2月10日 Cadillac Tax修正提案 
Source :Administration Proposes a ‘Cadillac Tax’ Tweak (SHRM)
2月9日公表予定の予算教書で、Obama大統領はCadillac Taxに関する修正提案を盛り込む予定だ。

昨年末、Cadillac Taxの施行時期は2年延期となっている(「Topics2015年12月17日 Cadillac Tax延期」参照)。それに修正を加えてでも施行しようという政権の姿勢を明確にしている。

修正案は、『"Exchange"における"Gold Plan"の平均保険料がCadillac Taxの法定課税最低限を上回っている場合、課税最低限を"Gold Plan"平均保険料に置き換える』というものである。

連邦法(PPACA)が課税最低限を一律に定めるのはおかしい、との批判に応えるため、保険プランの相場が高い地域については最低限を引き上げることで配慮しましょう、という訳である。企業関係の団体はこんな修正では納得できず、従来どおり、廃止を主張している。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

2月9日 Handbook改訂の注意点 
Source :Top 10 Employee Handbook Updates for 2016 (SHRM)
上記sourceでは、今年の従業員ハンドブック改訂作業の中で、注意すべき10点を列記している。
  1. Collective Bargaining
  2. Social Media and Data Privacy
  3. Reasonable Accommodations
  4. Retaliation
  5. Wages and Payroll
  6. State-Specific Laws
  7. Leave Benefits
  8. Attendance
  9. Smoking and Marijuana Use
  10. LGBT Rights
いずれも慎重な表現が求められる重い課題である。下手をすれば訴えられてしまう。アメリカの企業の人事担当者は本当に大変だと思う。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

2月8日 地元企業に支援を 
Source :State Job Creation Strategies Often Off Base (CBPP)
上記sourceによれば、
  1. 州内の雇用増は、大半は地元企業の成長によるもので、州外の企業の誘致によるものではない
  2. 経済成長期には、起業した企業、もしくは設立後間もない企業の雇用増が貢献している
そうだ。 従って、過度な免税や補助金によって他州から誘致しようとするのは効率的ではないという。

確かに、他州からの企業誘致は派手で規模も大きいが、地道な努力が必要ということなのだろう(「Topics2014年9月23日 誘致合戦はゼロサムゲーム」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

2月7日 PPACAの悪影響は小さい? 
Source :ACA's Effect on Employment Deemed Negligible So Far (SHRM)
いろいろな逸話はあるものの、PPACA施行前に懸念されたような雇用への悪影響は、マクロで見た限りわずか、もしくはほとんど検出できない、というのが結論のようである。

ただし、PPACA成立から一貫して労働市場の改善が続いていることがその背景にあることは間違いない。労働市場の需給が逼迫する中で、雇用条件を切り下げる企業は少ないはずだ。


問題は景気後退に入った後である。そこまで見たうえで、PPACAの雇用への影響を判断すべきだろう。

※ 参考テーマ「労働市場」、「無保険者対策/連邦レベル

2月5日 PPACA廃止論を棚上げ 
Source :Ryan Calls for Unity, Less Anger From His Fractious GOP (AP)
昨年秋に下院議長に就任したばかりのPaul Ryan氏が、「PPACAの廃止は、Obama大統領がいる限り、実現はむずかしい。不可能なことを選挙公約にして内部対立するのはやめて、一致団結して今秋の選挙に臨もう」と呼びかけた。

実際のところ、共和党内の対立から前下院議長は退任することになり、大統領候補者選が始まった今でも廃止論は止まない。このような状況が続けば民主党を利するばかりだというのが、Ryan議長の考えである。Ryan議長自身も小さな政府志向でさんざんPPACAには反対してきたが、ここは政党のリーダーとしての良識を示すとき、ということなのだろう。

これで共和党内が収まるのかどうか。州知事の間にも反対論は根強い。本当に対立がおさまり、共和党が一致団結できるようになれば、Ryan氏自身の評価も高まることになるだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2016年)

2月4日 IL州CO-OPを提訴 
Source :Lawsuit hits struggling Illinois Obamacare plan (Modern Healthcare)
"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"がまた一つトラブルを抱えてしまった。Illinois州のLand of Lincoln Healthが集団訴訟の対象になってしまっているのだ。経緯は次の通り。
  1. 2015年11月1日:2016年加入申込み開始。Land of Lincolnは、University of Chicago Medical Center(UCMC)をネットワークに含めた保険プランを販売した。ところが、この時点でLand of Lincolnは、UCMCがネットワークからいずれ外れることを承知していた。

  2. 12月17日:2016年1月1日から保険プラン加入となるための申込み締め切り。

  3. 原告側は、12月18日より前に、UCMCはLand of Lincolnとの間で診療報酬の再交渉を行う意思のないことを通達したにもかかわらず、Land of Lincolnはその事実を公表しなかったと主張している。

  4. 12月末:UCMCは、その患者に対して、2016年3月1日以降Land of Lincolnのネットワークから外れると、手紙で通知。

  5. 2016年1月18日:Land of Lincolnは、3月1日以降、UCMCがネットワークから外れることを公表(Press Release)。

  6. 1月27日:保険プラン加入者がLand of Lincolnからのe-mail(UCMCを医療機関ネットワークから外す旨)を受け取る。

  7. 1月31日:IL州Exchangeで他の保険プランに加入を申し込む場合の締め切り。
この結果、Land of Lincolnの保険プランに加入した人で、UCMCでの診療を望む人は、
  1. 同じプランへの加入を継続する

  2. UCMCがネットワーク加入している保険プランを購入しなおす
の2つの選択を迫られることになった。

"A"を選択した人は、out-of-networkに伴う追加的な重い自己負担が必要となる(「Topics2015年12月4日 契約外診療自己負担の実態」参照)。一方、"B"を選択した人は、Land of Lincolnの保険プランの免責額を負担したうえで、、新たな保険プランの保険料に加えて、新たな保険プランの免責額の負担をゼロから始めなければならない。

つまり、どちらを選択しても、必要以上の自己負担を強いられることになるのである。こんなところに、新興であるCO-OPの稚拙さが出てしまっている。

※ 参考テーマ「CO-OP

2月3日 企業提供プランにメスを 
Source :The future of employer-based health insurance (Modern Healthcare)
上記sourceは、アメリカの医療保険制度改革の次のステージは、企業提供医療保険プランだという。今行われている大統領選挙で、 は、いずれも人気がなく、実現の可能性は低い、としている。そのうえで、次なる改革は、企業提供保険プランにメスを入れるべきと主張している。その理由は次の2点。
  1. 医療保険プランを提供する企業は、そのコストを損金算入できるし、プラン加入者が受け取るベネフィットは課税対象とならない。つまり、他人の(税)負担で成り立っている制度であり、不公平である。

  2. プラン加入者内でリスクプールすることになり、より幅広い社会的なリスクプールの負担を負わないことになる。
しかし、この提案もアメリカ社会では不人気である。PPACA成立時に、Obama大統領と民主党は「当時の加入保険プランに何等変更することはない」と約束せざるを得なかったし、連邦議会は早々に"Cadillac Tax"の施行延期を決めてしまっている(「Topics2015年12月17日 Cadillac Tax延期」参照)。

そして、大方の予想に反して、Exchangeが稼働しても保険プラン提供企業は減っていない。企業は医療保険プランを提供することで雇用を維持することができ、雇われる側もそれを望んでいるからだろう。そんなに簡単な改革ではないと思う。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

2月1日 賃金男女格差是正策 
Source :Obama targets gender pay gap with plan to collect companies' salary data (Washington Post)
1月29日、Obama大統領は、"Lilly Ledbetter Fair Pay Act"7周年記念式典に臨んだ(The White House)。同法律は、Obama政権誕生後、最初の立法となった記念すべき法律で、同大統領の思い入れも深い(「Topics2009年1月31日 Obama政権立法第1号」参照)。

この式典で、Obama大統領は、男女間の賃金格差をなくすための更なる方策案を提案した。具体的には、EEOC労働省が協力して、従業員100人以上の企業から賃金データを徴収する、というものである(EEOC Press Release)。これは、2014年から実施している連邦政府との契約企業に求めていた措置と同様であり、今回は対象を一般企業に拡張しようというものである。これにより、6,300万人分の賃金データが収集されることになる。今回の提案そのものでは、企業名を公表することはないが、大統領が連邦議会に立法措置を求めている"Paycheck Fairness Act"が成立すれば、その公表も可能となる。

2月1日にEEOC案が公表され、60日間のパブリック・コメントに付された後、4月1日施行の予定である。この措置に基づいて集められたデータは、2017年9月に公表される。

同日、大統領の諮問機関である"National Equal Pay Enforcement Task Force"は、男女間の賃金格差に関するレポートを公表した。ポイントは次の通り。
  1. フルタイムで働いている場合の男女賃金格差は21%。ただし、1981年から2001年の間に17%ポイント縮小したのに対し、2001年以降はほぼ変化なしの状況が続いている。
  2. 一方、先進諸国では、2000年以降、賃金格差は縮小している。特に縮小が目立つのが、イギリス(9%ポイント)、日本、ベルギー、アイルランド、デンマーク(各7%ポイント)である。

  3. その結果、アメリカの男女間の賃金格差は、OECD諸国平均よりも2.5%ポイント大きくなっている。(日本は格差が改善しているにもかかわらず、OECD諸国中、最悪の格差となっている。)

  4. 男女間の賃金格差の諸要因

    1. 教育水準:1980、1990年代の格差縮小の大きな要因は、女性の教育水準の向上と言われている。今や大卒の過半数は女性となっている。
    2. 就業年数:女性の方が労働市場から一時退出する傾向にある。1980、1990年代の格差縮小の1/3は、女性の就業年数が伸びたことによるとされている。それでも、同じ大卒で賃金格差は徐々に広がっている。

    3. 産業・職業の違い:賃金格差の51%は、産業・職業の違いとする研究報告がある。確かに、金融関係、医師などで、賃金格差は大きい。

    4. 第一子の出産年齢:第一子の出産が一年遅れれば、生涯所得は9%上昇するとされている。若い年齢で出産すれば、一時退職、短時間勤務などで、職業スキルが充分に得られない場合がある。この点、有給出産休暇が備わっている場合、出産一年後の就業時間、所得が高まる傾向にあることも注目される。

    5. 賃金・昇進交渉:女性の場合、賃金・昇進交渉によりペナルティが課される場合がある。
上記にある通り、医療機関でも男女間の賃金格差は著しいそうだ(Modern Healthcare)。
  1. 医師の年収ベースでは、女性の方が約$50,000も低い。

  2. 女性医師が、収入の低いプライマリーケアを志向する、勤務時間が短い、などが影響している。

  3. 近年、格差が拡大している。
※ 参考テーマ「人事政策・労働法制」、「労働市場