7月10日 4 days a week Source : Utah State Workers Move to Four-Day Week (Plansponsor.com)

Utah州職員は、月〜木の勤務時間を延ばすかわりに、金曜日を休みにし、週4日制にシフトする。目的は温暖化対策だ。これぐらい思い切ったことをしないと、ライフスタイルの変更はできまい。

また、管理人の在米経験によれば、DCの金曜日の午後は、ほぼ休みとなっていた。家族と昼ごはんを一緒にする、早く帰って公園で子供と遊ぶ、といった光景がたくさんみられた。私などは、金曜日の午後に家に帰ってこないというだけで、少し不思議がられていた面もあるくらいだ。そういった状況からの金曜日全休は、自然の流れかもしれない。

昔、"Eight Days a Week"なんて曲もあった時代からすれば、ずいぶんと変わったものである。

7月9日 年金基金の損失拡大 Source : Pension plans suffer huge losses (CNNMoney)

世界的な株価低迷と信用不安により、年金基金の損失が拡大しているという。上記sourceによれば、Mercerの試算では次のような結果が示されている。
  1. 昨年秋以降、S&P1500の年金基金資産で総額$280Bの損失が生じた。

  2. 2007年10月末で、資産総額が$1.7Tであったが、17%減少して今年6月末で$1.4Tにまで縮小した。

  3. 2009年の年金コストは、通常20〜30%の増加となる見込みである。
再び、DBプラン凍結、廃止の流れが強まりそうである(「Topics2007年7月14日 企業年金の地殻変動」参照)。

7月8日 年金基金が原油高の一因 Source : Pension Funds Boosted by Oil (Washington Post)

年金基金による投資(投機?)が原油の値段を引き上げている、との議論が激しくなっているそうだ。上記sourceのポイントは次の通り。
  1. 原油をはじめ商品先物に積極的に投資している年金基金がある一方、バブル崩壊を恐れて投資を控えている基金もある。

    年金基金投 資 行 動
    CalPERS昨年はじめから原油その他商品先物に$1.1Bを投資。
    当時と比較すると収益率は68%に達する。
    Fairfax County(VA) Retirement Systems原油その他商品先物に投資し、最近1年間の収益率は61%。
    Montgomery County(MD) Employees' Retirement System$2.7Bの資産のうち5%を、株式から商品先物に振り替えた。
    Virginia Retirement Systemどの商品がバブルになっているのか判断がつかないため、商品先物には投資していない。

  2. 年金基金の立場からすると、収益の改善に役立つのであれば、どんな商品でも投資するべし、との考え方になる。

  3. しかし、長期運用目的の年金基金が、原油その他商品先物に投資することが適切なのかどうか、議論が分かれている。

  4. また、原油高等で収益を激しく圧迫されている航空業界は、年金基金の投資行動を厳しく非難している。

  5. このような議論を受けて、連邦議会でも議論が過熱している。
まさか年金基金の商品先物への投資を禁止する、なんてことはできまい。サブ・プライム・ローンの証券化と同様、投資家としての年金基金が適切にリスクを評価しているかどうかを当局が確認する、という常識的なことしかできないのではないだろうか。

7月5日 Kennedy議員の執念 Source : Kennedy leads renewed effort on universal healthcare (Boston Globe)

Kennedy上院議員が、連邦議会、医療関係者との連続会合を開催するという。Obama上院議員が大統領に就任した場合、民主・共和両党で合意できるところを固めておき、抜本的な医療保険改革を推進できるようにしておきたい、との意向である。Clinton政権時代に皆保険制度導入案が成案寸前で頓挫したのは、連邦議会との意思疎通の悪さも一因となっていたといわれており、今回、Obama政権が樹立された時にそうしたしこりが残らないように配慮しているそうだ。

Kennedy上院議員といえば、脳腫瘍で入院中である(「Topics2008年5月21日 Kennedy上院議員入院」参照)。それでも、医療保険改革の絶好機と執念を燃やしているようだ。

このKennedy上院議員の情熱にほだされて、皆で頑張りましょう、となればハッピーエンドなのだが、そうは問屋が卸さない。同じ連邦上院のMax Baucus上院議員が、同様のラウンドテーブルを企画しているし、Ron Wyden上院議員も"Healthy Americans Act"(S. 334)の推進を強力に図っている(「Topics2008年5月19日 Healthy Americans Act」参照)。

上院だけでもリーダーになろうとする勢力が3つもあり、しのぎを削っている。こうなると、入院中のKennedy議員は顔を見せられないだけ不利になる。

こうしてみると、昨日の「神様でもわからない」というのが現実的な見方なのかもしれない。

7月4日(1) MA州タバコ増税 Source : Mass. cigarette tax jumps $1 per pack (Boston Globe)

1日(火)、MA州のタバコ増税法案に署名がなされ、即日施行された。これにより、タバコ税は一箱$1増税の$2.51となった。6月30日の州議会投票では、下院93vs52、上院26vs9の圧倒的多数による可決であった。

タバコ増税による増収額は$174Mで、ほとんどは州皆保険法に基づく医療費支出に向けられるものとみられている。


7月4日(2) 神様でもわからない Source : Sense of crisis prevails in US healthcare (Financial Times)

アメリカの医療保険制度は崩壊している。誰もがそう認識していながら、総合的な改革は進捗しそうにない、という話が上記sourceに書かれている。その象徴的な文章が次の2つである。 『神のみぞ知る』とは言うが、いつ医療保険改革ができるのか、「神様でもわからない」という状況のようだ。

上記sourceで紹介されている事例の中で、一つ気になる言葉があった。"Under-insured"である。保険には加入しているものの、低所得のために自己負担(窓口負担)が払えずに破産してしまう人が多いというのである。ある調査によれば、個人破産の約半分は医療費請求が原因であった。

思うに、アメリカの医療保険は民間プランであり、所得再分配の考え方がないためではないだろうか。日本では保険料率が定められて、所得比例で保険料を負担している。また、自己負担も、高齢者医療のように、所得に応じた負担になっている場合がある。

他方、アメリカでは保険プランによって保険料は異なるものの、同一のプランに加入すれば、定額保険料となる。つまり、所得による負担の差異はない。

こういう状況では、Medicaidに加入できず、医療保険に加入して保険料を負担するのが精一杯で、一旦病気になってしまうと自己負担分までも払えないという所得層が出てくる。こうした人々が"under-insured"と呼ばれているのだろう。

つくづく考えさせられる事例である。

7月3日 SPLから雇用喪失へ Source : Deepening Cycle of Job Loss Seen Lasting into '09 (New York Times)

アメリカの労働市場が軟化している。サブ・プライム・ローン問題がついに労働市場に波及してきたようである。その波及ルートは、主に2つと考えられる。
  1. SPL→住宅価格の急落、住宅着工の減少→金融機関の損失拡大→貸出態度硬化→住宅、車、クレジット販売の低迷

  2. SPL→ドルに対する信認低下→ドル安、資源・食料品高→物価上昇→消費低迷
この両方の波をもろに被ったのが車である。ローンが厳しいうえに、燃費の悪い大型車に傾斜していたつけが回ってきている。6月の自動車販売で、Ford28%、トヨタ21%減、GM18%減となった。

Big3は、当websiteで紹介してきたように、リストラ進行中のうえに、VEBAへの巨額の拠出を控えている。これらに加えて販売高低迷が続けば、トリプルパンチとなる。当然、レイオフはさらに拡大することになろう。

こうした流れを受けて、GM、Fordの株価も急落している。。 ⇒ GM  Ford

また、消費の低迷予想を受けて、Starbucksまで12,000人、7%の雇用削減策を公表している。こうした動きは、これから消費財・サービス産業に広がっていくだろう。上記sourceでは、2009年秋まで労働市場の悪化は続き、失業率は6.4%まで高まるとの予測が紹介されている。

7月2日 買収防衛のためのベネフィット削減 Source : Anheuser-Busch to cut health, pension benefits (Forbes.com)

InBevAnheuser-Buschに対する敵対的買収提案が話題になっている。アメリカ在住時期、同社のビールには大変お世話になったので、動向が気になります。

そのAnheuser-Buschが、Blue Ocean計画というコスト削減策を打ち出し、株価向上に役立てようとしている。そのコスト削減策の中に、ベネフィット関係の削減案も含まれているという。
  1. 年金プランにある一時金払いの金額を2009年までに5〜6%、2012年までに約15%削減する。

  2. 医療保険プランに対する従業員負担割合を、現在の約21%から2009年までに25%に高める。

  3. 早期退職者を募集し、8600人の従業員のうち、10〜15%の応募を見込む。
InBevの買収提案は一株$65だが、Anheuser-BuschはBlue Ocean計画により一株$66を目指すという。実際の足許の株価動向をみると、Blue Oceanが公表された翌日の7月1日は、むしろ下落し、$62を切っている。

アメリカでも、敵対的買収は人材の遺失を伴うことから、簡単には評価されない。それを防衛側であるAnheuser-Busch自らが人材流出を引き起こすような対策を打つ、というのは解せない。市場の評価が高まらないのも当然と思われる。

7月1日 利益相反@ERISA Source : Will MetLife v. Glenn Change the Landscape of Employee Benefits Litigation? (Alston & Bird LLP)

ERISAにおける利益相反問題は、当websiteでも重要問題として取り上げてきている。

さる6月19日、利益相反をめぐる連邦最高裁の判決が示された。ポイントは次の表の通り。
争  点判  決
ERISAプランの運営者とベネフィットの評価者の間で利益相反の問題が生じうるか?生じる可能性がある。
仮に生じうるとすれば、司法判決でどの程度考慮すればよいのか?数ある要因の一つとして考慮する。
どちらも当たり前のことのように思えるが、こうした司法判断が真剣に議論されている。特に、争点2については、司法判断が広がったのではないか、今後様々な判決が出てくるのではないか、と大騒ぎになっているようだ。

本当に永遠のテーマとなりそうだ。