1月8日 失業率は下がったけれど 
Source :Unemployment rate drops to 9.4%, but analysts find little to cheer (Los Angeles Times)
7日、DOLが公表した昨年12月の失業率は9.4%と、11月よりも0.4%低下した。しかし、その評価はあまり芳しくない。
  1. 失業率は0.4%低下した。
  2. 労働力人口は26万人減少した。
  3. 非農業雇用者数は10.3万人増加した。うち、民間は11.3万人増加したが、公的部門は1万人減少した。
つまり、労働市場から退出した人が増えたうえに、民間の雇用力がそれほど高まっているわけではない。加えて、公的部門の削減圧力が徐々に高まっていることが窺えるからだ。

こうした実感を裏付けるのが、「実感失業率」である。
公式の失業率が徐々に下がっているのに対し、「実感−公式」つまり不本意な就労または退出が若干増加傾向にあるように見えるのである。こうした状況では、労働市場が明るさを増しているとはなかなか言えないのであろう。

※ 参考テーマ「労働市場

1月7日 医療保険改革法廃止法案(2) 
Source :CBO’s Preliminary Analysis of H.R. 2, the Repealing the Job-Killing Health Care Law Act (CBO)
5日、連邦議会下院に医療保険改革法廃止法案が提出された(「Topics2011年1月5日 医療保険改革法廃止法案」参照)。その名もずばり、"Repealing the Job-Killing Health Care Law Act"(H.R.2)である。"Job-Killing"に共和党下院議員の思いが込められているのだろう。

同法案の内容も、極めてシンプルで、昨年3月に成立した医療保険改革関連二法に伴う制度変更を元に戻す、というものである。これだけの文章で広報効果は抜群に高い、いわば費用対効果に優れた法案と言える。

ただし、実質的な代償は大きい。
  1. 財政赤字拡大幅(総額):2012〜2019年で$145B、2012〜2021年で$230B。

  2. 無保険者数:2019年時点で、医療保険改革法施行に伴う推定から3,200万人増え、5,400万人となる。

  3. 無保険者割合:2019年時点で、医療保険改革法施行に伴う推定である6%から、現時点と同じ17%に上昇する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月6日 VT州の挑戦:single-payer 
Source :Shumlin names health care “dream team” (PNHP)
Shumlin appoints Steve Kimbell to lead BISHCA (Vermont Business Magazine)
Vermont: Creating a singular health system (The Boston Globe)

先の中間選挙で、VT州知事にはPeter Shumlin氏(D)が選出された。同氏は、知事選キャンペーンで、医療保険改革を強く訴えていた。その柱は次の通りである。 中でも注目されているのが、単一保険制度(a single payer system)である。これは、今までのMA州や連邦政府の改革で試みられた加入義務付けとは異なるアプローチである。

また、選挙で勝利した後、同氏は、これらの医療保険改革を実現するためのチームを結成、公表している。

この中ではWallack氏がリーダー格となると見られている。同氏はVT州の医療保険ばかりでなく、MA州の医療保険改革についても熟知しており、医療保険行政のスペシャリストだそうだ。Shumlin州知事が提唱している単一保険制度(a single payer system)は、Wallack氏のもとで検討されていくことになる。

単一保険制度(a single payer system)については、一般的に次のようなメリットと課題が想定されている。 このように、解決すべき課題はいずれも大変重いものである。にもかかわらず、Shumlin州知事とWallack氏が単一保険制度(a single payer system)を目指すのは、MA州の改革でも連邦政府の改革でも、医療費の抑制は見込めない、という思いが強いからである。

また、両氏を取り巻くVT州の政治的環境も恵まれている。第一に、州知事が民主党に代わり、州議会も上下両院とも圧倒的に民主党が優勢となっている。第二に、もともとリベラルな気風が強く、州議会が同性婚を合法化したのはVT州が初めてであった(「Topics2009年4月8日 同性婚は東海岸へ」参照)。第三に、無保険者割合が11%(65歳未満)と、MA州、HI州に次いで、全米で三番目に低い

※ 参考テーマ「無保険者対策/その他州

1月5日 医療保険改革法廃止法案 
Source :Jan. 12 Is the Date for Health-Law Repeal Vote (Wall Street Journal)
共和党が多数を取った連邦議会下院で、12日、医療保険改革法の廃止法案について投票が行われる予定だそうだ。医療保険改革法を"repeal"するといって選挙を戦ってきた共和党下院議員達の意気込みを見せようということである。意気込みを見せるだけ、というのは、"replace"の内容を示していないことによる。

これを迎え撃つ民主党は、「せっかくなくした"douoghnut hole"を復活させるのか」と共和党提案を非難している。

間違いなく党派別の投票となり、下院で可決されるものの上院で否決される、というシナリオである。

第2ラウンド以降は、保険非加入に対するペナルティの縮小・廃止、Medicaid拡充の停止など、様々な改革施行阻止法案を共和党が繰り出してくる見込みだ。パーツに分けられると民主党の上院議員が賛成に回る可能性も出てくる。まだまだ医療保険改革を巡る議論が続きそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月4日 労組への逆風 
Source :States Seek Laws to Curb Power of Unions (New York Times)
州政府の財政赤字、職員年金、医療保険プラン等々で、労組、特に自治体労組への風当たりが強まっている。加えて、先の中間選挙で、州知事、州議会が共和党のコントロール下になったところが増えていることも、逆風を促している。

上記sourceでは、労組への逆風について、事例を紹介している。 そして、労組関係者が最も警戒しているのが、"right-to-work laws"の導入である(拙稿「アメリカの労働組合の現状」(2002年12月12日)参照)。アメリカの労働法制では、"closed shop"は違法とされているものの、"union shop"、"agency shop"は認められている。ただし、個別州法により、"union shop"、"agency shop"を違法とし、"open shop"のみを合法とすることを認めている。この、個別州法で"open shop"のみを合法とする法制を"right-to-work laws"と呼んでいる。ちなみに、連邦政府職員の労組は"open shop"となっている。

現在、"right-to-work laws"を導入している州は22ある。上記sourceによれば、Indiana, Maine, Missouriを含めた10の州で、同法の導入を提案する動きがあるという。これが導入されると、労組は、
  1. 労組加入の強制力を失い、組織率が低下する
  2. 労組参加費の拠出を強制できないため、資金源が細る
という二重の打撃を受けることになる。

労組が全面的に支援したObama政権のもとで、労組の弱体化が進められかねない状況になっているのである。

※ 参考テーマ「労働組合

1月2日 移民政策変更は州レベルへ 
Source :Immigration Battle Shifts to States With Wave of Bills (New York Times)
連邦議会レベルでの移民政策の見直しが頓挫し、加えて、州議会レベルで共和党が圧勝したこともあり、移民政策の議論の舞台は州レベルに移りつつある。上記sourceによれば、少なくともGeorgia, Mississippi, Nebraska, Oklahoma, Pennsylvania, South Carolinaなどの州議会で、移民政策見直しのための法案が提出されると見られている。

それらの法案は、"Arizona Plus"と総称されている。既に成立したArizona州法と同様の内容に加え、さらに移民取締りを強化しようという項目が含まれているのが特徴だ。

例えば、Oklahomaでは、不法移民を移動させたり匿ったりするのに利用された乗り物を確保できるようにすることが検討されている。また、Georgia州では、不法移民の学生については公立大学への入学を認めない方針が検討されている。Kansas州では、選挙投票者のアメリカ市民権を確認するよう求めようとしている。

そして最も議論を呼びそうなのが、Arizona, Oklahoma, Missouri, Pennsylvaniaなどで検討されている政策で、『これらの州内で不法移民の子が生まれたとしても、その子にアメリカ市民権を賦与しない』というものである。これには、連邦憲法に真っ向から違反する、との意見が早くも出されており、大きな論争に発展しそうである。

もう一つ、こうした動きに強く反発しそうなのが、農業を中心とした企業経営者である。その多くは実際に不法移民を雇用しており、移民の取り締まり強化には一貫して反対している。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

1月1日 Pittsburgh市議会案で決定 
Source :Council overrides mayor's veto; pension bailout becomes law (Pittsburgh Post-Gazette)
注目されていたPittsburgh Cityの職員年金で、市議会の救済案で決定となった(「Topics2010年12月31日 深刻な自治体年金問題」参照)。

PA州への強制移管を回避するための年金救済策について市長と市議会が争っていたが、最終的には市議会案で決着した。ポイントは次の通り。 市長は即座に拒否権を発動したものの、市議会が再度可決したために、市議会案が最終決定となった。上記sourceによれば、市長には10日間の考慮期間が与えられていたが、即座に拒否権を発動し、強制移管の回避に協力したという側面もあるようだ。

あとは、PA州の判断待ちである。将来の収入の繰り入れを約束することで積立比率基準がクリアできているのかどうか、という難しい判断である。結論は今年秋になる。

※ 参考テーマ「地方政府年金