8月10日 製薬会社への痛烈な批判 Source : She turns her pen on drug makers (LA Times)

上記sourceは、Marcia Angell, M. D.に対する製薬会社に関するインタビューの概要である。

私は、この記事を読むまで、彼女の名前を知らなかったが、よく調べてみると、医療の世界では相当に影響力のある人物であることがわかる。主な経歴は、次の通り。
その彼女が製薬会社に関して何を言っているかというと、ポイントは、次の6点。
  1. 製薬会社のR&D費用は、売上の14%程度しかない。それよりも、マーケティング、管理費に31%も費やしている(いずれも2002年)。それでいながら、Fortune 500に入っている上位10の製薬会社の利益は、合計$35.9Bと、他の490社の合計利益よりも大きい。

  2. 製薬会社が販売している医薬品のほとんどが、画期的な新薬ではなく、いわゆる類似品("me-too drugs")である。類似品であるにも関わらず、新製品の効力が高まったと認識されるのは、偏に製薬会社のマーケティング、医療機関、大学等研究機関への働きかけの結果である。

  3. 医療機関の医師や大学教授は、皆製薬会社にお世話になっており、製薬会社の言いなりになっている部分が多い。

  4. FDAが提出を義務付けている効能テストも、既存医薬品との比較を提出させるべきである。

  5. また、FDAの諮問委員18人のうち、多くが製薬会社から資金的な援助を受けている。FDAの独立性を高めるべきである。

  6. 国民は、医者に対して、「効果があることが証明できるのか」、「どうしてその医薬品が効果があるのか」、「どうして安い薬ではだめなのか」、「本当に投薬が必要なのか」と質問することで、医者の対応も変わってくるだろう。
要するに、医薬関係者はすべて製薬会社の息がかかっているのだから、医薬品価格の高騰を抑えるのも、正しい医薬品の選択をするのにも、国民が意識を高めるしかないのだ、と主張しているのである。なかなか痛烈な批判である。彼女は言及していないが、もちろん、政治家も同様なのであろう。まあ、日本でも同じような状況であることに違いはない。

8月9日(2) 大企業の年金積立 Source : Pension Plan Funding Regains Some Lost Ground (Watson Wyatt)

最近、DBプランについて、あまりいいことはないが、久々に明るい要素が出てきた。大企業の積立状況が改善しているという。

上記sourceは、Fortune 1000でDBを有する企業622社について調査した結果であり、その概要は、次の通り。
  1. 積立比率は、2002年82%から2003年88%に改善している。(積立比率=年金資産価値/累積給付債務)

  2. この1年間で、給付債務は$125B、約11%増加した。他方、資産は、$172.4B、約18%増加した。

  3. 積立比率改善の要因は、投資効率の改善と事業主拠出の増加である。

    Fiscal Year

    Employer Contributions (billions)

    2003

    $71.6

    2002

    $44.3

    2001

    $14.0

    2000

    $16.2

    1999

    $10.9


  4. ただし、Fortune 1000のうち、DBプランを有する企業は、2000年660社から、2003年622社に減少している。

  5. DBプランの減少を食い止めるためには、年金救済法(「Topics2004年4月7日 年金救済法案は最後の山場」参照)の恒久化と、CBの法的位置付けの明確化(「Topics2004年6月7日 見放されるCash Balance」参照)が不可欠である。

8月9日(1) FASBは強硬姿勢 Source : FASB Holds Firm to Option Expensing Stance (PLANSPONSOR.com)

ストック・オプション(SO)会計を巡って注目されているFASBだが、従来の主張であるSOの費用化については、強硬姿勢を貫く考えのようだ。公開ヒアリングやパブリック・コメントで、多数の反対意見が示されたものの、8月4日に開催されたFASB会合では、スケジュール通り、今年12月末の適用に向けて、着々と手順を踏んでいくとの考えを示したそうだ。

連邦下院での法案可決(「Topics2004年7月21日 ストック・オプション会計法案 下院で成立」参照)や、企業の強い反対を受けて、一時は、適用時期の延期を提案するのではないか、との噂もあったらしい。しかし、連邦上院では同様の法案を可決する目途は立っておらず、FASBとしては、『このまま夏休みを経て、大統領選に突入すれば、SO会計が政治課題にのぼることはない』との見切りをつけたのだろう。

8月8日 Enron vs PBGC
Sources
Statement of PBGC Executive Director Bradley D. Belt on Enron (PBGC)
Enron Tries to Block Pension Takeover Bid (AP)
Enron Battles Agency Over Funding Of Pensions (Washington Post)
Enron Sues Pension Agency (LA Times)
やはり、EnronのDBは、未決着だったようだ(「Topics2004年8月4日 EnronのDBの行方」参照)。

断片的な情報しか集められていないので、全体像がよく把握できていないが、上記sourcesを総合してみると、どうも次のようなことになっているようだ。
  1. PBGCは、NY破産裁判所に対し、Enronの再建計画に反対の意思表明を行った。また、Enronの4つのDBを引き取りたいとの意向も示した。同時に、6月、同様の要求行うため、PBGCはTexas州連邦地方裁判所に訴訟を起こした。

  2. 7月15日、NY破産裁判所がEnronの再建計画を承認した(「Topics2004年7月17日 Enron終焉」参照)。この計画では、PBGCの主張は採用されなかった。

  3. 再建計画では、Enronは、4つのDBプランを終了させ、民間保険会社に必要となる資金を拠出して、給付債務の履行を果たす予定にしている。

  4. 他方、Texas州連邦地方裁判所での訴訟は継続している。PBGCは、5つのDBプランの引取りを要求しており、それに必要なEnronからの提供資産は、$321.8Bとしている。この金額は、Enronが民間保険会社に拠出する予定の金額を大幅に上回っている。

  5. Enronの立場からすると、NY破産裁判所から再建計画の承認をもらったものの、Texasでの訴訟の決着がつかないと、再建計画の履行に移れない。

  6. そこで、EnronがNY破産裁判所に、Texasでの係争の中止を求めた。

  7. こうしたEnronの係争中止を求める訴えに対して、PBGCが上記sourceにある声明を発表した。そのポイントは次の3点。
    1. EnronのDB終了計画は理想的である。
    2. しかし、Enronは、その計画履行に向けた努力を怠っている(真に必要となる資金を確保しようとしていない)。
    3. PBGCとしては、Enronに対して不信感を抱いている。EnronがNY破産裁判所に出した訴えは、Enronの不誠実さの現れである。
PBGCとしては、固めの予測値をもとに必要資産を算出するだろう。そのために、Enron側の試算を超える結果になっていることは、容易に想像できる。しかし、民間保険会社に移行して給付債務を履行できるとしているEnronも、譲れないところである。しかも、他の債権者との合意もある。どちらもなかなか譲歩できまい。

ポイントとなるのは、民間保険会社が、Enronの試算で必要な給付債務を履行できると納得しているかどうかだろう。もし、納得できていない、一時金払いですべて清算、と考えているなら、PBGCに分がある。反対に、保険会社が納得しているなら、PBGCの年金債務引継ぎは、無駄な資金が必要になるということになり、Enronに分がある。

8月7日 残業代を勤務時間で振替 Source : America's Workforce: Ready for the 21st Century (The White House)

Bush大統領から、残業代を勤務時間で振り替えてはどうか、との提案が行われた。The Fair Labor Standards Act of 1938 (FLSA)により、週40時間を超えた勤務に対しては、通常勤務の1.5倍の時給を支払わなければならない。Bush大統領は、従業員の選択により、超過勤務時間に対して、1.5倍の時給を受け取る代わりに、1.5倍の勤務時間短縮を可能にするための法制化を、議会に求める事とした。

例えば、ある週に8時間の超過勤務をした場合、従業員は、「1.5倍の時給×8時間」の残業代、「8時間の勤務時間短縮(週32時間勤務)」のいずれかを選択できるようにする、というわけだ。

Bush大統領の提案の概要は、次の通り。
  1. FLSAでは、民間企業の従業員にはcomp-time、flex-timeが認められていないが、政府職員には認められている。2001年、連邦政府職員の34.4%、地方政府職員の29.7%が選択している。民間企業従業員にも、両制度を認めるよう、法改正を行う。

  2. Comp-time:残業代と勤務時間短縮の選択制

  3. Flex-time:週単位を超えた勤務時間調整(例えば、2週間で80時間)
こうした提案をBush大統領が行った狙いは、次の2点と言われている。
  1. 中小企業の資金繰りを緩和する。
  2. 働く母親を支援する。
実際、FLSAが制定されてから現在に至るまでの間に、親の働き方は大きく変わっている。 つまり、働く母親が多数を占めており、勤務時間の柔軟化を図ることで、家族との時間の共有、子供の学校行事への参加などが可能となる訳である。一日単位のflex-timeを週単位に拡大すると考えてもよい。

こうした大統領提案に対して、民主党、労働組合は、「超過勤務手当てを廃止しようとする狙い」、「選択制と言いながら、時間での調整を強制される」と批判している(The Los Angeles Times)。実際、タイムカード、勤務記録の改ざんによって、超過勤務手当の支払を回避しようとする、悪質な事例が後を絶たないような状況(The New York Times)では、こうした批判もある程度理解できる。

しかし、おそらく、一般の女性勤労者は、望ましい提案と受け止めると思われる。いや、どちらかと言えば、民主党側から提案があってもよいような内容ではないだろうか。

8月6日(2) 同性婚:ミズーリ州とワシントン州 
Source : Message of Voters in Missouri Against Gay Marriage Leaves Backers Discouraged (New York Times)Judge Backs Same-Sex Marriage (LA Times)

今週、同性婚に関して、2つの州で動きがあった。

まず、ミズーリ州(中西部)。同州では、8月3日に、予備選挙が行われた。それと並行して、州憲法改正に関する州民投票も行われた。

ミズーリ州では、法律で同性婚を禁じている(「Topics2004年6月30日 同性婚を巡る州レベルのせめぎあい」参照)が、州憲法においても同性婚を禁止するよう改正するとの提案である。

結果は、賛成70.7%、反対29.3%と、圧倒的多数で憲法改正案が支持された。

今回の州民投票は、共和党支持者達が州民投票に付すべきと訴えていたのに対して、Blunt知事(民主党)が大統領選時まで延期しようとしていた。これを、州最高裁が、「3日の予備選時に実施すべきであり、知事の判断による延期は認めない」との判決を下したために実現した。

今回の州民投票の結果は、次の3点で注目される。
  1. 賛成が70%を超えた。事前の予想では、せいぜい60%程度と見られていたのが、予想外の大差がついた。

  2. 投票率が41%に達した。同州予備選の過去の投票率は、1998年15%、2000年22%、2002年25.4%に過ぎない。同性婚に対する州民の関心の高さが伺われる。

  3. 大統領選に関して、同州はswing state(趨勢が固まっていない州)と見られている。New York Timesの分析(2004 Election Guide)によれば、現時点で、17州がswing statesとなっており、代議員数の割合で言えば約3分の1(=180/538)にあたる。同州の代議員数は、11とわずかだが、マサチューセッツ州の判決(2003年11月)以降、全米で最初の州民投票であるだけに、その結果が注目されていた。また、11月には、最低でも8州、最大で11州において、同様の州民投票が行われるとみられており、それらへの影響も大きい。
こうした点を踏まえると、アメリカ国民の同性婚に対する感触が、大統領選に与える影響は大きいと判断しておいてよさそうである。

もう一つは、ワシントン州(太平洋岸)。こちらでは、8月4日、州高等裁判所の判事が、「同性婚を禁じている州法は州憲法違反である」との判決を下した。本件は、州最高裁判所で判断されることになると見られるが、この判決の与える影響は大きい。

実は、マサチューセッツ州は、Romney知事(共和党)の主導により、同性婚を認めていない州の州民については、マサチューセッツ州内での婚姻を禁止してしまったのである。つまり、現時点では、マサチューセッツ州に居住している場合だけ認められている状態なのである。ところが、ワシントン州の場合には、州民であるかどうかは要件となっていないため、もし州最高裁で同性婚が認められれば、全米から同性婚を求めるカップルが怒涛のごとく流入してくるとみられる。

ちなみに、ワシントン州もswing state(代議員数は11)である。また、州知事は民主党であるが、引退を表明している。後任については、両党とも候補者を決定しておらず、見通しは立っていない。

こうしてみると、「州憲法の改正」対「州裁判所」によるオセロ・ゲームという構図が浮かび上がってくる。州裁判所レベルでの判断は、最高裁まで行くのに時間はかかる。しかし、州憲法改正の手続きの長さに較べれば、それでも短い。裁判所レベルで同性婚を認める判断が続けば、一気に大勢が決する可能性がある。他方、州憲法で同性婚を禁止すれば、裁判所はそれに従って判断せざるを得なくなることから、州憲法改正の方が強力である。そこに、11月の大統領選が絡んでくる。時間と力の争いだ。

8月6日(1) 航空会社の年金積立不足 Source : UAL Pensions Issue Has Big Implications (Reuters)

UALが企業年金への拠出を停止した件は、当websiteでも2回取り上げた(「Topics2004年7月15日(2) UALが年金拠出を延期」「Topics2004年7月26日 UALの年金拠出停止」参照)。そこでは、他の航空会社の年金プラン(DB)にも影響を及ぼすとの見込みを紹介した。

それに関連して、上記sourceでは、航空各社のDBプランの積立不足額が紹介されている。出典は、Fitch Ratingsという格付会社である。

規模会社名積立不足額
1位American Airlines
$2.7B
2位United Airlines
$6.2B
3位Delta Air Lines
$5.7B
4位Continental Airlines
$1.1B
5位Northwest Airlines
$3.7B
7位US Airways
-
(パイロット年金廃止)

UALがDBプランを廃止すれば、同業他社にとってどれだけ大きなインパクトをもたらすかは、一目瞭然であり、だからこそ、PBGCも黙っていられないということなのだろう。また、こうした見込みがあるため、UALが拠出停止を決定した直後、PBGCはUALに対して質問状を送付し、
  1. 再建計画の中で、積立不足はどのように解消していく予定なのか
  2. もし、年金プランを廃止するつもりなら、早急に告知すべきではないか
という2点についての説明を求めている。ただし、両者のwebsiteを見る限り、まだ直接会談が行われた形跡はない。

8月5日 医療保険加入状況の変化 Source : Trends in U.S. Health Insurance Coverage, 2001-2003 (Center for Studying Health System Change)

医療保険の加入状況が、2001年から2003年の2年間で変化を見せている。上記sourceのポイントは、次の通り。
  1. 企業が提供する医療保険でカバーされる国民の割合が低下。
  2. 代わりに、公的医療保険(Medicaid、SCHIP)のカバー率が高まっている。
  3. その結果、全体の無保険者率は、顕著に高まることはなかった。
  4. 企業医療保険のカバー率が低下した理由として、@景気後退に伴って企業の医療保険提供が減少した、A保険料が高騰した、の2点が挙げられる。
  5. 医療コストの抑制、本格的な無保険者対策が講じられなければ、企業医療保険のカバー率は長期的に低策する可能性が高い。
私としては、従業員の負担力も重要と考える。企業が医療保険を提供し続けてはいるものの、従業員に従来以上のコスト負担を求める傾向が強まっている。そうなれば、企業は提供しているものの、従業員が加入を選択しない、または加入する家族の人数を抑制する、といった事態が多発する可能性も高まる。

そうした事態を回避する策の一つが、HSAの普及である事は間違いない(「Topics2004年7月29日 HSA税制が確定」参照)。動向が注目されるところである。

8月4日 EnronのDBの行方 Source : PBGC Takes Step to Protect Participants in Enron's Underfunded Defined Benefit Pension Plans (PBGC)

NYの破産裁判所が再建計画を承認したことで、Enron事件は一段落、と思ってしまった(「Topics2004年7月17日 Enron終焉」参照)が、当websiteとしては肝心な案件を忘れていたことに気付いた。EnronのDBプランに関する処理について、決定したとの情報がないのである。正確に言うと、私自身で確認が取れていないのである。

メディア的には、自社株が大きな割合で入っていたDCプランが有名だが、Enronには、DBプランもあった(「Topics2002年3月4日 Enron確定給付年金もめちゃくちゃ」参照)。しかも、積立不足が$125Mにのぼると推計されていた。

Enron再建計画の最終の詰めが行われていた、6月3日、PBGCは、上記sourceに記されている通り、破産裁判所に対して、意見書を提出した。そのポイントは、次の3点。
  1. Enronの再建計画は、EnronのDBプランを継続するには不適切な内容となっている。
  2. 受給権が発生した給付債務を賄うだけの充分な資産が、Enronには残されている。
  3. PBGCがEnronのDBプランを引き取らなくてもよいよう、Enronの債権者に資産が配賦される前に、年金プランに資産を充てるべきである。
その1ヶ月後、破産裁判所が再建プラン(2004年7月15日破産裁判所承認)を承認したわけだが、その中に、
  1. 債務者(Enron)は、全てのBenefit Plan(当然DBプランも含まれる)について、終了する権利を有する。(P.103)
  2. 債務者は、給付債務を満たすために、$200Mを第三者に寄託する。(P.111)
とある。

金額的にも、内容的にも、DBの積立不足に充分見合う資産が確保されているように思えるのだが、Enronのプレス・リリースにも、PBGCのプレス・リリースにも、マスコミ報道にも、この点に関する言及が見られない。

もし、顛末についてご存知の方がいらっしゃれば、是非教えてください。お願いします。

なお、参考までに、Enron事件の「現在・過去・未来」を知るためのwebsiteを列挙しておく。

Enron-Watching Sites
Enron
Enron社のwebsite。同社のプレス・リリースや、破産裁判所関連の情報が掲載されている。
FindLaw
Enron関連のニュース、文書、裁判所の動向を、法律関係者向けにまとめている。
Washington Post
Enron関連のニュース並びにアーカイブ、年表などが掲載されている。
PBGC
DBの積立不足や支払保証制度について権限を有する。

8月3日 Deltaに飛び火 Source : Delta Wants $1 Billion in Wage and Benefit Cuts From Pilots (The New York Times)

UALの年金問題が、Delta航空にも飛び火したようだ。上記sourceによれば、会社側は、業績の悪化に対応するため、35%の給与カットを含む、$1.02B/Yの報酬縮減を提案したようだ。組合側は、規模は了解していないものの、ある程度の譲歩は覚悟している。ただ、気になるのは、その見返りに、経営参加を求めている点である。この道筋は、UALが辿ってきた道であり、Deltaが同じ道をとるのか、という感想を持つ。

話を戻して、上述の報酬縮減には、もっとも給付水準の高いパイロットを対象とした年金プランも含まれる可能性が高い。経営側は、UALの動向を充分見据えて対応するとのコメントを述べている。

また、US Airwaysでは、現役、退職者の医療保険プランに関するコストが高騰しているとして、何らかの対応を取りたいとしている。これも、UALの動向が影響しているものと思われる。

ATSBによる信用保証拒否と、UALのPBGCへの安易な依存が、航空業界全体の際限なきコスト削減競争を招いているとも言える。

8月1日 同性婚と年金受給権 Source : The Effect of State-Legalized Same-Sex Marriage on Social Security Benefits and Pensions (CRS)

昨年11月、マサチューセッツ州で、同性婚が州法のレベルで認められたが、これがemployees benefitsにどのように影響していくのかというのが、当websiteの関心テーマである。

数あるemployees benefitsのうち、公的年金、企業年金に関する現行法の解釈について、sourceは記している。その概要は次の通り。

  1. 公的年金を規定しているSocial Security Actでは、性別に基づく受給権の定義をしている。加えて、the Defence of Marriage Act(「Topics2004年2月25日 同性婚に対する現実的な対応」参照)により、結婚の定義が明確している。よって、同性婚に基づくパートナーの受給権が認められることはない。

  2. 企業年金を規定するERISAではspouseと標記されているが、これまた、the Defence of Marriage Actにより、異性のパートナーのみが、受給権の対象となる。しかも、ERISAの場合には、州法の規定は適用されないという条文が予め入っているために、州法に基づく同性婚の効力は認められない。
このように、上記sourceでは、同性婚のパートナーに関する受給権を一蹴しているが、法律の世界では、the Defence of Marriage Actそのものが違憲であるとの意見も根強くあると言われている。もし、同法そのものが違憲となれば、上記sourceのような立論は成り立たなくなるのである。まだまだ、同性婚を巡る議論は長引きそうである。