Topics 2003年11月1日〜10日      前へ     次へ


11月8日(1) クラーク候補の医療改革提案
11月8日(2) IASBとFASB
11月8日(3) 債権者PBGC
11月8日(4) 医療保険の重み


11月8日(1) クラーク候補の医療改革提案 Source : Clark Calls on Bush to Help Unemployed Before Giving Big Tax Breaks to Business

突如、大統領候補者選びに参戦した、Gen. Wesley Clark (D) が、医療政策提言を発表した。

ポイントは、次の通り。

  1. 予防医療に力を入れる。

  2. 3,180万人の無保険者をなくす。特に、1,310万人の子供の無保険者はすべて保険に加入させる。

  3. 具体的には、税額控除と公的医療保障制度を利用できるようにすることで、無保険者をカバーする。
提案内容として、特に目新しいものがあるわけではない。むしろ、既に提案されている、子供と低所得者の無保険者に焦点を当てていることで、陳腐な内容となっている。この候補者の場合、国内政策については、未知数であり、仕方のないところであろう。

11月8日(2) IASBとFASB Source : IASB UPDATE (Octeber 2003)

IASBとFASBが、統合に向けてのミーティングを行っていることは、既に、記したところ(「Topics2003年10月30日 Golden Parachutesの会計処理」参照)だが、IASBがこれまで力を入れて開発してきたプロジェクトに、業績報告というものがある。企業の業績を、期首と期末のストックの比較から示そうというものである。

このプロジェクトについては、世界中から批判が寄せられており、アメリカも例外ではない。実際、上記sourceによれば、双方は全く相容れず、今後も協議を続けていくことだけが合意されたようだ。関連箇所は、以下の通り。
Reporting comprehensive income

The boards discussed their respective projects on reporting comprehensive income (financial performance). They emphasised the importance of convergence on the project and discussed the similarities and differences between both projects. More specifically, the boards discussed the differences in and the theories behind the FASB's and IASB's definitions for the 'business' and 'financing' categories. They discussed the FASB's decision to retain other comprehensive income as required by FASB Statement No. 130, Reporting Comprehensive Income, which the IASB rejected. The Boards discussed issues the FASB still needs to deliberate, including remeasurements, recycling, and earnings per share. The Boards agreed to form a joint working group to research and form recommendations to reduce areas of divergence and develop a timetable for the release of public documents for this project.
今、産みの親であるFASBは、IASBについて、どう考えているのだろう。

11月8日(3) 債権者PBGC Source : US Airways challenges government on pensions (Rueters)

10月27日、US Airwaysが破産裁判所に戻ってきた。

といっても、再びChapter 11に入ったわけではない。US Airwaysは、今年4月にChapter 11から脱却し、通常の経営形態に戻っている(「Topics2003年4月9日(1) US Airwaysの取締役会議長」参照)。

ところが、最大の無担保債権者であるPBGCとの間で、年金ファンド関係の支払額をめぐって、争いが続いているそうだ。Chapter 11脱出時、やはり年金問題がなかなか決着せず、最終段階までもつれにもつれたが、最終的には決着し、そのおかげでUS Airwaysは、Chapter 11から脱出できたのだ(「Topics2003年3月29日(1) US Airwaysパイロット年金が決着」参照)。

しかし、当時、決着したのは、経営者側とパイロット等の従業員の間で、年金プランを終了してPBGCに引き継ぐということが決まっただけだったのだ。

上記sourceによれば、PBGCにプランを引き継ぐことは決まったものの、どこまでUS Airways側が穴埋めをして引き継ぐか、という点について、PBGCとの間で合意に至っていない。というよりも、双方が主張する金額が、大きくかけ離れているとのことだ。

PBGCは、年金プランが保有していた資産$1.2Bに加えて、さらに$2.2BをUS Airwaysが負担すべきとしている。一方、US Airways側は、追加負担は$894Mが適切と主張しており、双方の主張の差額は、$1.3Bに達する。

このように大きな隔たりが生じた主な要因は、予定利率の見積もりの差にある。PBGCは、予定利率を5.1%と置いているのに対し、US Airwaysは8%と置いている。これだけ予定利率に乖離があれば、主張の隔たりが大きくなっても仕方ないだろう。どちらの主張が適切かをめぐって、再び両者は破産裁判所に立つことになったのである。

これによって、大いに迷惑を被るのが、他の無担保債権者である。どのような結論が出ても、US AirwaysからPBGCに支払われる額は、同社の株式によって行われると見られている。一度Chapter 11に入った会社の株式だから、今後の上昇を織り込むことになろうが、それでも大切な財産である。裁判所の判定で、PBGCが大きく獲得すれば、その分、その他の無担保債権者の取り分は減少せざるを得ない。

当websiteでは、まさしく、このような事態が発生することを懸念していた(「Topics2002年12月17日 いよいよ始まったUAL債権者会議」参照)。PBGCは、企業の再生そのものよりも、年金プランの引継ぎに必要な資産の確保に関心があるはずだ。まして、PBGC自身が火の車になりつつある厳しい状況(「Topics2003年2月4日(1) PBGC保険料の見直しか?」参照)では、その姿勢は明白だ。

さらに、興味深いのは、再建後のUS Airwaysの、最大株主は、やはり年金ファンド、アラバマ州職員退職基金(RSA)なのである(「Topics2003年4月9日(1) US Airwaysの取締役会議長」参照)。つまりは、PBGCとRSAの争いなのである。US Airwaysは、いつまでたっても、年金プランに関する様々な話題を提供してくれる。

11月8日(4) 医療保険の重み Source : Studies reveal conflicting trends among wages, benefits (Employee Benefit News)

最近、賃金とベネフィット(福利厚生)に関する調査が、いくつか公表されたそうだ。それらのポイントをまとめておくと、次のようになる。

  1. The National Federation of Independent Business (NFIB)

    中小企業の経営者を対象に、「今、1ドルを従業員報酬に上乗せするとしたら、何にするか」と質問したところ、
    約3/4・・・・給与
    5.2%・・・・・有給休暇
    4.7%・・・・・医療保険プラン
    2.4%・・・・・年金プラン
    との結果となった。これは、中小企業の経営者が、従業員の要望をよく理解している結果でもある。実際、中小企業の従業員に質問をしたところ、
    82%・・・給与
    4%・・・・医療保険プラン
    1%以下・・・年金プラン
    となっている。

  2. Consortium Health Plans

    就職を決めた要因、または現職にとどまることを決めた要因を従業員に質問したところ、80%が医療保険プランであると回答している。うち、45%が、より総合的な医療保険プランであったことを選んでいる。これは、処方薬が対象となっていることを意味している場合が多い。従業員側がそのような意識を持っているために、医療費が高騰することに対応して、従業員側も、保険料負担等の負担増はやむを得ないと考えている。

  3. Stony Brook University
    医療保険なしの高給よりも、医療保険のある低サラリーを選択する → 71%
    よい医療保険プランが重要である → 73%
    職の安定が重要である → 71% よい年金プランが重要である → 66%
1.の調査は、対象が中小企業であることに留意する必要がある。一般に、中小企業では、ベネフィットに人や管理コストをさけないために、医療保険プラン等を提供したくてもできない場合がある。

このように、何度も繰り返すようだが、アメリカ人にとって関心が高いのは、医療保険プランである。ただし、闇雲に医療保険プランを提供すればよい、というものでもないだろう。たとえば、従業員の構成が非常に若く、専門職中心のような職場では、むしろ高サラリーが好まれることもあるだろう。要は、企業の経営戦略と必要な人材に合わせて報酬制度を組み立てる必要があるということだ。

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