12月31日 "統合SECURE 2.0"法案成立
Source :The federal spending bill will make it easier to save for retirement. Here's how (NPR)
12月29日、バイデン大統領は、大型歳出法案(H.R.2617)に署名した。これにより、"統合SECURE 2.0"法案は成立した(「Topics2022年12月21日 SECURE 2.0は歳出法案に」参照)。上記NPRでも報じられているくらい、インパクトの大きな制度改正となりそうだ。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

12月28日 労組運動の総括
Source :Union wins made big news this year. Here are 5 reasons why it's not the full story (NPR)
上記sourceは、今年の労組の動きについて総括している。ポイントは次の5点。
  1. 労組結成の是非を問う投票件数は、2022年度1,249件と、前年比50%近い増加となった。結成賛成となった割合は72%と、2021年の61%から上昇した。その原動力となったのが、Starbucksであった(「Topics2022年12月13日(1) SB労組結成総括」参照)。

  2. 企業側の労組結成阻止活動も活発化し、ある程度の効果を生んだ(「Topics2022年10月3日 SB社の対労組ベネフィット戦略」参照)。Amazon、Starbucksでの労組結成活動は勢いが止まっている。

  3. 労組は結成されても、実際の労使協議の開始には至っていないケースがほとんどだ。

  4. 多くの労働者にとって実質賃金は低下しているが、労組の中にはインフレ率を上回る賃上げを獲得したところがある。

  5. 労組加入率は10%程度しかないものの、労組の活動に対する社会の信任は高まり続けている(「Topics2022年8月31日(1) 労組支持率更に上昇」参照)。
来年初めに公表されるであろう労組加入率/組織率を注目したい(「Topics2022年1月21日(4) 2021年労組加入率/組織率」参照)。

※ 参考テーマ「労働組合

12月25日(1) 平均余命76.4年
Source :American life expectancy is now at its lowest in nearly two decades (NPR)
2021年のアメリカ国民の平均余命が公表された("Mortality in the United States, 2021" by Centers for Disease Control and Prevention)。2021年の平均余命は76.4年で、2020年の77.0年から低下した。2019年は78.8年だったので、2年連続の低下、2年間で2.4年短くなった。速報値よりは少しだけ改善した(「Topics2022年9月2日 平均余命大幅低下」参照)。
コロナ禍による死亡率上昇が顕著ではあるが、心臓病、ガンの死亡率も上昇している。コロナ禍が収まったとしても、平均余命が上昇するとは限らないことがわかる。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

12月25日(2) PBGC保険料変更
Source :Variable-Rate Premiums To Be Capped by SECURE 2.0 (PLANADVISER)
統合SECURE 2.0には、PBGC保険料の変更が含まれているそうだ(「Topics2022年12月21日 SECURE 2.0は歳出法案に」参照)。上記souorceによれば、単独事業主プランで積立不足があった場合の変動保険料(人数割り)を、5.2%(2023年$652に相当)に固定する(「Topics2022年10月18日 2023年PBGC保険料」参照)。これにより、インフレ率連動がなくなることになる。

大型歳出法案は可決されているので、ほぼ決定事項である。

背景にあるのは、PBGCの収支改善である(「Topics2022年11月16日(2) PBGC収支改善」参照)。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

12月22日(1) VT州FMLI
Source :Vermont Governor Announces Family and Medical Leave Insurance Plan (Jackson Lewis)
12月6日、Vermont州(VT)知事は、州FMLAの概要を公表した。制度の概要は次の通り。

  1. 制度名は、"the Vermont Family and Medical Leave Insurance Plan (VT-FMLI)"。

  2. 先ずは、2023年7月1日から、州政府職員への給付を開始する。

  3. 2024年7月1日から、従業員2人以上の企業等の加入を始める。ただし、加入は任意ベース

  4. 2025年7月1日から、従業員1人以上の企業、個人事業主、適格従業員の加入を始める。いずれも任意ベース

  5. 給付額は、給与の60%。年間最大6週間分。
実は、VT州のFML制度は、隣のNH州の制度とよく似ている。上記下線部分は、両州制度に共通している部分である(「Topics2022年11月16日(3) NH州PFML始動」参照)。もともと両州の州知事が、"Twin State Voluntary Leave Plan"を提案(2019年)し、検討していた。結局は、それぞれの州で立法、施行という路を辿ったのだが、オリジナルが同じということだ。

※ 参考テーマ「FMLA

12月22日(2) ゲリマンダリング効果測定
Source :Widespread Partisan Gerrymandering Mostly Cancels Nationally, but Reduces Electoral Competition (ALARM Project)
アメリカで、シミュレーションアルゴリズムを利用して"Gerrymandering"の効果を計測しようとするプロジェクト(ALARM Project)が動いている。このプロジェクトが2020年の連邦議会下院選挙区割りについて評価した結果が、上記sourceである。

そのポイントは次の図に集約されている。
  1. ゲリマンダリングにより、全米で共和党に2議席分有利になっている。

  2. 州別に見ると、テキサス州でかなり共和党に偏っているとの評価になっている。ただし、州内の選挙区ごとの評価を見ると、共和、民主ともにゲリマンダリングをやり合っている、という印象だ。
  3. 裁判所、委員会による選挙区割りが、民主党寄りになっているケースが多い。
この結果をみると、ゲリマンダリングがなければ、2022年の中間選挙における連邦議会下院の選挙結果は"215 vs 220"となるはずであった、ということになる。
2議席の効果と言えど、これだけの僅差だと、そのもたらした効果は大きい。

ところで、上記sourceの共同著者として、今井耕介氏が参画している。今井氏は、同じシミュレーションアルゴリズムを利用して、日本の衆議院議員選挙区について、『市区町村の分割を抑えながら、都道府県内の一票の格差を小さくする区割り改定案』を提案している(県ごとに順次公表中)。また、その一部(広島県、東京都)について、区割り審議会案とシミュレーション案との比較考量した結果が、日経ビジネス(2022年12月19日号)に掲載されている(管理人用資料)。やはり、コンピュータによるシミュレーションの方が手作業よりもパフォーマンスが高いようだ。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「中間選挙(2022年)

12月22日(3) 医療機関の債権回収
Source :Investigation: Many U.S. hospitals sue patients for debts or threaten their credit (NPR)
医療債務が大きな社会問題になっている(「Topics2022年3月15日(1) 医療債務の実態」参照)。医療債務に関して、医療機関側はどういった対応をしているのかを調査した結果が、上記sourceである。

病院側の対応としては、次の6項目を調査した。調査対象医療機関は、528機関(全米で約5,100機関)である。
  1. 過去の医療債務を抱えている患者に対して、診療を拒否するというところが、90もあることに驚きである。
  2. クレジット信用会社に報告するということろが、半数以上を占めている。一度デフォルトが報告されてしまうと、一生、借り入れ、信用購入が難しくなるため、結構厳しいことになる。
  3. 裁判所に訴えるところも、半数以上を占めている。
  4. 債権回収会社に売却してしまうところは、流石に99機関と限られている。しかし、最終的に売却してしまうところも多いと思われる。債権回収会社はそれが商売なので、しつこく追ってくる。更には、司法に訴えられる可能性も高い。
  5. 医療債務の回収方針を公示しているところは少ない。本来なら、Charity Careの方針も同時に開示する必要がある(「Topics2022年11月9日 Hospital Charity Care」参照)。
  6. 低所得者に対する支援プログラムを用意していると回答している機関が多い。ただし、積極的に情報開示していなかったり、膨大な資料提出を求めて事実上支援を受けることを諦めさせているという実態が多いようだ。
医療機関自らこうした債権に対して強引な回収は行わないと自主規制しているところは、わずか19機関に過ぎない。基本は、何とかして回収しようとするのだ。

これに対して、州政府が規制に乗り出し始めた。Washington州は、charity careに該当する患者に対して債権回収をしようとしていた医療機関を裁判所に訴え、止めることに成功した。Maryland州は、医療機関が債務を抱える患者の家屋や給与を差し押さえることを禁じる州法を定めた。California州の立法は既に紹介した(「Topics2022年12月1日(3) CA州法Charity Care」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/WA州」「無保険者対策/MD州

12月21日 SECURE 2.0は歳出法案に
Source :Final SECURE 2.0 Included in Year-End Spending Bill (AMERICAN SOCIETY OF PENSION PROFESSIONALS & ACTUARIES)
SECURE 2.0は、大型歳出法案に盛り込まれる形で議会審議されることになった(「Topics2022年12月15日(1) SECURE 2.0法案に黄信号」参照)。

歳出規模は$1.7Tで、法案のページ数は4,155にのぼる。12月23日(金)までに可決されなければ、連邦政府は閉鎖されてしまうそうだ。22日に上院、23日に下院で審議が行われる予定だ。

また、この歳出法案には、Medicare歳出削減策も含まれているそうだ(Modern Healthcare)。当初の削減率は4.5%だったが、法案に盛り込まれたのは2%削減となった。

(12月22日追記)

大型歳出法案に盛り込まれた"統合SECURE 2.0"法案の概要は、ここ(PLANADVISER)にまとめられている。主だった項目は含まれており、漏れはないそうだ。

(12月23日追記)

12月22日、連邦議会上院は大型歳出法案(H.R.2617)を可決した(NPR)。投票結果は68v29で、超党派による賛成であった(Roll Call 421)。法案は直ちに下院に送付された。

(12月24日追記)

12月23日、連邦議会下院は、大型歳出法案(H.R.2617)を可決した(NPR)。投票結果は225v201で、9人の共和党議員が賛成に回った(Roll Call 549)。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「Medicare