9月29日 職場外活動に関する解雇規制 
Source :Yes, Americans Can Be Fired for Running for Office (Businessweek)
中間選挙が近づく中、Florida州で公職選挙に出馬していることを理由に従業員が解雇された事例が話題になっている。解雇された従業員はあくまでも雇用の継続を訴え続けるそうだが、企業による解雇は法律的には何の問題もないという。

一般的に、アメリカ企業では職場以外での活動により解雇される可能性は高い。

職場以外の活動による解雇を規制している例を、上記sourceの中から抽出、列記しておく(2010 review by the National Conference of State Legislatures)。 日本の選挙でもよく思うのだが、特に仕事の質に問題がなければ、落選した候補者の雇用は継続してあげてもいいのではないだろうか。そうしないと、能力の高い人達がチャレンジしなくなると思う。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

9月28日 有給病気休暇の濫用例 
Source :FMLA FAQ: Can We Terminate an Employee for Working a Second Job While on FMLA Leave? (FMLA Insights)
上記sourceは、『有給病気休暇の取得中に別の職場で働いていた従業員を解雇することはできるか』というお題を論じている。

結論から言うと、
  1. 有給病気休暇中に他の職場で働いてはいけないというルールを明確にし、従業員に周知している

  2. 従業員全員に同じルールを適用している
という状況にあれば、解雇は可能である。

こうした濫用例はかなりあるらしく、そのことの方に驚いてしまうのは、日本人だからだろうか?

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

9月27日 PBGC:一時金選択制度の申告 
Source :PBGC proposes requirement for employers to disclose lump-sum offers (Pensions & Investments)
9月23日、PBGCは、DBプランに対して、一時金選択制度を設けている場合にはその旨を申告するよう求める計画であることを公表した。実施は2015年からの予定である。

DBプランで加入者の一時金受け取りを可能とするところはずいぶん前から増えている(「Topics2012年10月17日 一時金払い選択制への移行加速」参照)(Pension Right Center)。

一時金選択による企業側のメリットは、 の2点である。

上述の通り、一時金選択制度の導入に拍車をかけたのがMAP-21で、その法律の中でPBGC保険料の大幅引き上げが決まった。自らの保険料収入を引き上げるための方策が、企業側の保険料負担削減策を促進してしまったという、皮肉な結果となっている。

その影響の大きさに3年経ってからようやく対応し、実態を把握しようとするところに、PBGCの感応度の鈍さが現れている。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「企業年金関連法制」、「DB/DCプラン

9月26日 PPACA劣等州 
Source :A Single Insurer Holds Obamacare Fate In Two States (Kaiser Health News)
PPACAが最もうまくいっていない州はどこか?上記sourceは、Iowa州とSouth Dakota州を挙げている。両州とも、保険料補助金を受けられる資格を持つ人のうち、実際にExchangeで保険加入している人は11.1%しかいない。

その原因は、両州で個人保険市場で圧倒的なシェアを占めている保険会社(Wellmark Blue Cross and Blue Shield)が、Exchangeへの参入を見合わせているためである。同社は、2015年も参入する予定はないとしている。

Exchangeに参入しない理由として、同社は、連邦が用意しているwebsite(Healthcare.gov)の技術的信頼感を挙げている。両州ともExchangeの運営に関して連邦政府の支援を受けているので、その技術的問題は決定的だとしている。

しかし、専門家は、それは単なる口実で、本当の理由は次の通りと指摘している。 IA州では競合相手としてCO-OPも参入しているが、加入者数が極端に少ないため、2015年の保険料は14.3%もの引き上げ申請を行わざるを得なくなっている。IA州の保険監督官は「州民からの文句は来ていない」としており、取り敢えず政治問題化することはなさそうだが、保険料補助金を利用できないことに対する不公平感はやがて高まってくるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/IAI州」、「無保険者対策/その他州」、「無保険者対策/州レベル全般

9月25日 究極のオフィス 
Source :The Ultimate Office Perk: Not Having an Office (Government Executive)
上記sourceは、究極のオフィスは贅を尽くした閉じた空間ではなく、従業員が働きたい場所で働きたい時間に働けるようにすることである、つまり、オフィスを持たないことであると主張している。その理由として、次の3点を挙げている。
  1. 従業員が社内ポリティクスに煩わされず、仕事に集中できる。

  2. 今アメリカのオフィスで主流となっているOpen-Planは、生産性や従業員の満足感にマイナスの影響をもたらす(「Topics2013年10月18日 Open-Plan vs Cubicle」参照)。生産性向上にはプライバシーの確保が不可欠である。

  3. ほとんどの企業の従業員は、一日中パソコンの画面を見て過ごしている。それならばどこでも同じではないか。
もちろん、たまには直に顔を合わせてミーティングを持つ必要はあるが、オフィスを持たないで仕事の生産性を高めるために何よりも重要なのが、従業員の資質、特にコミュニケーション能力と自律性という。

こういう職場が理想という主張はわかるけど、知らないうちに他の従業員が解雇されていた、なんてケースがきっと増えるんだろうな。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

9月24日 医療と保険の融合(2) 
Source :The Vanishing Difference Between Hospitals and Insurance Companies (Businessweek)
上記sourceは、CA州で保険会社と医療機関が共同で保険プランの運営にあたり、利益と損失を共有・分配しようという協定に合意したことを伝えている。具体的には、Anthem Blue Cross(保険会社)と7つの医療機関が、共同で"Vivity"という医療給付機関を設立し、基本的には包括払いの診療報酬を準備しようというものである。

このような医療給付機関を設立する背景には次のようなことが挙げられている。
  1. CA州シェアトップの保険会社、Kaiser Permanenteに対抗するため。

  2. 保険料を抑制するためにネットワークを絞っているとの批判に応えるため。

  3. 秋の州民投票で承認されれば、CA州保険監督官は保険料引き上げに対して拒否権を保有することになるため、今から医療給付費の抑制を図る方策を採用しておく必要がある(San Jose Mercury News)。
今回の試みは保険会社側からのアプローチであるが、PPACAの成立以降、実は医療機関側からのアプローチは既に具体化している(「Topics2012年9月9日 医療と保険の融合」参照)。医療機関側、保険会社側とも、ACOに向けた融合の動きが進んでいる。

※ 参考テーマ「ACO」、「医療保険プラン

9月23日 誘致合戦はゼロサムゲーム 
Source :Should we ban states and cities from offering big tax breaks for jobs? (Washington Post)
Teslaの新しいリチウム電池工場が、Nevada州に建設されることとなった(プレスリリース)。

新工場の建設地については、CA州、TX州、AZ州、NM州など、西部の州がこぞって名乗りを挙げていたが、最終的にNV州に決まったようだ。NV州は、新工場建設と引き換えに、最大$1.3Bにものぼる税制優遇、補助金を用意している。これらの優遇策は州知事のみならず、州議会も全会一致で賛成している。

このような企業の誘致合戦は、巨額の優遇措置を伴って繰り広げられている。

Washington Post
また、当websiteでも、同様の誘致合戦の事例として、Boeing(「Topics2014年1月7日 Boeing:新型機種はWA州で」参照)、トヨタ(「Topics2014年8月26日 California vs Texas」参照)について紹介したことがある。それぞれ、防衛に成功した事例(WA州)、奪取に成功した事例(TX州)であるが、経済学者の間では、こうした誘致合戦は『巨額の税金を投入しながらも雇用に関してはゼロサムゲームに過ぎない』との批判が根強い。

経済学者達は、連邦法で税金を使った誘致合戦を禁止すべきだと主張しているが、州知事、州議会が熱心に行い、その成果を政治的貢献としてアピールしたい以上、そう簡単にはいかないこともわかっている。結局、ばかげた浪費に過ぎないと気付くまでは仕方ない、としている。

企業と州知事・議会、州民のすべてが誘致合戦を歓迎している限り、何も変わりそうもない。

※ 参考テーマ「労働市場

9月22日 Medicaid財源の獲得手法 
Source :How states have gamed Medicaid for hundreds of millions of dollars (Washington Post)
HHSの監査長官は、毎年、Medicare、Medicaidの運用を監査し、不適切な事項を指摘して是正を求めている。

2014年3月のレポートでは、25の指摘事項を挙げている。その13番目が「Federal share of Medicaid - Ensure that State claims and practices do not inappropriately inflate Federal reimbursements」である。

具体的な指摘は多岐にわたるが、その中でも注目されているのが、PA州における連邦支出水増し策である。

PA州は、州独自にMedicaid managed care organizations (MCOs)に課税し、その税収をもとにMedicaid診療報酬を増額している。その結果、連邦政府が負担するMedicaid支出が不当に増額されているというのである。

確かに、PA州独自のルールで連邦負担が増額されるのは問題かもしれない。これを契機に、共和党が推しているMedicaidに対する連邦政府の包括払い(英語では"block grants")の議論が再燃するかもしれない(「Topics2011年4月22日 Medicaid:連邦包括払い」参照)。もしも"block grants"を導入する場合、PPACAに基づく拡充Medicaidに基づく支払いになるのか、それとも拡充を決めた州にだけ拡充相当分が支払われるのか、興味のあるところである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

9月21日 足許の無保険者数 
Source :Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2013 (U.S. Census Bureau)
PPACA本格稼動初年の無保険者数はどうなっているのだろうか。

まず、2013年の1年間の無保険者数が、9月16日、Census Bureauから発表された。上記sourceによると、無保険者数は4,200万人、無保険者割合は13.4%であった。経年変化は追えないとするものの、別の調査によれば0.2%ほど下がったと見られている。ちなみに、2012年の同じCensus Bureauの数字は、無保険者数は4,800万人、無保険者割合は15.4%であった。

それが今年に入って、PPACAが本格稼動したことから、無保険者数は大きく減少しているものとみられる。もちろん、来年の今頃にならなければ全体の数字はわからないのだが、その動きは断片的に垣間見ることができる。 まず、Medicaid対象者の拡充を行った州がある。それらの州では大幅に加入が進んでいるはずだ。また、今年4月、連邦立Exchangeでの加入者数は800万人と伝えられた。

ところが、この連邦立Exchangeの加入者数が徐々に減っているようだ。 もしもこのままいってしまえば、10月には最大48万人が無保険者に落ちてしまう可能性があり、前述の70万人と合わせて100万人超の無保険者が発生することになってしまう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル