8月18日(1) PPAへの評価 Source : Mixed views on pension legislation (U.S.News & World Report)

Pension Protection Act of 2006 (PPA) (HR. 4) は、14日に大統領に対する説明が行われたものの、まだ署名には至っていない。先に紹介した通り、Bush大統領は、署名する方向であることを正式に述べている。

世の中では、法案内容に関する解説がほぼ一巡し、内容に対する評価が示され始めたようだ。上記sourceでも、法案支持派、疑念派の意見を掲載している。 疑念派の二人は、いずれもPBGCの専門家であり、その二人の意見がほぼ一致していることを、よく認識しておく必要があるだろう。

8月18日(2) MA皆保険 低所得者の保険料 Source : Panel sets rate plan for health coverage (The Boston Globe)

16日、低所得者(PL100%〜300%)の保険料案が公表された。これは、Commonwealth Health Insurance Connector の内部に設けられた専門委員会で検討してきたもので、17日にConnectorで採決され、その後、公開ヒアリングにてコメントを受けつける予定となっている。

保険料案のポイントは、次の通り。
  1. 低所得の単身者の保険料を、所得段階に応じて、月$10〜$100(または、所得の1%〜4.5%)とする。

  2. 低所得の夫婦の保険料を、所得段階に応じて、月$20〜$200(または、所得の1.5%〜6.6%)とする。

  3. PL100%以下の所得層については、保険料は全額公費とする。

  4. 歯科診療は保険対象からはずす。

  5. 外来診療、処方、救急診療等については、一部自己負担を求める。ただし、年間$500または$750を上限とする。
これについて、皆保険を実現したいグループからは、保険料が高すぎるという意見が出ている。企業が提供する一般的な医療保険では、中堅クラスの保険料負担は所得の2%程度となっており、低所得者層においても、この2%を上限とすべき、という考え方である。

しかし、ここで保険料負担を大きく抑制すると、公費の負担が大きくなりすぎ、無保険者全体をカバーすることが難しくなる。実際、専門委員会では、PL100%〜200%の層については補助を厚くすべきということで意見が一致しているものの、200%〜300%の層については意見が一致していない、とのことである。

直接保険料設定とは関係ないが、皆保険を検討し始めると、所得に応じた保険料負担という考え方が出てくるというのは面白い。もちろん、公費部分により所得再分配が行われる訳だが、保険料においても所得再分配の考え方が出てきている。皆保険と所得再分配とは、理論的な必然性はないにしても、社会的な必然性として表裏の関係にあるのかもしれない。

8月18日(3) RSAのGAS45対応 Source : Bronner says Alabama must act on pension fund (Tuscaloosa news)

久々にRSA (Retirement Systems of Alabama) の登場である。US Airwaysの2度目の破綻により、同社への大規模投資をすっかりすってしまい、それ以来、当websiteへの登場もしばらくなかった(「Topics2004年9月13日 2度目のChapter 11」参照)。

今回は、年金ではなく、医療である。年金プランでは、強気の投資で健全財政を誇っているRSAだが、退職者医療では手付かず状態のようで、GAS45への対応を迫られている(「Topics2005年12月13日 時限爆弾-GAS45」参照)。

上記sourceによれば、RSAの医療関係の給付債務は、およそ$20B近くに達する模様で、今後30年間にわたって、毎年$1Bの追加費用が必要とされている。Bronner理事長は、すべてをアラバマ州民の税金だけではなく、加入者による拠出も必要と主張しているようだ。加入者による拠出は、保険料への上乗せという形になる。積立不足解消策の一つとして、今後検討されていくことになろう。

8月18日(4) PPAに大統領署名 Source : President Bush Signs H.R. 4, the Pension Protection Act of 2006 (The White House)

今日の分をいざアップロードしようとしたところ、現地時間で8月17日午後、Bush大統領がHR 4に署名したことが、ホワイトハウスのwebsiteで確認された。いよいよ年金改正法の施行である。

8月17日 アメリカ労働市場概観 Source : Charting the U.S. Labor Market in 2005 (DOL)

上記sourceは、アメリカ労働省がまとめた、図表による労働市場概観である。この中から、いくつかの気付き点をまとめておく。
  1. 雇用形態のうち、正規・非正規の割合が、およそ4対1ということだ(Chart 1-1)。これに較べると、日本の2対1というのは、非正規の割合が高いという印象を持つ。

  2. 多くの業種で、雇用を増やしているものの、製造業、情報通信産業で雇用者数が減っているのが目立つ(Chart 1-9)。

  3. 2005年に発生した離職の3分の1が、事業所を国外に移転することに伴うものであった(Chart 1-15)。依然として、アメリカ国外への事業所の移転は、相当なスピードで行われていることがわかる。その一方で、失業率は低下しつづけており(Chart 1-2)、アメリカ国内の雇用の力強さが窺われる。

  4. 報酬のうち、福利構成部分の上昇率が、賃金の上昇率を上回っている状況が続いている(Chart 1-17)。これは、医療関連の上昇率が高いためと思われる。

  5. 大学卒業割合が3割前後となっており(Chart 2-1)、これに較べれば、日本の37%前後は、かなり高いとみてよい。アメリカの方が、もっと大学卒業者の割合が高いのではないかと思っていた。

  6. 全年齢において、男性従業員が一つの企業にとどまっている割合が低下している(Chart 3-9)。若い世代に限った現象ではなくなっていることが明白となっている。他方、女性従業員の低下割合はわずかであり(Chart 3-10)、大きく変化しているとは言い難い。

  7. 人種別で見た失業率は、アジア系<白人<ヒスパニック<黒人となっている(Chart 4-5)。また、賃金水準は、ヒスパニック<黒人<白人<アジア系という順になっている(Chart 4-7)。アジア系といっても、中国系が多いものと思われ、アメリカ社会での中国人の活躍が目立っている。

  8. 女性の労働力化率は、30年前にくらべると、相当高まっている(Chart 5-2)。

  9. 35年前に較べ、片親家庭の割合が倍の25%にもなっている(Chart 6-1)。つまり従業員の4人に1人が片親で家庭を維持していることになる。これは、福利厚生の面でも配慮せざるを得ない状況であろう。

  10. ワーキング・マザーの割合が、大幅に高まっている(Chart 6-3)。特に、5歳以下の子供を持つ母親の進出が目覚しい。

8月16日 Pension Protection Act of 2006 概要(2) 

Groom Law Groupという法律事務所から、Pension Protection Act of 2006の現行法との比較表が公表されているので、ここに掲載しておきます。
私事ですが、10日〜14日にかけて、夏休みを取って、比叡山延暦寺丹波篠山に参りました。本日は、丹波篠山のデカンショ祭りの最終日ということで、盛り上がっていることと思います。