3月20日 PPACAと企業提供プラン 
Source :CBO: Health reform hits coverage (POLITICO)
CBOが、医療保険改革法に伴う医療保険プランの加入状況について、推計を示した。今回の特徴は、シナリオ別に推計値を示しているところである。

そのシナリオとは、次の通り。 結果は次の通り。



当たり前のことだが、企業がプラン提供に消極的なればなるほど、Exchangeの利用者が増える。ただし、企業が消極的であっても財政への影響は少ない。企業が負担するペナルティが増えるからだ。

連邦議会共和党議員は、この推計、特にシナリオ3を捕らえて、『Obama大統領が医療保険改革法は既加入者に影響を与えないと訴えていたのはウソだった』と批判している。しかし、重要なのは、企業がどのように対応したとしても、Exchangeがちゃんと機能すれば無保険者は確実に減る、という点である。逆に言えば、Exchangeが機能しなければ、壊滅的な事態に陥る可能性があるということだ。

今月12日、HHSExchangeに関する最終ルールを公表したようだが、これに基づいて各州または連邦政府がしっかりとExchangeを創設できるかどうか、今後の動きを注視していきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月19日 自発的離職が増えない 
Source :Low level of voluntary quits should temper recent optimism about the labor market (EPI)
薄日が射し始めた労働市場だが、まだまだ楽観論は広がらない。その要素の一つが、自発的な離職が増えていないことである。

上図からもわかるように、景気後退期に一気に減少した後、なかなか回復せず、横ばい状態が続いている。自発的に離職しようとしても、経営者の雇用への態度はなかなか厳しいものがあり、採用の眼もかなりシビアである。そんな中、簡単に次の職が見つかる可能性は低く、報酬面でのステップアップにつながる可能性が低い。

こうした状況を受けて、賃金の伸び率は極めて低い水準となっている。こちらは、まったく上昇する気配すら見せていない。企業側は賃上げをする必要がないのである。
マクロの労働市場は明るさを取り戻しつつあるものの、労働者個人にとって感じる厳しさは、まだまだ続きそうである。

※ 参考テーマ「労働市場

3月18日 NY州公務員年金改正法成立 
Source :Governor Cuomo Signs Law to Enact Major Pension Reform (Press Release)
一旦は「先送り」と紹介したNY州公務員年金改革だが、結局、州知事と州議会の間で合意が成立し、16日、関連改正法が成立した。15日の夜から16日午前中まで、州議会では相当いろいろなことが起きたようだ(New York Times)。

主なポイントは次の通り。
  1. 全ての制度改正の対象者は、2012年4月1日以降の新規採用者のみ。現職者の給付は一切変更しない。

  2. 適格退職年齢を62歳から63歳に引き上げる。

  3. 乗率を改定する。

  4. 受給権は就職後10年間勤務の後に賦与する。

  5. 算定基礎となる最終報酬を最終3年間から5年間に延長する。

  6. 年収$75,000以上の職員については、任意にDCプランを選択できるようにする。

  7. 病欠日の算入を制限する。

  8. 州知事以上の報酬を得ている職員には年金を給付しない。、

  9. 以上の改革により、今後30年間で$80B以上の歳出削減が可能となる。
NYT紙がこれでもしょうがないか、と評価していた知事案よりも、さらに後退している。要するに、労組、現役職員に配慮した、まったく大甘の改正なのである。『改革』の名には値せず、『改正』、『修正』と呼ぶべきだろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月17日 学生が怒っている 
Source :Student anger over education cuts puts heat on lawmakers (Los Angeles Times)
In Elk Grove, and around state, students protest budget cuts (Sacramento Bee)
CA州の財政赤字は、年金プランばかりに圧力を加えているわけではない。学校にも暗い影を落としている。そして、州政府による教育支出の削減に学生達が怒っている。

まず、大学生。州立大学に対する政府支出が削られているため、学生の授業料負担が重くなっている。上記sourceによれば、この10年間で州立大学に対する州政府支出は42%減少している。このため、州立大学の収入源は、初めて授業料収入が州政府支出を上回った。こうした事態に大学生達が怒っている。

一方、小学生。といっても小学生の親達だが・・・。こちらは、小学校教員の人件費を削減するため、教員のレイオフ+クラス人数の増加、という措置を取っている。親達は教育の質が低下すると怒っているのである。

財政健全化は厳しい。これまで享受していた公的サービスやベネフィットを削られたり、対価が高くなったりする。質も低下する。それでもやらなければ、次世代の人たちはもっと低いサービスしか受けられなくなる。これを理解できるかどうかが分かれ目である。

※ 参考テーマ「教 育

3月16日 MA州:総合型のDCプラン 
Source :An Act to provide retirement options for nonprofit organizations (H.3754)
MA州議会は、州財務長官に、総合型のDCプランの設置権限を与える法案を審議してきた。総合型とは、複数の事業主の参加とその従業員の加入を認めるもので、今回の法案では、非営利団体の参加及びその従業員の加入を認める。

3月12日までにMA州議会で同法案を可決し、現在、州知事に送付されている。州知事は今月22日に署名を予定している。

今回は非営利団体に限定されているようだが、将来的には、自営業者、小規模企業、公務員の参加・加入も可能性があるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

3月15日 予定利率のささやかな引き下げ:CalPERS 
Source :CalPERS could boost annual California pension bill by $425 million (Sacramento Bee)
13日、CalPERSは、予定利率の引き下げを決定、公表した(Press Release)。最終的には14日の理事会で正式決定する。

  1. 予定利率を引き下げる:7.75%⇒7.5%
    内 訳
     ○物価上昇率:3%⇒2.75%
     ○実質投資利益率:4.75%で据え置き

  2. 州の負担増:$303M
    内 訳
     ○州政府一般財源:$167M
     ○学区域:$137M
ところが、この決定の前にリリースされた地元紙Sacramento Beeの記事(上記source)によると、この予定利率引き下げ決定までの過程で、さらなる引き下げ案も検討されていた。そのことはCalPERSのPress Releaseでも触れているが、それに伴う負担額については言及していない。

上記sourceによる情報は次の通り。
  1. 予定利率を0.5%引き下げる案(7.25%)と0.25%引き下げる案(7.5%)が検討されていた。それに伴う負担増は次の通り。
    予定利率負担増総額州政府一般財源学 区 域
    7.25%$764$425M$339M
    7.5%$303$167M$137M
  2. 過去20年の投資利益率は年平均8.4%であったが、2011年だけでみると1.1%しかない。
しかも、FRBは超低金利政策をしばらく継続するとみられている。抜本的な予定利率見直しがなければ、潜在的な給付債務超過がどんどん拡大していくことは明白だ。

こうしてみると、今回の予定利率の引き下げ幅はいかにささやかなものであったかがわかる。しかし、州政府の巨額の債務残高($9.2B)を前に、とても予定利率の大幅引き下げ(=州の大幅負担増)はできない。おそらく、州政府議会から相当の圧力がかかったのだろう。ちなみに、CA州の知事、議会上下両院とも民主党が握っている。

こうして、州公務員年金は蝕まれていくのである。得意(?)の年金基金のガバナンスはどこにいってしまったのだろうか。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月14日 NY州議会:年金改革を先送り 
Source :Cuomo’s Pension Plan Rejected by New York Assembly Democrats (Bloomberg)
NY Times紙が、「仕方ないだろう」と評価していたNY州公務員年金改革案(「Topics2012年3月7日 NY州公務員年金の課題解決策」参照)だが、州議会民主党は拒否した模様だ。

Cuomo州知事は、4月から始まる新年度予算案と一緒に年金改革案を審議してもらいたいとの意向であったが、NY州議会民主党は、これを分けて審議することとし、年金改革案の結論を先送りした。

Cuomo州知事は、行政サービスの停止、またはレイオフを示唆している。いよいよ、NY州の自治体は、厳しい選択を迫られつつある。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月13日 NY州自治体の窮状 
Source :Deficits Push N.Y. Cities and Counties to Desperation (New York Times)
以前、NY州公務員年金プランについて紹介したが、それらを運営する自治体は大変苦しい状況に陥っている(「Topics2012年3月7日 NY州公務員年金の課題解決策」参照)。
Rockland County小売税の税率引き上げを担保に債券を発行したい。
Suffolk County今後3年間で$530Mの財政赤字を見込んでおり、緊急事態宣言をした。
Nassau County既に財政難に陥っており、昨年から州監視委員会の管理下にある。
NY City年間の年金プラン拠出金は、この10年間で$1.5Bから$8Bに膨れ上がった。
Rochester City財政破綻直前にあり、州監視委員会の管理は避けられない。
さらに、自治体は、Medicaidなどの医療関連支出も膨らんでいて、財政収支改善のためには、相当な歳出カットと増税が必要となる。

アメリカ経済全体では薄日が射しつつあるが、州政府等の自治体では、まだまだ厳しい状況が続いている。

※ 参考テーマ「地方政府年金