12月20日 VT州:単一保険制度創設を断念 
Source :Governor abandons single-payer health care plan (Charlotte Observer)
12月17日、Vermont州(VT州)知事が、単一保険制度の創設を断念すると発表した(「Topics2011年5月8日 VT州:法案議会通過」参照)。本来なら2013年中に財源手当て計画を作成しなければならなかったが、それができなかったようだ。

断念した理由は次の通り。 結局、財源の目処が立たないことから、単一保険制度の創設を断念せざるを得なくなった。単一保険制度構想は、大きく後退した。

※ 参考テーマ「無保険者対策/VT州

12月19日 TN州:Medicaid拡充を提案 
Source :With Hospitals Under Stress, Tennessee’s Governor Pursues Medicaid Expansion (New York Times)
12月15日、Tennessee州(TN州)知事が、Medicaid拡充策を提案した。PPACAが当初想定していたMedicaid加入対象者の拡大ではなく、企業提供プランや州独自のプランを通じた対象者拡大を含めたものとしている。この知事案は、2年間限定の試験的プログラムであり、対象者は20万人程度増える見込みである。今後、連邦政府の特例措置に関する認可と州議会の承認が必要である。

TN州知事は共和党であり、州議会上下両院とも共和党が支配している。典型的なレッドステーツで、PPACAには反対の立場である。

それでも州知事がMedicaid拡充を提案する背景には、医療機関の経営難がある。Medicaidを拡充した州では、無保険者が救急診療に飛び込んだ際のコストが急減し、医療機関の経営が著しく改善している。反面、TN州の医療機関では、相変わらず無保険者の飛び込みコストが嵩んでいる。こうした状況から、医療機関や自治体病院からMedicaid拡充の要請が強まっており、州知事が動いたようである。

同様の動きは、Utah, Wyoming, Idaho, North Carolina, Alabama各州でも起きており、保守色の強い州でも変形Medicaid拡充が議論され始めている。
保守色の強い州でも、背に腹は代えられないということだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

12月18日 企業と病院のコラボ 
Source :Where employers use quality control to shape healthcare (Los Angeles Times)
シアトルにあるボーイング社と周辺の医療機関との間では、珍しい協調関係が成立しているという。医療機関側は、同社の従業員の診療、検査等の効率を高めて所要時間を短縮する、効果的な治療により職場復帰の時期を早める、といった工夫を進めている。こうした企業と医療機関のコラボは、同じくシアトル周辺で、スターバックス、コストコ、ノードストロームなども取り組んでいる。そればかりか、シアトル市、ワシントン州政府も同様に取り組んでいる。

また、ワシントン州以外でも、ミネソタ、メーン、ニューヨーク、アーカンソー各州でも進んでいるらしい。

医療費の増加に対応するため、企業側は保険料や自己負担、免責額などの従業員負担を増やしている一方で、こうした医療機関とのコラボにより、従業員の精神的・肉体的負担、金銭的負担の軽減に取り組んでいるということだ。一方的な負担の押し付けは現実にはできないということであろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

12月17日 2015年Exchangeの保険料 
Source :Analysis of 2015 Premium Changes in the Affordable Care Act’s Health Insurance Marketplaces (Kaiser Family Foundation)
Kaiser Family Foundationでは、Exchangeにおける2015年の保険料について、全米のcounty、各州の代表的な都市ごとに調査している。

下の図は、全米のcountyにおけるSilver PlanとBronze Planの平均上昇率と、最高、最低を示したものである。
平均では穏やかな伸びとも言えるのだが、40%以上の上昇があると思えば、逆に40%超の下落もあるといった状態で、本当に地域毎に区々となっていることがわかる。当該地域に居住している住民にとっては、大きな変動であり、迷惑以外の何者でもないが、こうした制度初期の混乱を許容するのがアメリカ社会だとも言える。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

12月16日 PPACAの配当はどこに? 
Source :Uninsured rates fell under Obamacare, but who's reaping the benefit? (Los Angeles Times)
Obama政権の医療保険改革(PPACA)は、無保険者を減らすことで医療保険の負担を減らそうとする改革であった。無保険者にかかる医療費がなくなれば、救急医療などの『隠れたコスト』を減らすことができるからである。

政府の試算によれば、2014年の『隠れたコスト』は$5.7B削減された筈である。それを裏付けるように、医療機関、保険会社の業績は極めて良好である。

保険プランを提供している企業や消費者団体は、「医療機関、保険会社の利益を自分達に還元しろ」との主張を強めている。これに対して、保険会社などは「保険料の上昇率は歴史的な低さになっている」、「薬にお金がかかっている」と反論している。

確かに、2013年の一人当たり医療費の伸び率は3%を切っている(「Topics2014年12月10日 医療費支出の伸び鈍化」参照)。しかし、保険料の上昇傾向が止まった訳でもない。

しばらくはこうした利益の取り合いが繰り広げられるものと思うが、当方の記憶では、PPACAの配当は、既に連邦政府が押さえているのではないか。製薬会社、医療器具メーカー、保険会社は、PPACAの財源確保のために課税されているし、医療機関については、Medicare支出の大幅削減が予定されている(「Topics2010年3月31日(1) 医療保険改革法に署名」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月15日 CA州:不法移民免許証発行間近 
Source :DMV prepares to issue driver's licenses to people who are here illegally (Los Angeles Times)
CA州では、来年1月2日から不法移民を対象にした運転免許証の発行が始まる(「Topics2014年5月10日 CA州不法移民免許証のデザイン」参照)。免許証発行のための申請を行うためのアポイントメントは、既に11月12日から始まっており、既に38万人近くが予約したとのことである。

気になる免許証のデザインだが、次のようになっているらしい(Sacramento Bee)。

Sacramento Bee
ポイントは右肩にある"federal limits apply"である。裏面には、"This card is not acceptable for official federal purposes"とあるそうだ。一見して普通の免許証と異なることはわかるが、目立たない工夫はされている。

CA州では、不法移民への医療給付も検討されており、不法移民の生活基盤は着々と固められつつある(「Topics2014年12月6日 CA州:不法移民を医療給付対象に」参照)。きっと、CA州を目指して全米の多くの不法移民が集まってくることになるだろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

12月14日 企業提供プランの10年 
Source :Employer Premium and Deductible Cost Growth Slowed Post-ACA, But Employer Health Insurance Still Claiming Bigger Share of Workers' Income (Commonwealth Fund)
先日はマクロでの医療費支出の動向を紹介した(「Topics2014年12月10日 医療費支出の伸び鈍化」参照)。上記sourceは、企業提供保険プランの負担の動きを紹介している。ポイントは次の通り。
  1. 保険料はこの10年間で1.6〜1.7倍に上昇している。
  2. 年率に直すと5%弱だが、最近3年間の伸びの方が鈍化している。
  3. 保険料負担(事業主負担+従業員負担)は中位所得の2割強にも達している。
  4. 免責額は10年間で2.5倍弱になっている。特に中小企業プランの免責額は重い負担となっている。
本当にアメリカ人にとって医療保険の負担はどんどん重くなっている。しかし、こうした企業提供保険プランは民間保険なので、個人消費支出の中に含まれる。医療費が伸びていっても消費の拡大という捉え方になってしまうため、GDP成長率のプラス要因として働くことになる。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

12月13日 萌芽期の州立退職貯蓄プラン 
Source :California copied as states seek retirement plans (Calpensions)
CA州の州立退職貯蓄プラン(“Secure Choice”)は、制度設計のための調査費用調達の目処がようやく立ったようだ。制度設計にはまだまだ時間がかかりそうである。

一方、"Secure Choice"を導入しようという動きは各州で広がっている(「Topics2014年5月21日 黎明期の州立退職貯蓄プラン」参照)。CA州に続き、12月3日にはIllinois州議会がSecure Choice創設法案(SB 2758)を可決、12月9日現在、州知事の署名を待っているところである。

また、CA州、IL州以外にも15州で関連法案審議が行われており、徐々にその規模は広がっている模様だ(Pension Right Center)。

ところで、上記sourceでは、州ごとの退職後資産の確実性を計測している分析を紹介している。National Institute on Retirement Securityが今年3月に公表した“Financial Security Scorecard” for future retireesである。 逸早く"Secure Choice"を導入したCA州は、ずっと最低ランクとなっており、それなりに同制度の必要性が高かったと言えよう。また、『退職者の夢』と言われてきたFlorida州も、CA州と同様、最低ランクになっている。

一方、Wyoming州がダントツというのは意外だった。同州といえば、Yellowstone National ParkJackson Holeといったリゾート地を連想するばかりだった。

そういった思いで同州の紹介を読んでいると、州税制で退職者はかなり優遇されている。 これなら他州からも退職者が引き寄せられるだろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「企業年金関連法制

12月12日(1) 2人の女性議員の反乱 
Source :House faces close vote on $1.01 trillion spending bill (The Washington Post)
今回の歳出法案について、当websiteは複数事業主プランの給付削減案を追いかけてきた中で注目していた(「Topics2014年12月12日(2) 複数事業主プラン給付削減法案(2)」参照)。

昨年の連邦政府閉鎖で批判を浴びた共和党が、政府閉鎖を回避するとの基本姿勢で臨んでいたため、当初は楽観ムードが広がっていた。さらに、ホワイトハウスも含めた超党派での合意が形成された、との報道により、そのムードは強まっていた。

ところが、2人の女性民主党議員の反乱により、そのムードが一転した。 2人が強烈に批判しているのが、歳出法案に が盛り込まれている点である。

まずは10日、上院議会でWarren議員が厳しく批判し、次いで下院でPelosi議員が、Minority Leaderでありながら共和党、さらには超党派合意に関与したObama大統領をも痛烈に批判した。しかも、Pelosi議員は、反対票を投じることを公言し、妥協の余地がないことを明確にした。

そして、その言葉通り、11日の下院投票で、反対票を投じたのである。結果は、219 vs 206 で可決であった(Roll Call 563)。結局、Pelosi議員は投票結果では負けたものの、大統領の圧力をはねのけて、下院民主党の主流であるリベラル派をまとめあげることで力を示したことになる。

Obama大統領とPelosi下院議員の関係は、徐々に悪化の一途を辿っており、医療保険改革法(PPACA)で決定的となり、現状ではもはや敵対関係にあると言っても過言ではなかろう。マスコミでも、"Pelosi's decision to publicly break with the White House"と評されている(Washington Post)。

下院民主党の幹部との間ですら良好な関係を築けないObama大統領の今後2年間は、相当厳しいものにならざるを得まい。

(12月15日追記)12月13日の上院議決において、Warren上院議員も歳出法案に反対票を投じた。

※ 参考テーマ「政治/外交

12月12日(2) 複数事業主プラン給付削減法案(2) 
Source :Congressional leaders hammer out deal to allow pension plans to cut retiree benefits (Washington Post)
超党派での合意が成立し、複数事業主プラン給付削減法案は歳出法案(H.R.83)の一部として12月11日に連邦議会で可決される見込みとなっていた(「Topics2014年12月7日 複数事業主プラン給付削減法案」参照)。ところが、11日は下院のみの可決となり、上院での可決はさらに数日を要するようである。Obama大統領は署名する意向である。

(12月15日追記)12月13日、上院でも歳出法案が可決された。

(12月22日追記)12月16日、大統領が署名、発効した。

上記sourceで紹介されている複数事業主プランの状況は次の通り。 70〜80万人が給付削減を受ける可能性があり、その影響は大きい。しかし、プランの持続可能性を確保するためには仕方のないことであろう。40年の歴史の中で初の出来事となるそうだ。

(12月13日追記)複数事業主プランのPBGC保険料を加入者一人当たり現行$13から倍の$26に引き上げる項目も入っている(Pensions & Investments)。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「PBGC/Chapter 11

12月11日(1) The White House vs EEOC 
Source :White House Gives Nod to Honeywell-Style Wellness Programs (HR Policy Association)
12月3日、連邦議会上院で、EEOCメンバーの承認投票が行われた。 空席だった5人目のEEOC委員についてはあっさりと賛成多数で可決されたが、Lopez事務局長の再任については、激しく意見が対立し、結局最後は党派別投票結果で可決という形になった。なぜ揉めたのか。それは、Lopez事務局長が、EEOCによる訴訟の指揮を執っているからである。

EEOCは、Honeywellをはじめとして健康管理プログラムを実施している企業を『従業員差別だ』として告訴している(「Topics2014年11月1日 EEOC:健康管理策を訴える」参照)。これに対して、企業側は『PPACAに盛り込まれている健康管理プログラムを実施しようとする企業にいちゃもんを付けるのか』とEEOCの動きに猛反発している。そして、その矛先はObama政権にも向いている(「Topics2014年11月20日 EEOCへの怒り」参照)。

上院共和党はこうした企業側の怒りを背景に、Lopez事務局長の再任を阻もうと最大限の抵抗を試みたという訳である。

政治的に苦境に立たされたのがObama大統領である。 そこで、上記のように上院で承認投票が可決された後、今度は企業向けに報道官を通じて次のようなメッセージを発出した(Press Briefing)。 これで一応の目配りはした、ということなのだろうが、却って企業側の怒りが倍増するのではないか。本当にそのように思っているのなら、訴訟を推進している事務局長の再任指名を取り下げるべきであり、いくら言葉で支持するとはいっても、健康管理プログラムの推進のための具体的な障害を取り除くことにはならないからだ。独立した行政機関に対する大統領の指揮権は、人事を通じてしかできないのに、その指揮権を放棄しておきながら『遺憾だ』と言われても、何のことかと思う。

こういうおざなりな対応が大統領の敵を増やしてきたのではないだろうか。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

12月11日(2) Detroit市:再建確定 
Source :Detroit emerges from bankruptcy today (The Detroit News)
12月10日、連邦破産裁判所はDetroit市の再建を公式に確定させた(「Topics2014年11月10日 Detroit市再建計画承認」参照)。

今後は、同市に設置される財政監査委員会が4年間の市財政計画を承認し、実施の監督をするとともに、Michigan州が最低でも13年間は市の財政を監督することとなる。

市の本当の再建はこれからである。

※ 参考テーマ「地方政府年金