7月31日 AZ州法:一部執行停止 
Source :Federal judge blocks key parts of Arizona immigration law SB 1070 (Washington Post)
28日、連邦地方裁判所は、AZ州不法移民対策法の一部執行停止を命じた。連邦政府側の勝訴である。

主な執行停止対象事項は次の通り(上記sourceより)。

-- "requiring that an officer make a reasonable attempt to determine the immigration status of a person stopped, detained or arrested if there is a reasonable suspicion that the person is unlawfully present in the United States, and requiring verification of the immigration status of any person arrested prior to releasing that person;

-- "creating a crime for the failure to apply for or carry alien registration papers;

-- "creating a crime for an unauthorized alien to solicit, apply for, or perform work;

-- "authorizing the warrantless arrest of a person where there is probable cause to believe the person has committed a public offense that makes the person removable from the United States."

AZ州側は、当然、控訴裁判所に提訴するとしており、決着がつくまでにはまだまだ時間がかかる。

ここで、管理人として初めて気づいたことは、次の事実である(New York Times)。
The mere fact of being present without legal immigration status is a civil violation under federal law, but not a crime.
"Civil violation"と"crime"の違いについて、当方は余り実感を持てないが、アメリカ社会では大事なことなのだろう。

また、タイミングよくCBOから外国人労働者、移民労働者に関するレポートが公表された。
これを見ると、この15年間で、外国人労働者が倍近く、その中でもメキシコその他中米からの外国人労働者は倍以上に増えている。こうした実態が、AZ州法の背景にあることを確認しておきたい。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

7月30日 無保険者割合の地域格差 
Source :Census data reveal broad differences among states in rates of uninsured (Washington Post)
2007年のセンサスが公表され、無保険者割合に、結構な地域格差が存在することがわかった。 それにしても、住民の半分が無保険者という地域は、どういった医療提供体制になっているのだろうか。それとも企業があまりなく、農業などの自営業が多いので、保険の提供元があまりないのだろうか。

と思って、Wikipediaでテキサス州のKenedy County(2000年)を見てみると、 となっており、こんな小さく貧しい郡があるのか、と驚いた次第である。こんなところで保険加入を義務付けても、そう簡単には医療機関にアクセスできないのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

7月27日 USCCの不満 
Source :U.S. Chamber Event Highlights Impact of New Health Care Law (U.S. Chamber of Commerce)
26日、USCC"Behind the Curtain: The Health Care Law’s Impact on Small Business"というシンポジウムを開催し、医療保険改革の施行に対する経済界の不信感を表明した。

USCCが抱いている不信感は、主に次の2点に絞られる。
  1. 医療費を抑制する手段が盛り込まれていない。
  2. 新たなルール作りが政府に委ねられているため、制度の運営が不透明。
いずれも、当websiteで何度も紹介してきた事項である。

そこで、USCCは、www.HealthReformImpacts.comという新しいwebsiteを開設し、医療保険改革が企業にもたらす影響や、医療保険改革の経済的分析やマスコミ論調(マイナス側面を紹介するものが多い)を掲載するとともに、皆で文句を語り合おう、というコーナーも設けている。はっきりいえば、ネガティブ・キャンペーンを暫く(中間選挙まで?)続けますよ、という訳である。

USCCは、経済政策に続いて、医療政策でも『反Obama』の立場を明確にしたことになる(「Topics2010年7月16日 USCCのハードパンチ」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

7月24日(1) "Game the System" 
Source :Massachusetts Shows Federal Reform Headed For Trouble (Kaiser Health News)
Dispatch from Massachusetts: The Individual Mandate Is Working (Kaiser Health News)
実に興味深い二つのコメントである。同じ日の同じメディアに、MA州の医療保険加入義務を巡って真っ向から対立する見解を掲載しているのである。

前者の著者は、Grace-Marie Turnerで、The Galen Institute (a non-profit research organization focused on patient-centered health reform)の会長である。また、後者の著者は、Austin Fraktで、ボストン大学の医療経済学の准教授(Health economist and an Assistant Professor of Health Policy and Management at Boston University's School of Public Health)である。

二人は、共にMA州の医療保険改革のうち、個人の加入義務規定についてコメントしているが、Ms. Turnerはこれが大変な間違いだったから連邦政府の医療保険改革も大問題が発生する、と主張している。他方、Mr. Fraktは、MA州の個人加入義務規定はうまく回っているので、連邦政府の改革も成功する、と主張している。

二人の主張のポイントを比較してみると、次のようになる。
Grace-Marie TurnerAustin Frakt
保険規制強化、個人の保険加入義務、企業の保険プラン提供義務、税金による補助、Medicaid拡充など、MA州と連邦政府は同様の制度変更を行っている。 個人の保険加入義務制度はうまく回っている。
MA州の保険料は高止まりしており、全米平均よりも12%高い。
無保険者が少なくなればコストは低下するはずだったのに、実際には救急診療が増えており、これが保険料の上昇を招いている。
無保険者は減ったものの、Exchangeで保険加入してもなかなか医師がみつからないという実態がある。そのため、病気になると保険に加入し、治ると離脱するということを繰り返している州民が、この3年間で4倍に増えている。 確かに短期保険加入を繰り返している人達はいるが、それによる保険料押し上げ効果は、たかだか0.5〜1.5%ポイントであり、他の保険加入者に転嫁可能なレベルである。
その理由は、
・保険者に加入拒否権を認めていない
・加入しない個人へのペナルティが軽い
MA州では定められなかったものの、連邦の医療保険改革では、一年間のうちExchange加入できる期間("open enrollment period")を定めることができるようになっている。また、ペナルティを高めることもできる。
短期加入者の平均保険料は$400なのに対し、彼らの保険償還請求額は平均$2,200/Mにのぼる。
無保険者割合は3%程度に低下したが、新規加入者の68%は多額の補助を受けている。
小規模企業の間では、コスト増に耐えかねて、医療保険プランの提供を諦め、Exchangeによる加入に移行する傾向が強まっている。
ところで、二人が同じ表現を使用しているところがある。"Game the System"である。その意味とは、
"to use rules or laws to get what you want in an unfair but legal way" (Longman)
である。ここでは、健康な間は保険に加入せず、病気の間だけ短期加入を繰り返す行為を指している。これでは、保険原理は成り立たない。保険会社というよりも、他の保険加入者の納得が得られない。

MA州はもちろんのこと、連邦もこうした行為がなるべく起こせないように工夫をすべきであろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/連邦レベル

7月24日(2) アメリカ救済法案成立 
Source :House Passes Jobless Benefit Extension (New York Times)
22日、下院もアメリカ救済法案(HR 4213)を可決した。最終的に共和党からもかなりの賛成票(31票)が投じられ、大差での可決となった。ただし、民主党からも反対票が10票入っている。Obama大統領は、即日署名し、法案は成立した。

特別失業給付の延長は、その財源を巡って民主党、共和党の論戦が続いた。すなわち、 というものである。

今回の給付期間延長は、11月末まで。つまり、中間選挙の直後に期限がやってくる。嫌でも選挙期間中に、この問題を議論せざるを得ない状況となる。上記sourceでも、『中間選挙の重大な争点の一つ』と位置づけている。しばらく制度の不安定さは残りそうである。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「中間選挙(2010年)

7月22日(1) 連邦政府年金への移行を模索 
Source :Facing Pension Woes, Maine Looks to Social Security (New York Times)
当websiteで何度も紹介している通り、@財政の急速な悪化、A資産価値の低下、の両面から、州政府職員を対象とした年金プランは大幅な積立不足に陥っており、各州政府は様々な対策を検討している。その中で、Maine州とLouisiana州は、州政府職員年金プランから一般的な公的年金(Social Security)への移行を検討しているそうだ。

アメリカの公的年金制度では、州・地方政府職員については、連邦政府と州政府等自治体との契約により職員の加入・非加入が決まる(管理人作成の「Social Security Programs in the US 〜Overlook〜」P.7参照)。調査した2001年10月時点で、州政府・自治体職員の75%が公的年金に加入していた。裏を返せば25%の州政府・自治体職員は、公的年金に加入していなかったことになる。州政府等が独自の制度設計により、手厚いプランを用意することにより、公的年金よりも条件がよくなるため、わざわざ公的年金に加入する必要性がなかったからである。

上記sourceでは、Maine州とLouisiana州以外にも、California, Illinois, Texas, Alaska, Colorado, Massachusetts, Nevada, Ohioなどの各州で、公的年金プランに加入していない職員がいることが紹介されている。

しかし、すべての州がMaine州、Louisiana州のように、雪崩をうって公的年金に移行しようとしているわけではない。それは、公的年金に移行すれば、今度は"Social Security Tax"を負担しなければならなくなる。しかも、雇い主である自治体と職員が折半で負担することになる。

自治体としては、多少負担は軽減されるものの、やはり大きな財政負担が伴う。しかも、これまでのように勝手な投資運用ができなくなるため、保険料率の負担感は増す。また、職員の方からしてみると、"Social Security Tax"が源泉徴収されることになるため、可処分所得は低下し、やはり負担感は高まる。

従って、そう簡単には移行を決められないのである。

ただし、移行に伴う従業員のメリットは小さくない。それは、ポータビリティが高まるからである。今までは、独自の州政府年金プランに加入していたがために、引っ越しや転職により州外に出てしまった場合、州政府年金プランの受給権は不十分、連邦政府公的年金も受給資格を満たさない、といった状況が生じかねない。この点は大きな改善となり得る。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「公的年金改革

7月22日(2) 失業給付延長法案前進(2) 
Source :Senate votes, 60-40, to advance jobless benefits legislation (Washington Post)
アメリカ救済法案(HR 4213)の審議が続いているが、これにより、 が確定した。夏休み、中間選挙のスケジュールを考えると、これらを復活させる時間的余裕は見当たらない。失業率が高止まりの中、医療関係のコストが失業世帯を苦しめることになりそうである。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

7月21日 失業給付延長法案前進 
Source :Jobless Benefit Extension Clears Senate Hurdle (New York Times)
失業給付の延長策を含むアメリカ救済法案(HR 4213)について、審議打ち切り動議が可決され、21日にも可決・成立の可能性が高まった。

投票結果は60対40で、ギリギリの成立であった。いつもの通り、共和党からME州選出のSnowe、Collins両上院議員が賛成に回り、民主党からNelson上院議員が反対に回った。

延長期限が切れてから既に50日を経過している。この空白期間のために200万人が給付を受けられなくなっているという。まさに政争の犠牲になったといえよう。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策