6月10日 大詰めの医療費抑制法案:MA州 
Source :MA House Passes Health Care Cost Containment Bill (ML Strategies)
MA州議会下院は、6月5日、圧倒的多数(148 v 7)をもって、医療費抑制法案("Health Care Quality Improvement and Cost Reduction Act of 2012" (H.4070))を可決した(「Topics2012年5月15日 Spaghetti approach:MA州」参照)。かなり多数の修正案が検討されたようだが、一部修正のうえ、ほぼ原案通りとなったようだ。

上記sourceでは、修正提案がなされたものの最終的に否決されたものが列記されている。そのうちから3つだけ紹介しておく。
  1. GSP(Gross State Product)の伸びの範囲内に抑制するのだから、個人の保険加入義務規定をはずす。

  2. タバコの増税。

  3. 高級なサービスを提供する医療機関、保険会社に対して贅沢税を課す。
MA州でさえ、保険加入義務は嫌われている(「Topics2012年6月9日 嫌われる加入義務」参照)。

今後は、上下院議員各6名ずつからなる両院協議会にて調整が行われる。現時点で上院法案(SB 2260)との間の主な相違点は次の2つとのこと。
  1. 医療機関に対する監督権限。下院案は、より少ない人数による監視委員会が厳格に監督する。上院案は、医療機関の裁量に任せる部分が多いものの、より多数の人数により事後チェックを厳しくする。

  2. 下院案では、州内の医療機関平均よりも20%以上高い料金を求めている医療機関に対して、10%の付加税を課すことにしているが、上院ではこの規定に対する反対が強い。
どうせ"spaghetti approach"なのだから、いろいろな条項を盛り込んでしまえばいいのに、と思うのは外部者だからだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

6月9日 嫌われる加入義務 
Source :State wants permanent insurance reform (FierceHealthPayer)
CA州議会は、連邦最高裁の判決や秋の選挙の結果に関わらず、医療保険改革法の主な要素をCA州に残すため、州独自の無保険者対策法案を審議しているそうだ。 このような動きに対して、CA州の保険会社は、『保険加入義務を課してもらわないと成り立たない』と訴えている。医療保険改革法の心臓部分である「保険加入義務」が盛り込まれていないのである。

最近New York Timesが公表した世論調査結果では、「保険加入義務」をはずすべきと回答しているのが27%、医療保険改革法全体を破棄すべきと回答しているのが41%。実に69%、3分の2の国民が、保険加入義務を廃止すべきだとしているのである。
要するに、CA州議会議員達は、州民に不人気な保険加入義務を入れ込みたくないのである。これでどれだけ無保険者がなくなるのか、推計を見たいものである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州

6月8日 年金改革案を承認:San Jose市 
Source : 2 California Cities Voters Embrace Pension Cuts(New York times)
5日に行なわれたSan Jose市の市民投票で、70%という圧倒的多数で、Measure Bが承認された。現役職員の給付水準引き下げを含む内容なだけに、全米の注目を集めそうである。

黙っていられないのが、市職員で、消防士・警察の労組は、「Measure Bは違法である」との訴訟を起こす予定だ(San Jose Mercury News)。最終決着までには長い時間がかかりそうである。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月7日 Proposition 8も連邦最高裁へ 
Source :California gay marriage case headed to U.S. Supreme Court (Los Angeles Times)
6月5日、連邦第9控訴裁判所は、今年2月の小法廷判決を支持する旨を下した(「Topics2012年2月8日 Proposition 8に違憲判決」参照)。判事全員が参加しての判決である。

今後90日以内に、連邦最高裁に上告するかどうかが決まるが、間違いなく反同性婚グループは上告するであろう。これにより、CA州のProposition 8の適正性につき、連邦最高裁が判断することが決まる。

もちろん、@上告を棄却する、A最高裁として審理を行う(おそらく来年度の審理)、という両方の選択肢がある訳だが、いずれにしても、連邦最高裁が判断を示した時点で、Proposition 8の有効性が確定することになる。

なお、当方は、勘違いをしており、本件は既に連邦最高裁で審理されているものと思い込んでいた(「Topics2012年6月4日 DOMA裁判は連邦最高裁へ」参照)。今回の報道でProposition 8の扱いは、これから連邦最高裁で判断されることになることがわかった。

従って、来年度の連邦最高裁では、 について、結論が出ることになる。まさに同性婚Yearとなろう。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月6日 一時金払い:GM先行 
Sources :G.M. Plans Big Buyouts for Retirees in Pension (New York Times)
GM pensions: What's next? Lump sum offerings to hourly retirees most likely on agenda, analyst says (Michigan Live)
6月1日、新生GMは、退職者の一部を対象とした一時金の選択、及び年金の保険会社への移管プランを公表した(GM Press Release)。ポイントは次の通り。
  1. 1997年10月1日〜2011年11月30日に退職した者(月給労働者)を対象に、一時金での受け取りの選択肢を提供する。

    • 退職者118,000人(月給労働者)のうち、選択肢の提供を受けるのは約42,000人。
    • 対象者は、2012年7月20日までに一時金を選択するかどうかの意思表明をしなければならない。
    • 一時金を選択した場合の受け取りは、今年の9月。

  2. 1997年10月1日より前に退職した者及び一時金を選択したなかった退職者は、従来通りの月払いによる年金受取となる。給付額に変更はない。ただし、GMは、必要資産及び給付業務をPrudentialに移管するため、支払いはPrudentialからとなる。Prudentialへの業務移管は2012年中に終了し、2013年1月から給付業務を開始する予定。

  3. ほとんどの現役及び2011年12月1日以降に年金受け取りを開始した退職者については、給付水準を維持しながら新しい年金プランに移行する(閉鎖年金?)。退職時に一時金か月払いかの選択をする。こちらはGMが支払い責任を負う。

    ただし、GMは、今年2月、現行の年金プランを将来的に廃止し、その代替措置として、DCプランへの移行、休暇日の追加、業績連動ボーナスの増加などを検討するとしている。

  4. 退職者医療保険プラン、生命保険、新車購入割引などのベネフィットは影響を受けない。

  5. 労働組合所属の退職者(時間給労働者)は影響を受けない。
上記sourceによれば、労働組合UAWとの労働協約は2015年まで有効なため、今回は時間給労働者について変更がないものの、水面下では保険会社等への年金プラン移管についての話し合いが行われており、その実現可能性は高いものとみられている。実際、退職者医療プランは既にVEBAに移管されており、年金給付の主体が変更になることに大きな抵抗はないと思われる。

ところで、退職者年金の一時金選択は、最初にFordが提案したものであった(「Topics2012年5月2日 "De-risk":Ford年金プラン」参照)。ところが、Fordの方の具体策が公表されないまま今日に至ってしまったため、GMが一番乗りとなってしまった。Fordの具体的な提案は、8月になるものと報じられている。

なお、Big 3のもう一つの一角、ChryslerのCEOは、今のところ、「一時金に移行する必要はない」と言明している(Chicago Tribune)。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

6月5日 LA州はCBへ 
Source :Legislature approves retirement plan | News (The Advocate)
5月30日、LA州議会両院協議会は州政府職員年金プラン改革法案(HB 61)に関して最終案で妥結し、州議会上院、下院とも可決した(「Topics2012年5月26日 CB案は両院協議会へ:LA州」参照)(⇒6月5日に州知事署名。6月30日施行予定)。これで、2013年7月以降の新規採用者は、CBプランによる退職給付が用意されることになる。

本当は、ここで上下両院の党派別投票結果を掲載したいところなのだが、投票結果が党派別に示されていないため、次のようにまとめてみた。
上 院
賛成反対合 計
共和党24
民主党15
独 立
合 計268
下 院
賛成反対合 計
共和党58
民主党45
独 立2
合 計6737
上院では、民主党議員で投票を棄権した人が多かった模様である。一方、下院では、かなりの数の民主党議員が賛成に回ったようである。このように、超党派での賛成が多くなったのは、LA州の年金プランが相当傷んでいるという認識が広まっていた証拠であろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月4日 DOMA裁判は連邦最高裁へ 
Source :Appeals Court Rules Against Defense of Marriage Act (New York Times)
5月31日、第9連邦控訴裁判所、第1連邦控訴裁判所が、DOMAは違憲である、との判決を下した(「Topics2012年2月25日 DOMAに違憲判決」「Topics2012年4月6日 もう一つのDOMA裁判」参照)。

今後の道行はまだわからないが、おそらく連邦最高裁に持ち込まれることになろう。仮に連邦最高裁が審理を取り上げるということになれば、実際の審理は来年度となる。連邦最高裁は、今年度のCA州"Proposition 8"事件に続き、2年連続で同性婚案件を審理することになる。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月3日 暗雲広がる労働市場 
Source :Unemployment rises to 8.2% in May as job growth stalls again (Los Angeles Times)
Weak U.S. Hiring Adds to Global Gloom (New York Times)
5月の失業率が8.2%と、遂に上昇してしまった。おまけに、非農業部門の雇用者の伸びが、4月77,000人と下方修正、5月69,000人となり、極めて弱いものとなっている。

もう一つ、時間当たり平均収入が$23.41で、前年同月比1.7%増。これは明らかに消費者物価上昇率よりは低い。実質所得は減少しているのである。

いつもの失業率のグラフは次の通り。
案の定、実感失業率は0.3%ポイントも跳ね上がっている。かなり厳しい状況が出てきたことになる。

※ 参考テーマ「労働市場

6月2日 民間版Exchange
Source :Will private exchanges become the new Travelocity? (FierceHealthPayer)
昨年から、民間企業が独自に"Exchange"を創設する動きがあるそうだ。 いずれも、コンセプトは、
 @ワンストップ
 Aconsumer-driven
である。

上記sourceでも、旅行の予約を全部一ヵ所でできるオンラインシステムが便利で、それと同じようになることを望んでいるという。低所得者対策は別途必要になるとしても、こうした民間活力の活用は重要である。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

6月1日 負債を負ってスタート 
Source :College dropouts have debt but no degree (Washington Post)
以前、大卒の雇用環境が厳しいことを紹介したが、その厳しさはスタート時点から、いやその以前から始まっているようだ(「Topics2012年5月14日 大卒の厳しい雇用環境」参照)。上記sourceで紹介されている数字をまとめてみると、次のようになる。
  1. 大学への進学は、この10年間で38%増加し、2,000万人以上に達している。

  2. 全国で学生ローンの貸出残高は$1T以上にのぼっている。

  3. 私立大学卒業者は、平均$41,000以上の負債を抱えている。

  4. 公立大学卒業者は、その約半分の負債を抱えている。

  5. 学生ローンを抱えた学生のうち、約30%は中途退学している。これは、10年前の25%程度よりも高まっている。
社会人になった当初から、マイナス320万円の借金を抱えている、という状況は、日本では想像しがたい。まして、中途退学で学位は持っていない、借金は抱えている、という状況は、大変厳しいものがある。

※ 参考テーマ「教育