12月20日 上院民主党準備完了 
Source :Democrats Say They Clinch Deal on Health Care Overhaul (New York Times)
ついに、Ben Nelson上院議員が賛成票を投じることを約束したようだ。中絶の扱いに関するReid院内総務の再修正案は、 というものである。加えて、連邦政府からNelson上院議員の選出州であるNebraska州へのMedicaid支出を実質的に増やす措置も講じられるようである。

また、公的プラン創設を断念する代わりに、OPMとの交渉を通じて、民間保険会社が医療給付プランを提供する。これは、史上初めて全米国民を加入対象とするものとなる(Washington Post)。

これで上院民主党の最終投票に向けての準備は完了し、Reid院内総務は、再修正案を提出し、クリスマス前の投票に向けて粛々と進んでいくことになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月19日 新移民法案提出 
Source :Representative Gutierrez Introduces a New Immigration Bill (New York Times)
15日、Luis V. Gutierrez下院議員が、新たな新移民法案を提出した(Press Release)。その名も"Comprehensive Immigration Reform (C.I.R.A.S.A.P)"(H.R. 4321)である。

上記sourceによれば、法案のポイントは次の通り。
  1. 違法入国者が法的資格または市民権を得るためには、

    1. 働いていることを証明する
    2. $500の罰金を支払う
    3. 英語を学習している
    4. 犯罪歴の確認を受ける

    などをしなければならない。

  2. 一旦母国に帰国する("touchback")は求めない。

  3. 国境警備のための追加的な訓練と施設増強を行う。

  4. Homeland Security Dept.は、移民刑務所を改善するとともに、移民に関する事務の州・地方自治体への法定委託を廃止しなければならない。
この問題は、Bush大統領時代にメキシコとの間で交渉を進めようとしていた頃からの問題で、実はObama大統領も不法移民に法的地位を賦与することに賛成の立場を取っていた(「Topics2009年4月16日 移民政策論議再燃」参照)。

流石にこの不況下、失業率が10%にも達している状況で、不法移民に法的地位を賦与することになれば、アメリカ国民が労働市場からさらに追い出されるだけでなく、不法移民の流入が加速されるのではないか、との懸念がある。連邦議会の中でも有力議員からは冷ややかな反応が流れている。

しかし、もう2週間も経てば、2010年という中間選挙年を迎える。選挙区にヒスパニックを多数抱える議員達は無関心ではいられない。提案者のGutierrez下院議員もプエリトリコ系移民の子孫であり、法案の支持者は92名にものぼっている。内容はともかく、選挙区向けアピールとして、この手の法案提出が盛んになってくる時期である。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

12月18日 MA州の禁煙対策 
Source :Antismoking Program in Mass. Draws Attention (New York Times)
MA州の貧困層の喫煙率が大幅に低下しているそうである。上記sourceに示されている事実関係は次の通り。
  1. MA州で2006年に禁煙対策を開始した際には、貧困層の喫煙率は38%であったが、2008年末には28%までに低下した。これはおよそ3万人の喫煙者減少を意味する。

  2. 2006年に成立したMA州皆保険法では、Medicaid加入者が禁煙するためのカウンセリングと処方薬に関わるコストついては、ほぼ全額州政府が負担することとしている。

  3. 同様の支援策を講じている州は、ほかにもIndiana、Minnesota、Nevada、Oregon、Pennsylvaniaの5州があるが、喫煙率が大幅に低下したのは、MA州だけである。
何がMA州の喫煙率を引き下げたのか、更なる分析が必要ではあるものの、この実態は、現在議論されている医療改革法案に影響をもたらしている。下院法案にはMA州と同様の手当を講じる条項が盛り込まれているが、上院法案ではMedicaidに加入している妊婦のみが対象となっている。この辺りも両院協議会での取引材料になりそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/連邦レベル

12月17日 上院は最終投票へ 
Source :Senate rejects importation of prescription drugs (Los Angeles Times)
いよいよ、上院は医療保険改革法案の最終投票に向けて動き出した。まず、民主党にとって、つまり法案可決に向けてのプラス・ポイント。
  1. 処方薬再輸入を認める修正案(S.AMDT.2793)の投票が行われたものの、賛成票が60票に足りず、却下された。投票結果は次の通り。
    民主党共和党独立系合 計
    賛 成2723151
    反 対3017148
    無投票1--1
    過半数には届いているものの、60票に届かずに却下となっている。党派別もバラバラで、特に強い拘束もかからなかった模様だ。これにより、Obama大統領が製薬業界に約束した処方薬再輸入禁止継続は守られたことになる。製薬業界が暴れることはなくなった。

  2. Reid院内総務は、"Medicare buy-in"提案も、公的プラン創設も取り下げた。これにより、Lieberman上院議員は、再び法案支持に回りそうである。

  3. Obama大統領が、民主党上院議員を前に、「全員が満足する完璧な法案は不可能である。我々は歴史の瀬戸際に立っている。今は大きな改革を成し遂げる時である。」と演説した(New York Times)。これにより、先ずは医療改革法案の成立が最優先、という意識が醸成された。Brown上院議員(D-OH)Sanders上院議員(I-VT)などは、公的プラン創設にまだ拘っているようだが、その他の上院議員達は大統領の説得を容易に受け容れたようである(Washington Post)。

    また、下院民主党の方も、Hoyer(D-MD)院内総務は、これまでの姿勢を反転させ、「公的プラン創設が落ちたとしても下院で可決することは可能だ」と述べたそうだ。また、Moran下院議員(D-VA)は、「可決するためなら何でも交渉可能だ」と述べている。
そして、法案可決に向けてのハードルは、次の通り。
  1. Ben Nelson上院議員が、Reid法案の中絶の扱いについてまだ納得していない。ここは信念と選挙事情が重なっているので、なかなか難しいところであろう。

  2. となると、大事になってくるのが、Maine州選出の二人の共和党上院議員である。Snowe上院議員Collins上院議員は、中絶に関する修正案に反対票を投じているものの、現時点では法案に賛成票を投じるとはみられていない。Snowe上院議員などは、最終案の内容を吟味する時間が充分ではない、と態度を硬化させているようにもみえる。

  3. 仮に、上院が法案を可決したとしても、上院内で妥協に妥協を重ねているために、下院可決法案との乖離が広がっている。特に、今回の騒動で公的プラン創設まで落ちてしまったことは、大きな影を落とすことになる。従って、両院協議会での妥協での可能性がどれくらい残されているのかが、大きな懸念材料となる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月16日 DC議会 同性婚法案可決 
Source :D.C. Council approves bill legalizing gay marriage in final vote (Washington Post)
15日、DC議会が同性婚を法的に認める法案を可決した。11対2の大差であった。

カトリック教会との調整は行われないままのようである。

今後の日程は次のように予定されている。
クリスマス前DC市長に法案送付。Fenty市長は署名する見込み。
市長署名後30日間連邦議会による内容確認
来 春法案成立、施行。
反対派は連邦議会の確認期間も戦うと言っているそうだが、独立性を高めつつあるDCに対して、連邦議会が反対を唱えるのはなかなか難しいだろう。

同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
Maine○→×
Rhode Island
California○→×
New York
New Jersey
Oregon
Wasington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
※ 参考テーマ「同性カップル

12月15日 Reid修正提案撤回へ 
Source :Senate Democrats Likely to Drop Medicare Expansion (New York Times)
Lieberman上院議員の反撃は有効であったようだ。上記sourceによると、Reid院内総務は、"Medicare buy-in"提案も、公的プラン創設も断念する模様である。法案可決が近付くにつれて、一票の重みがますます増していくようだ。

それで、その代替案はどうなるのか。それがまた火種になるようだと、イブ前の法案可決は絶望的となる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月14日 Liebermanが反旗 
Source :Joseph Lieberman Says He Can't Support Current Health Bill (New York Times)
13日、Lieberman上院議員が、今のReid法案では反対票を投じることになる、と述べた。Reid院内総務が提案した修正案(「Topics2009年12月9日(2) 上院各論議論:公的プラン」参照)に反対とのことである。

Lieberman上院議員は、そもそも公的プランの創設に反対である(「Topics2009年11月23日(1) 上院審議開始」参照)。しかも、今は景気対策が優先されるべきであり、医療改革はその後でいいではないか、と改革先送り論者でもある(「Topics2009年8月24日 Lieberman上院議員が慎重論」参照)。

上院民主党は、イブまで審議を継続すると言っているが、その結果が吉と出るのか凶と出るのか。ここでObama大統領が踏ん張らなければ、法案可決に向けてのモメンタムは失われてしまうのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月13日 No.2の苛立ち 
Source :Senate Hits New Roadblocks on Health Care Bill (New York Times)
上院民主党のNo.2が苛立っている。Richard J. Durbin (D-IL)は、上院民主党のWhipであり、2006年にはTime誌が「上院議員ベスト10」の一人に選出している。そのDurbin上院議員が、『Reid院内総務提案の詳細を知らされておらず、その秘密主義に共和党同様の苛立ちを覚える』と発言している。

Durbin上院議員は、リベラル派リーダーの一人であり、公的プラン創設を強く支持しているはずである。それが詳細も知らされないまま、Reid院内総務が公的プラン創設を断念してしまったということであろう(「Topics2009年12月9日(2) 上院各論議論:公的プラン」参照)。

一方、政府内からも、Reid法案にはメリットもデメリットもある、とのレポートが出されたようだ。CMSのRichard Foster主任数理人が公表したレポートでは、次のようにされているそうだ。 Reid院内総務は、当然、メリットの部分を強調しているが、共和党の方は「やっぱりそうだろう」と勢いづいている。民主党上院議員も穏やかではいられまい。上院民主党が法案可決に向けて結束できるのか、不透明になってきたような気がする。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月12日 再び輸入処方薬 
Source :Senate health debate hits snag over imported drugs (Los Angeles times)
上院で処方薬再輸入を認めるという修正案(S.AMDT.2793)が出され、医療改革法案(H.R.3590)の審議が止まってしまった。提案者はDorgan上院議員(D)McCain上院議員(R)であり、超党派となっている。法案支持者をみると、Snowe上院議員、Nelson上院議員など、法案成立の鍵を握る議員が多数含まれている。処方薬再輸入は、処方薬の購入価格を直接下げることができるので、人気のある政策である。

Obama大統領も、本来は処方薬再輸入の解禁には賛成なのだが、今これを認めるわけにはいかない。製薬業界との約束で、医療保険改革に賛成すれば処方薬再輸入は認めないことにしているからだ(「Topics2009年7月9日 疑心暗鬼(2) 」参照)。もしも処方薬再輸入を認める修正が可決されれば、製薬業界は医療改革法案そのものに反対せざるを得なくなる。

Dorgan上院議員は、そもそも処方薬再輸入の推進派最右翼であり、政治信念で提案者に加わっている。McCain上院議員も同じく推進派だが、この時期に法案修正提案をしてくるところに老獪さを感じるが、Dorgan上院議員は与党でありながら、Obama大統領を苦境に追い込んでいることがわかっているのだろうか。それとも、カナダと国境を接するND州選出議員としては、処方薬再輸入推進派の最前線に立たざるを得ないのであろうか。ちなみに、同議員は、来秋選挙の洗礼を受けなければならない。

それにしても、ここで急に処方薬再輸入を持ち出したMcCain上院議員の老獪さには敬服する。医療保険改革法案を支持してきた各層が、上院審議が進むにつれて同法案から離れていっているように感じるのは、管理人だけだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「処方薬再輸入

12月11日 公的プラン修正案に疑念 
Source :Pelosi supports Medicare buy-in plan in senate health-care deal (Washington Post)
今週になってReid院内総務ら10人によって示された公的プラン創設の代替案("buy-in"提案)に、様々な方面から疑念が呈されている(「Topics2009年12月9日(2) 上院各論議論:公的プラン」参照)。

  1. Pelosi下院議長は、『上院での審議継続を担保するためには有効だが、やはり公的プランの創設が望ましい』とコメントしている。リベラル派の頭目であるPelosi下院議長としては、中絶の取り扱いで厳しい要件をつけたうえに、公的プランの創設まで見送りになってしまえば、面子丸つぶれということになろう。

  2. 医療機関は反対を表明している。その世代の人々がMedicareに入ってしまうと、診療報酬が安くなってしまうからだ。わかりやすい。

  3. Snowe上院議員は、医療機関の理解者であるために、"buy-in"提案には反対の立場である。折角、Snowe上院議員を取り込もうと"trigger"条項を入れようとしているのに、これでは何のために公的プラン創設を諦めようとしているのか、わからなくなる。

  4. AARPは、Medicare制度そのものが揺るがなければ、"buy-in"提案には反対しない、という消極的な支持である。何を懸念しているのかというと、低所得者層が大量に入ってきた場合、ただでさえ苦しいMedicareの財政状況が一層悪化するのではないか、ということである。

  5. Medicareの保険料は高過ぎて、加入者はそれほど伸びないのではないか、との懸念がある。

  6. また、中高年の従業員に対する医療保険プランの提供を企業が止めてしまうのではないか、との懸念もある。
こうしてみると、これまでの医療保険改革推進派との連携を、次々と揺るがしているかのようにも見える。Reid院内総務は、一体何を目的に、公的プランを諦めようとしているのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル