5月31日 行革の雇用への影響 
Source :Public-Sector Jobs Vanish, Hitting Blacks Hard (New York Times)
リーマンショック後、公的セクター、特に連邦政府、州政府、公共サービス機関における雇用は、減少の一途を辿っている。 などがその理由だが、こうした雇用抑制策が黒人の雇用、賃金に影響をもたらしているそうだ。

アメリカでは、1960年代の公民権運動の高まりから、公的部門が積極的に黒人を雇用してきており、現在、大まかに言って、黒人の5人に1人が公的部門に就職している。その大口就職先が絞られているために、黒人層の雇用が打撃を受けているということらしい。

ただでさえ、黒人層は所得、富が低いとされており、公的部門への就職は中間層への玄関口の一つと言われてきた。しかし、そこが絞られてしまうということになると、階層の固定化が一層進んでしまうことになる。

※ 参考テーマ「労働市場

5月30日 不法移民に優しい州 
Source :Which States Make Life Easier or Harder for Illegal Immigrants (New York Times)
不法移民についてはいろいろなトピックスがある。上記sourceでは、次の4点について、州毎の対応をまとめ、地図上に表している。
  1. 不法移民に運転免許証を提供しているか(「Topics2015年2月7日 CA州不法移民免許証発行」参照)

  2. 州立大学で州民授業料を適用しているか(「Topics2012年8月25日 不法移民子弟に割引授業料」参照)

  3. 警察官に不法移民かどうかの職務質問権限を与えているか(「Topics2012年6月26日 AZ州移民法を一部支持:連邦最高裁」参照)

  4. 不法移民保護大統領令に賛成しているか(「Topics2015年5月29日 大統領令差止請求再認」参照)
4つともクリアしている州は、WA, CA, NM, IL, CT, MD州と D.C.であった。ただし、D.C.には州立大学がないので、第2項目は該当しない。こうしてみると、不法移民にとって居心地の良い州はかなり限定されているし、本当はこれにヒスパニックの人口割合、スペイン語の公用語化などの要素を考えないといけない。

そう考えていくと、やはりCA州は最初に目指すべき土地かもしれない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

5月29日 大統領令差止請求再認 
Source :Federal Panel Lets Injunction Against Obama’s Immigration Actions Stand (New York Times)
TX州+25州が求めている不法移民保護大統領令の執行差し止め請求について、5月26日、第5控訴裁判所小法廷は、連邦地方裁判所の判決を支持し、差止請求を改めて認める判決を下した(「Topics2015年2月17日 大統領令差止請求認める」参照)。

White Houseは、『驚きではない』としつつ、次の司法手段についてはコメントを回避した。司法省は第5控訴裁判所大法廷の開廷を求めることもできるが、保守的な傾向の強い大法廷をすっ飛ばして、連邦最高裁に執行命令を求めると見られている。

しかし、大統領の行政執行権限に関して冷淡になっている連邦最高裁で好ましい結果が得られるかどうかわからない(「Topics2014年12月8日 最高裁も反転攻勢か」参照)。

一方で、14州+D.C.は、大統領令の執行を求める意見書を第5控訴裁判所に提出している。ここでもアメリカ社会が二分されている。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

5月28日 PPACAの4 words 
Source :Four Words That Imperil Health Care Law Were All a Mistake, Writers Now Say (New York Times)
PPACAに規定されている保険料補助金(tax credits)を連邦立Exchangeで給付することができるかどうか、連邦最高裁の判決が翌月に迫っている。今回の訴訟に至った切っ掛けは、『PPACAで規定されているtax creditsは、Exchange "established by the state"で給付される』と書かれていたことにある。原告側はこの4語を盾に、法律に規定された通りの運用を行うべきであり、連邦立Exchangeでtax creditsを給付することは違法である、と主張している。

では、立法過程でこの4語はどのように議論されたのか、というテーマで上記sourceは取材をしている。

まず、連邦議会議員は、全員異口同音に、『州立と連邦立の間で区別することは一切議論していなかった』と述べている。これだけ大きな問題を議論せずに通すことはないはずなので、そもそも論点として議員達に上がっていなかった、ということだろう。

では、どのような経緯でこの4語が挿入されたのか。検証結果は次のようなものとなっている。 思い返せば、法案審議の最中は、保険未加入に伴うペナルティ、Medicaid拡充策、中絶の扱いなど、他にもたくさんの論点があり、精査が充分できなかったという側面もあるだろう。

上記sourceによれば、土台となった財務委員会版、健康委員会版、Reid版の実際の書き手達も、意図したものではなかった、またはノーコメントとしているそうだ。

つまり、『問題となっている4語は立法府の意思ではなかった』ということが上記sourceのメッセージとなっているのである。記事全体で、『連邦立Exchangeにおけるtax creditsは議員が誰も意図していなかったのだから合法にしてよね』と主張しているのである。

しかし、上記sourceの最後にある、Scalia最高裁判事のコメントは強烈なカウンターとなっている。『重要なことは、議会の意思ではなく、議会が立法した内容である』として、連邦立Exchangeにおけるtax creditsは違法との立場を崩していない。また、先に当websiteでも紹介したように、明文化されたことに忠実であるべきとの考え方が連邦最高裁では強くなっている(「Topics2015年1月29日 退職者医療プランの受給権を否定」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

5月27日 IL州は手詰まり 
Source :Pensions and Politics Fuel Crisis in Illinois (New York Times)
州政府年金改革プランに違憲判決を突きつけられたIL州政府は、完全に手詰まり状態に陥っている(「Topics2015年5月12日 IL州年金改革に違憲判決」参照)。

このような絶望的な状況で残されているのは、大幅な歳出削減と増税である。しかし、州政府の歳出削減は、州民の生活を直撃しかねない。そうなってくると、大幅増税という道しかないのではないかと思える。逆に言えば、州政府にはラストリゾートである増税という手段があるからこそ、破綻は認められないということなのかもしれない。

いずれにしても、同様の状況は、PA州、NJ州、KY州などでも起きかねず、IL州の今後の選択を全米が固唾を呑んで見守っている。

※ 参考テーマ「地方政府年金

5月26日 DCからの引き出し理由 
Source :What Drives Cashouts? (NAPA Net)
上記sourceでは、DCプランから引き出す理由・タイミングとして、主に2点を指摘している。
  1. 離職時点

    40%以上の勤労者が、会社を離れる時点でDCプランから現金を引き出している。これは、残高が$5,000以上なければ離職前の勤務先に勘定を残しておくことが認められない場合が多いことにもよる。また、所得の低い者、蓄えの少ない者にとっては、DCプランからの引き出しにより手許に現金を確保できることは魅力的である。

  2. 住宅購入

    まとまったお金が必要となる住宅の購入時にも、47%が引き出しを利用している(右図参照)。
こうなってくると、法律や政策意図はともかくとして、一般の人にとってのプラン加入目的は、退職後所得を確保するというよりも、貯金ということで認識されていると言わざるを得ない。

※ 参考テーマ「DB/DC

5月25日 WA州:小規模企業年金プラン創設へ 
Source :Washington State OKs Retirement Marketplace (Plansponsor.com)
5月18日、Washington州(WA州)で、Small Business Retirement Marketplace創設法が成立した。骨子は次の通り。 先のIL州の場合と同様、今回の法律は創設のための制度設計を行うための法律であり、具体的な議論はこれからだ(「Topics2015年1月7日 IL州:自動加入年金プラン法案成立」参照)。

CA州、IL州、WA州と、それぞれ制度設計の方向性は少しずつ異なるものの、小規模企業に退職者所得プランを提供しようとする動きが始まったようだ(「Topics2013年5月19日 CA州版国民年金基金:制度設計進まず」参照)。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「地方政府年金

5月24日 LAも$15へ 
Source :Los Angeles Lifts Its Minimum Wage to $15 Per Hour (New York Times)
5月19日、Los Angeles City (LA市)市議会は、14 v 1の圧倒的多数で、最低賃金を現在の$9/hから$15/hに引き上げることを決定した。引き上げのスケジュールは次の通り。
2016年7月$10.50/h
2017年1月$12.00/h
2018年1月$13.25/h
2019年1月$14.25/h
2020年1月$15.00/h
2022年〜過去20年のCPI上昇率で引き上げ
従業員25人未満の企業は、1年遅れで引き上げる。

これで西海岸の2つの都市が、$15/hを目指して最低賃金を引き上げていくことになる(「Topics2014年6月5日 Seattle市:最低賃金$15決定」参照)。連邦レベルの最低賃金の倍を超えるレベルが実現する。

※ 参考テーマ「最低賃金