3月5日 医療機関選択奨励金
Source :Employers save money by paying workers to shop for healthcare (Modern Healthcare)
企業の従業員が、安い価格で提供される医療サービスを選択した場合、奨励金が提供されるプログラムがある。上記sourceは、その奨励金プログラムの効果が出ていることを検証できたとする調査結果を紹介している。

プログラムの概要は次の通り。
  1. 調査対象は、奨励金プログラムを実施している29企業とその従業員27万人。

  2. 通常よりも安い価格で提供される135の医療サービスのリストが従業員に提示される。

  3. 従業員は、決まったツールを利用して提示された医療サービスを選択してから、実際の医療サービスを受診する。

  4. その後、奨励金として$25〜500のチェックが送られてくる。
2017年について調査したところ、実際に奨励金を受け取ったのは全従業員のうち1.9%であった。しかし、対象となった医療サービスへの支払総額は2.1%削減された。これは、29企業全体で230万ドル、従業員一人当たり8ドルのコスト削減にあたる。コスト削減効果が大きかったのは、MRI、超音波診断、マモグラムなどであった。

この削減効果をどう見るかだが、2.1%の削減効果は大きい。対象となる医療サービスを広げ、さらに安価のサービスを探求していけば、その効果はどんどん拡大するだろう。こうした工夫の積み重ねが医療費の節約につながる。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

3月1日 Medicare for All法案
Source :House Democrats introduce ‘Medicare for All' bill (Modern Healthcare)
2月27日、民主党下院議員が‘Medicare for All' 法案を提出した(Medicare For All Act of 2019)。

その法案の骨子は次の通り。
  1. Medicareの加入対象者を全アメリカ国民とする。

  2. 提供するサービスは、処方薬、医師・医療機関による診療、長期療養・介護とする。

  3. これらのサービスについて、民間医療保険プランの提供を禁止する。

  4. これらにより、アメリカの医療保険制度を公営化する。

  5. 医師・医療機関に対する償還制度を全面的に変更する。医療機関については年間の包括払いとし、医師については出来高払いを選択できるようにする。

  6. HHSは地域監督官を任命し、地域内の医師・医療機関を監督する。また、償還額について、医師・医療機関と交渉する。

  7. 保険会社からの失業者は100〜200万人になるとみられるが、医療機関への包括払いの内の1%を転職斡旋費用に充てる。
かなり過激な内容となっているようだが、2016年の大統領選でクリントン候補が打ち出したMedicare部分拡張ではインパクトがなかったという反省の上に立っているのだろう(「Topics2016年5月17日 Medicare拡張案」参照)。事実上、立候補を表明したサンダース上院議員を支持する法案である。

しかし、ことは簡単ではない。改革法案の標的となった保険会社、医療機関は、同日早速、共同して反対活動を行うとの表明を行った(Modern Healthcare)。彼らは強力な政治力を持っており、民主党議員も大きな影響を受けているはずだ。優位を確保した下院でも可決できるかどうかは不透明とされている。

さらに、これだけ過激な改革案だと、共和党・トランプ大統領側からは、社会主義との非難が集中し、却って共和党に有利に働く可能性もある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」、「大統領選(2020年)