在している不法移民に市民権を賦与する。

  2. 経済データに基づくゲストワーカーの入国数制限

  3. E-Verifyの活用
3点目は、従来労働組合が正確性に疑問があると反対してきていたのが歩み寄ってきている。上記sourceによれば、未だに隔たりがあるとすれば、2点目について具体的にはどのような手法を講じるか、というところである。労働組合は、連邦議会にパネルを設置してそこで経済データを見ながらゲストワーカーの入国制限を決めれば良い、としている。しかし、企業側は、それでは経済動向に応じた機動的な決定ができないだろう、と懸念している。とはいっても、企業側も現在のゲストワーカー制度は面倒だと思っているところもあり、どこで折り合うか、という判断は働くであろう。

様々な利害関係者が絡んで移民制度改革議論が本格化していきそうである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月16日(1) 軍人の同性カップルベネフィット 
Source :Here Are The Benefits Same-Sex Military Couples Will Finally Receive (The Atlantic Wire)
11日、White Houseは、軍人の同性カップルに対して提供するベネフィットについて、そのリストを公表した。ポイントは次の2点。
  1. DOMAに違反しない限りのベネフィットを提供することとした。

  2. 最も重要と思われる、医療保障(TRICARE)、住宅補助は含まれていない。
連邦政府の裁量により、同性カップルへのベネフィット提供が拡大されていく。行政府の裁量に頼ったベネフィットの提供は、社会的には不安定、不公平を招く可能性があるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「同性カップル

2月16日(2) 民間版Exchange競争激化 
Source :Towers Watson Joins Aon Hewitt, Mercer As Private Exchange Competition Sizzles (AISHealth)
Towers Watsonが民間版Exchangeを設立することを公表した。

これで、Mercer、Aon Hewittとともに、ベネフィット戦略に関するコンサルタント会社が揃って民間版Exchangeを設立することとなった。医療保険というベネフィット分野で最大の関心事項について、労使ともにその動きに注目している。だからこそこぞってコンサルタント会社が参入する訳だが、競争が激化することも事実である。

そうした競争の中から新たなビジネス・フレームが誕生してくることだろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

2月15日(1) UT州のExchange後退
Source :Utah Offers to Split Health Insurance Exchange (Wall Street Journal)
Utah州は、州立Exchangeの創設を目指していたが、6日、州知事がHHS長官と面会し、「小規模企業のみを対象としたExchangeとしたい」と申し入れた。

UT州は、以前から小規模企業を対象としたExchangeを運営しており、PPACAに則るためには個人向けのプランを提供しなければならない。しかし、州議会の承認が得られず、またその他の制度作りも遅れていた(「Topics2013年1月16日 Exchangeは難題山積」「Topics2013年2月5日 PPACA:州政府は準備不足」参照)。

そこで、従来の小規模企業向けExchangeは引き続き運営するものの、個人向けは州ではやらず、連邦でやってくれ、というのである。そうすれば、共和党としては嫌な個人加入義務に関する執行も行わずに済むことになる。

UT州知事によれば、HHS長官は「ご期待にそえるようにしたい」と語ったそうだ。また、HHSの報道官は、HHS長官が「できる限り柔軟に対応し、前進のために協同したい」と述べたとしている。

本当にそんなことができるのだろうか。実務面では相当面倒なことになりそうである。それこそ官僚主義のがちがちな制度ができあがってしまうのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/UT州

2月15日(2) MS州立Exchange不認可 
Source :HHS Denies Mississippi’s Bid To Run Its Own Exchange (Kaiser Health News)
州立Exchangeを申請していながらなかなか認可が下りなかったMississippi州(MS)だが、7日、HHSは不認可を通達した(「Topics2013年1月21日 Oregon州のMedicaid改革案」参照)。
Exchange & Medicaid (2013.2.7.現在)
State Health Insurance Marketplaces (CMS)
Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
HHSが示した不認可の理由は次の2点。
  1. ExchangeとMedicaidの連携が図られていない。

  2. MS州知事とMS保険委員長が対立している。
実は、この2点は表裏一体である。PPACAでは、『Exchangeにおいて、民間保険とMedicaidはワンストップで加入できるようにしなければならない』と規定されている。民間保険は保険委員長が監督しているが、Medicaidは州知事が管理している。保険委員長はExchangeを推進しようとしてきたのだが、州知事は一貫して州立Exchangeの創設に反対してきている。そのため、MS州のExchangeの設計図ではMedicaidとの連携を組み込むことができなかったのである。

Bryant MS州知事Chaney保険委員長ともに共和党だが、Exchangeの内容については考え方が一致しなかったようだ。

HHSはMS州にパートナーExchangeを設立してもらいたいと考えているようだが、保険委員長は今回のことで連邦政府に対する信頼感を失ったと述べており、おそらくそれは難しいだろう。そうなると、今から連邦立Exchangeを作る準備を始めなければならず、大変厳しい状況になる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

2月14日 事業環境としての最低賃金 
Source :Minimum wage proposal divides Illinois (Financial Times)
12日の一般教書演説でObama大統領が提案した最低賃金の引き上げ(「Topics2013年2月13日 一般教書演説(2013年)」参照)について、翌日の13日、共和党幹部達は「認められない」として拒否する姿勢を明確にした(Financial Times)。これにより、大統領提案が法律として成立する見込みは極めて低いものとなった。

そもそも、最低賃金引き上げの所得効果はどのようなものなのか、雇用に与える影響はどのようなものなのか、という論点は、未だに決着がついていない。雇用には影響がないという論文もあれば、一定の環境下では影響があるという論文もある。総じて、リベラル派は最低賃金引き上げを歓迎し、中小企業は反対する。

これが連邦レベルから州レベルに落ちてくると、様々な要素が絡んでくる。

実は、IL州知事は、先週行なったIL州一般教書演説で、州の最低賃金を、現在の$8.25/hから$10.00/hに引き上げる提案を行っていた。IL州最低賃金の現在の水準は、全米でも4番目の高さであり、$10に引き上げれば、もちろん全米一の高さとなる。

この州知事提案についても賛否は大きく分かれているところであるが、面白いのが、上記sourceで紹介されているWisconsin州商工会の会長のコメントである。
"I'm tempted to praise Governor Quinn's decision because I do think it makes Wisconsin's business climate even more attractive by comparison," he said. "Quinn is putting political populism ahead of fiscal pragmatism."
雇用の創出のためには、彼が指摘するように、"business climate"が比較優位にあることが重要なのである。実例をもって、IL州の事業環境の比較優位を検証してみよう。もちろん、検証に利用する要素は一部に過ぎない。
各州の上段は事業環境のうちでも雇用に関する指標、下段は結果としての雇用状況ということになろう(「Topics2013年2月11日 雇用創出とRight-to-Work」参照)。

こうしてみると、IL州に隣接している5州との比較において、IL州の事業環境は悪く、その結果としての雇用状況は芳しくないというのは明らかだ。Wisconsin州商工会の会長がほくそ笑むのも頷ける。

そうした状況を考えないで最低賃金を議論しても仕方ないと思われるが、兎に角、こうやって州同士が雇用を獲得しようと競う環境は羨ましい。

※ 参考テーマ「最低賃金」、「労働市場

2月13日 一般教書演説(2013年) 
Source :State of the Union 2013 (The White House)
12日、一般教書演説が行われた。当websiteの関心事項のみ、列記しておく。 コメントを2つ。
  1. 連邦最低賃金の引き上げ提案はちょっと驚きである。現時点で連邦最低賃金($7.25/h)を上回って最低賃金を定めているのは19州。その中で大統領提案の$9.00/hを上回っているのはWA州($9.19/h)のみである。しかも、失業率が高止まりしている中での提案は、現実味が薄い。

  2. 大統領は盛んに超党派で、と呼びかけているが、大統領の後ろに座っているベイナー下院議長(R)が苦虫を噛み潰したような表情になっていて、その隣のバイデン副大統領がしょっちゅうスタンディング・オベーションしていたのとは対照的であった。
※ 参考テーマ「一般教書演説」、「最低賃金

2月12日 Basic Health Planも一年先送り 
Source :HHS Delays Basic Health Plan Option Until 2015 (Kaiser Health News)
2月6日、HHSは、"Basic Health Plan"に関する制度案の公表を1年遅らせる、と発表した。2014年から制度を実施するには事実上時間不足で、2013年中に制度案公表、パブリックコメントの募集、2014年中に最終ガイドラインを決定、2015年から制度実施というスケジュールを描いている。

"Basic Health Plan"とは、Exchangeにおいて州政府が提供できる保険プランで、PPACAでは次のような内容と規定されている(Kaiser Family Foundation)。
Basic Health Plan

Permit states the option to create a Basic Health Plan for uninsured individuals with incomes between 133-200% FPL who would otherwise be eligible to receive premium subsidies in the Exchange. States opting to provide this coverage will contract with one or more standard plans to provide at least the essential health benefits and must ensure that eligible individuals do not pay more in premiums than they would have paid in the Exchange and that the cost-sharing requirements do not exceed those of the platinum plan for enrollees with income less than 150% FPL or the gold plan for all other enrollees. States will receive 95% of the funds that would have been paid as federal premium and cost-sharing subsidies for eligible individuals to establish the Basic Health Plan. Individuals with incomes between 133-200% FPL in states creating Basic Health Plans will not be eligible for subsidies in the Exchanges.
Medicaidの加入資格はないものの低所得で保険プランの購入が難しいという個人向けの保険プランである。Exchangeは2014年実施なので、低所得者向けのプランが1年遅れることになる。これでまた、低所得者層の保険加入が進まない理由ができてしまった。

2014年の保険加入の申し込みが始まる今年の10月が本当に心配だ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

2月11日 雇用創出とRight-to-Work 
Source :North Dakota, Midwestern States Lead U.S. in Hiring (Gallup)
Gallupは、独自に"Job Creation Index"という指標を作成しており、これに基づいて、どこの州で雇用創出が活発になっているかを示している。

2012年中の雇用創出が活発だった上位10州は次の通り。
ND州は4年連続のトップを記録している。その牽引役は、エネルギー産業、ハイテク産業、農業、建設業などである。

逆に下位10州は次の通り。
こちらは東海岸の州が目立つ。金融業の不振が影響しているとみられている。

これを、2009年からの変化でランク付けして見ると、少し様子が違ってくる。
Job Creation Index
Michigan32
Minnesota29
Nevada29
Indiana27
Arizona26
Oregon25
Ohio24
Wisconsin24
California23
New Hampshire22
これらの州はいずれも、リーマンショックの影響をもろに受け、2009年に雇用を大幅に削減したところである。つまり、雇用姿勢が逆転したという州である。

さて、ここからが本題である。このGallupのJob Creation Indexが高い順番に州を並べたものに、"Right-to-Work"法を導入したところ(24州)に黄色の○印をつけてみたのが次の表である(「Topics2012年12月13日 MIがRight to Work州に」参照)。
見事にIndex上位の州は、ほとんど"Right-to-Work"州である。

加えて、Mackinac Center for Public Policyというシンクタンクは、次のような研究成果を公表している(NCPA)。 これだけの事象がすべて"Right-to-Work"法によるものとは言えないだろうが、事業環境として重要な要素の一つとなっていることは間違いあるまい。

※ 参考テーマ「労働市場」、「労働組合