12月28日(3) アメリカ労働法の概要 Source : Summary of Major Federal and State Labor and Employment Laws (Gardner Carton & Douglas)

法律事務所が簡単に概要をまとめたもの。ご参考まで。

12月28日(2) HSAに対する評価 Source : Early Experience With High-Deductible and Consumer-Driven Health Plans (EBRI Issue Brief No. 288)

2004年に創設されたHealth Savings Accounts (HSAs)、Health Reimbursement arrangements (HRAs)(「Topics2004年1月7日(1) 医療貯蓄勘定」参照)について、おそらく全米初の総合的な評価調査が、EBRIより公表された。

HSAsについて、創設当初は、かなりのインパクトがあるのではないか、との観測がよく見受けられた。 しかし、上記sourceによれば、HSAについて次のような課題が指摘されている。これらは加入者側の観点に立った課題であり、裏返せば、企業側にとっての評価となるともいえる。
  1. 加入者の満足度が低下した。診療の定型化、加入者の選択肢が広まった。
  2. 加入者の自己負担が増加した。企業側のコストが抑制された。
  3. そのため、受診割合が低下した。不要な診療が抑制された。
  4. また、コストに対する意識が高まった。効率的な医療が提供された。
こうした課題の指摘と評価を踏まえながら、企業での検討が進められていくことになる。

12月28日(1) NYの交通機関ストライキ Source : Transit Strike Reflects Nationwide Pension Woes (New York Times)

自治体の年金問題が、ついにストライキにまで発展した。先週、NYで60時間続いた公共交通機関のストライキは、年金問題に端を発するものであった。

NY公共交通機関の従業員は、25年加入で55歳になると、受給資格を得る。その際の所得代替率は50%となっている。従業員の平均年間所得は、時間外も含めて、約$55,000である。また、従業員の個人掛け金は、賃金の2%となっている。

当局側は、このまま年金問題を放置すれば、教育、警察機能その他自治体サービスへの支出を削らざるを得なくなるとして、受給資格を62歳に延ばすか、個人掛け金を賃金の6%にあげるとの提案を行った。

従業員組合(Transport Workers Union)はこれに反発してストを打ったわけだが、スト終了後も、問題は未解決のままである。その後ろ盾となっているのが、『自治体等の現職員の年金を削減することは憲法違反である』との多くの判例である。

アメリカの自治体は、民間企業と同様、年金、退職者医療(「Topics2005年12月13日 時限爆弾-GAS45」参照)というレガシーコストに、当分悩まされ続ける。

12月26日(4) 受託者責任を巡る司法判断が混乱 Source : Workers' Suits Over 401(k) Woes Face Contradictory Court Rulings (Wall Street Journal)

401(k)プランにおける受託者責任(fiduciary duty)を巡る論争は、きわめて難しい。特に、アメリカ企業の場合、自社株のウェイトが高いのが一般的なだけに、この課題は深刻である。当websiteでも、立ち上げ当初から、問題提起を続けてきたところである(「Topics2002年2月18日 経営者の受託者責任」参照)。

受託者責任が問われるべきか否か、の判断の前に、大事な最高裁判決(2002年)がある。その判決は、現在、「個人が訴えた受託者責任裁判では、原告に金銭的な賠償は支払うことはできない」と解釈されているそうだ。従って、個人で訴訟を起こしても金銭的な賠償がないなら、集団訴訟を起こそう、ということになる。

ところが、多くの裁判所で、「一部の加入者が損失を被った場合には、その加入者はプラン全体を代表して訴えを起こすことはできない」との理由で、こうした訴えを却下している。 そうなると、加入者が企業を相手に損害賠償を求めることができる訴訟は、極めて限定されてしまう。上記sourceでまとめられている最近の判例は、次のようになっている。
裁判所被告判決
第3控訴裁判所Schering-Plough Corp.個人として訴えを起こすことは可能、との判決。地方裁判所の判決を覆した。
NY連邦地方裁判所J.P. Morgan Chase & Co.加入者全員が損失を被っているわけではないので、従業員個人は訴えを起こすことはできない。
第5控訴裁判所American Airlines加入者代表が訴えを起こす場合には、加入者全員が損失を被っていなければならない。
労働省(DOL)は、損害を被った加入者の割合に関係なく、こうした訴訟が進むよう、裁判所で意見陳述をしているようだが、その効果はあまり出ていないようだ。

受託者責任を問えるかどうかの以前に、従業員が訴訟を起こせるかどうかの判定で、相当厳しい状況になっている。

12月26日(3) 医療をめぐる労使の意識格差 Source : The Principal Financial Well-Being Index Executive Summary - Fourth Quarter 2005 (The Principal)

いつものことながら、ベネフィットとしての医療保険プランをめぐる労使の意識格差は大きい。上記sourceを引用しながら概略をまとめれば、次のようになる。
従業員の方では、医療が最も重要なベネフィットと考えており(Table 7)、それに対応するように、企業側も可能な限り、医療プランを提供している(Table 5)。しかし、それらのプランに対する従業員側の満足度は低く(Table 6)、最も改善が望まれるプランとして挙げられている(Table 9)。ところが、医療コストの抑制という観点から、従業員側の負担は増えており(Table 10)、ますます不満が高まりそうである。
医療をめぐる労使の悩みは、まだまだ続きそうである。

12月26日(2) PBGC理事長の指摘 Source : Remarks by Bradley D. Belt to the American Institute of Certified Public Accountants (PBGC)

上記sourceは、今月12日、PBGCのBelt理事長が、アメリカ公認会計士協会(AICPA)で行った講演録である。

この講演で、Belt理事長は、年金会計の問題点として、次の3点を挙げている。
  1. 年金資産または給付債務がオフバランスになっていること
  2. 年金資産と給付債務のミスマッチ・リスクが開示されていないこと
  3. 年金資産、給付債務の計測において、激変緩和措置が採られていること
また、随所で、FASB、SECの動きも紹介しており、PBGC-FASB-SECの三者が連携していることが窺われる。いよいよ年金会計の見直しは本格化しそうである。

12月26日(1) 年金会計見直しの第一歩 Source : Action Alert No. 05-51, December 22, 2005 (FASB)

年金及び年金以外の退職後ベネフィットに関する会計の見直し(「Topics2005年11月11日 年金会計の見直し」参照)が開始された。12月14日に開催された、FASBにおいて、次のような決定が行われた。
  1. 第1フェーズの目的と範囲は次の通り。
    1. 年金及び年金以外の退職後ベネフィットについて、積立超過、積立不足かどうかを、財務諸表上で認識する。
    2. 資産、給付債務(PBO等)の計測方法は変更しない。
    3. 年間コストに関する計測方法も変更しない。
    4. 早急に内容を検討し、2006年12月15日以降に終了する事業年度から適用する。

  2. 資産、給付債務の計測時点を、財務諸表と合わせる。

  3. 確定給付型プランの中間報告は変更しない。

  4. 積立超過による純資産、積立不足による純債務を認識する。

  5. 従前は認識していなかった次のような項目について、認識する。
    1. 数理上の損益を「その他包括利益」として認識し、リサイクルの対象とする。
    2. 事前のサービス・コストも認識し、リサイクルの対象とする。
    3. 資産移管に伴う純増減を認識し、リサイクルの対象とはしない。

  6. Q&A 41"A Guide to Implementation of Statement 87 on Employers' Accounting for Pnesions" を、FAS87に取り入れて条文化する。

  7. その他包括利益の中で勘定項目として明示することは求めない。これについては、FAS130の中で議論する。
こうした決定がFASB行われたために、先に紹介したようなS&Pの試算が必要になってくるのである。

12月22日(4) 自治体だけではない時限爆弾 Source : S&P 500 Update : Pensions and Other Post Employment Benefits (S&P)

先に、自治体が退職者医療に関する債務という時限爆弾を抱えていることを紹介した(「Topics2005年12月13日 時限爆弾-GAS45」参照)。ところが、これは民間企業でも同じことが言えるらしい、というのが、上記sourceの主旨である。

FASBは、年金、年金以外の退職者所得(以下"OPEB")に関する会計基準について、2段階で見直しを行うとの決定を下している(「Topics2005年11月11日 年金会計の見直し」参照)。どのような結論になるかは、当然、これからの議論次第だが、退職者医療を中心とするOPEBについて、年金と同様の給付債務、資産評価、オンバランス化を求めるという内容になった場合、株価に与える影響は大きいと見られる。そのような前提に立って、S&Pが大会社について試算をしてみたわけである。

当websiteとしては、S&P500社の全体像とともに、最近話題の中心となっているGMについて、紹介しておきたい。
項 目
S&P 500
General MotorsGM/S&P500(%)
年金給付債務($M)1,341,158107,4408.01
資産($M)1,184,79999,9098.43
積立不足額($M)-149,770-7,5315.03
積立比率(%)88.3492.99-
OPEB給付債務($M)378,95977,47420.44
資産($M)82,20016,01619.48
積立不足額($M)-292,160-61,45821.04
積立比率(%)21.6920.67-
年金+OPEB積立不足総額($M)-441,929-68,98915.61
積立不足総額/長期債務(%)-10.19-33.30-
積立不足総額/総資産(%)-1.92-14.38-
積立不足総額/時価総額(%)-3.78-529.49-
気付きの事項は、次の通り。
  1. 給付債務は年金の方が圧倒的に多いにもかかわらず、積立不足は、OPEBの方が大きくなっている。年金については積立基準がルール化されているのに対し、OPEBについては積立ルールがないことが原因とみられる。

  2. 年金+OPEBの積立不足総額は、時価総額の4%近くに達する。

  3. GMのOPEBの給付債務が巨額になっている。車メーカーの大盤振る舞いが際立った形になっている。

  4. これを受けて、GMの年金の積立比率は相当高いのに、OPEBの積立比率は低水準となっている。

  5. GMの積立不足総額の時価総額に対する比率は500%以上と、ほとんど解消不可能な状況に陥っている。最近の株価で計算すれば、この比率はもっと大きなものとなる。

  6. S&P 500の中で、積立不足総額の時価総額に対する比率が100%を超えているのは、6社。その6社とは、GM(-529.49%)、Ford Motor(-304.81%)、Visteon Corporation(-240.23%)、Goodyear(-212.93%)、Dana Corporation(-207.29%)、Navistar International(-133.82%)と、すべて車関係である。

12月22日(3) 凍結されている年金プラン Source : An Analysis of Frozen Defined Benefit Plans (PBGC)

2003年における凍結プランについて調査した結果である。概要は次の通り。
  1. 確定給付型年金プラン(以下"DB")全体のうち、拠出、受給権の付与等が凍結されているプランは、9.4%。加入者の少ないプランほど、凍結の割合が高くなっている。
    223-1
  2. 凍結されているDBの積立比率は、80%超と80%未満は、ほぼ半々となっている。
    223-2
  3. 凍結プランの積立比率を規模別に見ると、必ずしも規模が大きいプランの積立比率が良いわけではないことがわかる。
    223-3
  4. 業種別で見ると、繊維工業、金属工業、ゴム・プラスチック製品、航空、卸・小売業などで、凍結プランの割合が高い。
    223-4
  5. 労働組合がある場合は、凍結される割合が低い。

12月22日(2) 年金改革法案の財政への影響 Source : 上院案下院案Joint Committee on Taxation

先に可決された、年金改革法案について、財政への影響をまとめた資料である。2006〜2015年の10年間で、上院案では▲$12.1B、下院案では▲$69.9Bとなっている。下院案で大幅な赤字拡大となっている主な要因は、年金関連税制の拡充が含まれていることによる。

これだけ大きな差異を残したまま、それぞれの議会で可決してしまうところに、事前調整、すなわち法案成立に向けてのぎりぎりの努力の跡が見られないのである。

12月22日(1) GM vs TOYOTA Source : Toyota Closes In on G.M. (New York Times)

次の図は、ここ数年の、両社の生産台数の推移である。
CARS500
今年はかろうじてGMが上回る見通しである。しかし、20日、TOYOTAは、2006年の生産目標を、906万台(10%増)とすると発表した(生産計画)。

一方のGMは、工場閉鎖、従業員削減、格付けの低下、と生産台数の維持すら難しい状況にある(「Topics2005年12月19日(2) GMの信用度低下」参照)。さらには、株価も一段下げとなっている(→Yahoo Finance)。そこで、上記sourceは、2006年には生産台数世界一の座は、GMからTOYOTAに移るのではないか、と報道しているのである。

実にまずい状況に見える。TOYOTAは、ナンバー1かどうかは関係ない、とはいうものの、アメリカの世論、政治がどうこの事実を受け止めるか、が重要である。もちろん、TOYOTAブランドは、アメリカ社会に充分浸透しており、特にLEXUSは、ステータス・シンボルにすらなっている。簡単に反TOYOTAとはならないとは思うが、用心に越したことはないのである。