8月31日(1) Flexible Work Arrangements Source : Flexible Work Arrangements Thrive at AARP’s Best Employers for Workers Over 50 (AARP News Release)

30日、AARPが、50歳以上の従業員にとって評価の高い企業トップ50社(2006年分)を公表した。

2006年のトップランクは、Mercy Health Systemという非営利の医療機関で、50歳以上の従業員に提供されているプログラムは、ここを参照いただきたい。

そのプログラムをみて驚くのは、多様な働き方を認めるプログラムの豊富さである。これは、このトップランク企業だけの特徴ではなく、今回の表彰を受けた企業に共通した特徴となっているそうだ。少なくともMercy Health Systemのプログラムをみる限り、それらは50歳以上の従業員だけではなく、その他の世代にも提供されているのではないかと思われる。

要するに、従業員にとっても企業にとってもメリットとなる働き方、"Flexible Work Arrangements"がキーワードになっているということだろう。以前にも書いたことがあるが、ITバブルがはじけた後の働き方の模索の中で、この「柔軟かつ多様な働き方の容認」が大きな課題になっていた(「Topics2002年2月2日 ワークシェアリング」「Topics2003年8月12日(1) もっと自由を!」「Topics2004年9月8日 フレックスタイムの実態」参照)。 このランキング評価を見ていると、アメリカ社会では、ほぼ結論が出されたとみてよいだろう。

8月31日(2) Emailed Pink Slip Source : RadioShack Issues Emailed Layoff Notices (AP)

29日朝、RadioShackの本社で、400人に対し、解雇通知が行われた。会社の広報によれば、近く解雇通知が行われるということは、従業員には説明済みであったということだが、それが本当であれば、従業員は、朝ドキドキしながら会社に来て、PCを開いたことであろう。

Pink Slipについては、拙稿「アメリカ企業の解雇の実態 (2002/10/11)」を参照いただきたい。そこでも、WorldComがemailで解雇通知を行った模様を紹介しているが、こうした慣行は、アメリカ企業では主流になっているのかもしれない。なんと味気ない、しかも温かみのない行為なのか。日本では流行ってもらいたくないものである。

8月30日(1) 2005年センサス(1) 無保険者 Source : Income Climbs, Poverty Stabilizes, Uninsured Rate Increases (US Census Bureau Immediate Release)

所得、貧困、無保険者に関するセンサス結果が公表された。オリジナルの報告書も掲載しておく。

内容が3分野に分かれているので、一つずつに分けてまとめておきたい。最初に無保険者である。ポイントは次の通り。

  1. 医療保険加入者は、2004年から2005年にかけて140万人増加し、2億4,730万人となった。

  2. 他方、無保険者は、130万人増加し、4,660万人となった。これにより、無保険者割合は、15.6%から15.9%に上昇した。

  3. 企業が提供する医療保険プランの加入者は、1億7,480万人となり、同加入割合は、59.8%から59.5%に低下した。

  4. 政府が提供する医療保障制度への加入者は、7,940万人から8,020万人に増加し、その割合は27.3%となった。

  5. 無保険の子供は、790万人から830万人に増加し、無保険者割合は、10.8%から11.2%に上昇した。
無保険者の詳細を見てみると、年齢では20〜30歳台の割合が高く、また人種別では黒人が突出している。また、偶然だとは思うが、企業の医療保険プランへの加入割合が低下した分だけ無保険者の割合が高まっている。

8月30日(2) 2005年センサス(2) 貧困世帯 Source : Income Climbs, Poverty Stabilizes, Uninsured Rate Increases (US Census Bureau Immediate Release)

次に、貧困世帯である。
  1. 貧困世帯に属する国民の人数は、2005年で3,700万人、全体の12.6%となった。

  2. 2004年からは変化がなく、2001〜2004年で4年間続いていた増加に歯止めがかかった。
恥ずかしながら、これを読んでいて、貧困世帯の判断基準が2つあることを初めて知った。制度上の貧困世帯の定義("Poverty Guidelines")、改定はHHSが行う一方、センサスのような統計目的での定義("Poverty Thresholds")、改定はOMBが行う。両者の違いは、ここを参照。

8月30日(3) 2005年センサス(3) 所得 Source : Income Climbs, Poverty Stabilizes, Uninsured Rate Increases (US Census Bureau Immediate Release)

実質の世帯所得中位数は、2004年から2005年にかけて1.1%上昇し、$46,326となった。1999年以来、初めての上昇である。

上昇はしたものの、頭打ち感が強い。所得に関して、アメリカ社会では、様々な議論が行われている。企業所得が伸びているだけで、労働者への分配率が低下しているとか、労働生産性の上昇に追いついていない、さらには、国際競争の激化に伴い、世界の先進国で同様の現象が起きている、等々(The New York Times三菱東京UFJ銀行ワシントン駐在員事務所)。

こうした頭打ち感に警戒心を高めているのが共和党、ここぞとばかりにBush政権の問題を指摘しようと手薬煉をひいているのが民主党、という構図になっているようだ。

日本でも「格差」が話題になっているが、アメリカでも同様の議論が高まりそうである。

8月29日 DuPontも・・・ Source : DuPont News: August 29, 2006

先に紹介したTenneco社(「Topics2006年8月24日(3) PPAへの最初の反応」参照)に続き、DuPontが、DBプランの縮小を決定した。プラン変更の概要は次の通り。
  1. 2007年までの勤務に対応する給付は、変更しない。

  2. 2008年以降の勤務に対する拠出水準は、現在の3分の1に引き下げる。

  3. 2008年1月以降、DCプランに対する拠出を大幅に増額する。従業員は全員加入とする。

  4. 事業主拠出は従業員報酬の3%とする。

  5. 従業員拠出は報酬の6%を上限とし、マッチング割合は100%(現在は50%)に高める。

  6. 2007年12月31日以降、遺族年金給付は増額しない。

  7. 2007年1月1日以降に雇用された社員は、全員、新たなDCプランに加入する。DBプラン、退職者医療プラン・退職者生命保険への補助金の対象にはならない。

  8. 現時点での退職者、2008年1月1日より前に退職した従業員については、受給権が付与された分の変更はない。

  9. この変更に伴う2006年の収益への影響はほとんどない。2007年の収益への影響は一株当たり$0.3程度の改善、2008年以降は$0.5程度の改善と見込まれる。
この発表のあった当日(28日)、DuPont株は、$0.22上昇した。

DuPontといえば、重厚長大産業、DBプランを堅持するとしてきた代表的な企業である。日本で確定拠出年金の導入を議論していた際、自民党から「経団連は確定給付を確定拠出に置き換えようとしているのか」と問われて、「年金プランの選択肢を用意したい。アメリカでも、DuPontのように長期雇用を大切にする企業はDBプランを重視している」と答えていたことを思い出した。

そのDuPont社が、「福利厚生のトレンドに合わせ、企業の競争力を高めるために」DBプランを圧縮し、DCプランに移行しようとしている。PPA成立(「Topics2006年8月18日(4) PPAに大統領署名」参照)も、この流れを止められないようだ。

8月24日(1) PPO>HMO Source : Employers Favor PPO-type Health Insurance Over HMO-type Plans (Medscape)

上記sourceによると、1996年から2004年の間に、企業が提供する医療保険タイプのうち、HMOの占める割合は、32.4%から36.2%とわずかにしか増えていない。一方、PPOの割合は、55.1%から69.2%と大幅に伸びている。

各保険プランの特徴は、The International Foundation of Employee Benefit Plans (IFEBP)用語集によれば、次の通り。
90年代の医療費高騰期に、コスト(=保険料)抑制策としてもてはやされたHMOプランだが、やはり制約が強すぎて、従業員には評判が悪いのであろう。大勢はほぼ見えたようだ。

8月24日(2) 診療報酬の公開 Source : The Secret's Out - Aetna Members Gain Access to Care Price, Quality Data (The Washington Post)

Aetnaという大手医療保険プラン提供会社が、医療機関との間で契約している診療サービス価格と、それらの診療の質に関する情報を、会員向けに提供するサービスを開始した。同社は、既に一年前から、Cincinnatiでは、情報提供しているが、今週末から、DC、MA、VA地域で100万人、その他の地域で130万人が、同様の情報にアクセスできるようになる。

Aetnaとしては、保険加入者への情報提供の強化、特に、HSAs利用者にとっての利便性を高めるという狙いがあるようだ。

それにしても、医療機関側にとっては、厳しいものがあろう。これまでは、患者にはほとんど情報がなかった診療報酬について開示されるだけでなく、他の医療機関との比較も可能となってしまうため、保険加入者の医療機関の選択が、よりシビアになっていくことが予想される。

8月24日(3) PPAへの最初の反応 Source : Tenneco Announces Pension Plan Changes (Press Release)

かどうかは保証できないが、自動車部品メーカーであるTenneco社は、23日、既存のDBプランをすべて凍結し、DCプランへの拠出額を増やすと発表した。

しかも、同社のDBプランは、報道によれば、資産$332M、給付債務$196M(2005年9月時点)と、健全な積立状況であったという。

PPAは、DBプランの凍結、廃止という流れに対しては、やはり無力なのであろうか。

8月23日 各州の医療事情 Source : statehealthfacts.org

昨日見つけた上記web siteは、なかなか面白い。例えば、こんなランキングが次々と出てくる。

項  目
1 位
2 位
3 位
・・・
49 位
50 位
51 位
企業提供プランの保険料(含む家族)が一番高いのは?District of ColumbiaNew JerseyNew Hampshire・・・HawaiiArkansasNorth Dakota
企業の保険料負担割合が一番高いのは?New JerseyMichiganNew Mexico・・・MarylandNebraskaMississippi
一人当たり医療費支出が一番高いのは?CaliforniaNew YorkTexas・・・North DakotaVermontWyoming
無保険者割合が一番高いのは?TexasNew MexicoOklahoma・・・
・・・
・・・
Minnesota
企業保険加入割合が一番高いのは?New HampshireMinnesotaNew Jersey・・・ArkansasMontanaNew Mexico
HIV患者が最も多いのは?New YorkCaliforniaFlorida・・・South DakotaWyomingNorth Dakota

この中を詳しくみていくだけでも、一日たってしまいそうだ。

8月22日 San Diego City Attorneyの苛立ち Source : COURT OF APPEAL TAKES FIRST STEP IN DECIDING WHETHER TO REVIEW PENSION CASE RULING (News Release)

以前にも紹介したことがあるが、San Diego City職員の年金給付増額措置を巡って、City Attorney Michael AguirreSan Diego City Employees' Retirement System (SDCERS)の間で、争いが続いている(「Topics2006年7月6日(4) San Diego City年金プランを巡る訴訟合戦」参照)。

まず、市当局としての対応である。

今月8日、年金プランに関する監査委員会が監査報告書を公表した。通称、Kroll Reportと呼ばれているが、監査に要した歳月は18ヶ月、費用は$20Mにも達した。監査委員会の委員長には、元SEC委員長のArthur Levitt, Jr.を担いだ。SD Cityとしては、大変な力の入れようである。

ところが、監査報告書の結論は、SDCERS側に様々な問題があるものの、法律違反と断定するには至らない、というものであった。しかも、報告の内容は、これまで公表されているものをなぞっただけで、新たな発見はほとんどない、とCity Attorneyは激怒しているのである。

また、法廷では、7月10日、加州最高裁が、「SDCERSの年金給付増額手続きは無効であるとの結論は出せない」との判決を示した。このため、SD Cityは、7月28日、第9控訴裁判所に対し、1996年と2002年の増額措置を無効とするよう、訴えた。これを受けて、第9控訴裁判所は、SD Cityに対してさらに必要な説明書類を提出するよう命じるとともに、関係者からの意見書を8月28日までに提出するよう求めた。いよいよ、SD Cityの年金プランは、連邦裁判所で、その適正性を判断されることになりそうだ。

しかし、City Attormeyの思うような結論が得られるまでには、まだかなりの時間がかかりそうである。彼のNews Releaseを読んでいると、その苛立ちがこちら側にもひしひしと伝わってくる。

ちなみに、1996年と2002年の給付増額措置とは、次のような内容であった。