Topics 2003年6月21日〜30日     前へ     次へ


6月21日 Medicare改革に関する政治への信頼度
6月23日 Medicare改革に伴う歳出増
6月25日(1) 規律と信頼 Medicare改革
6月25日(2) Howard Deanの皆保険構想
6月26日 Federal Funds Rate引き下げに疑問
6月27日 FASBの新ルール
6月28日 処方薬Medicare改革法案が両院で成立


6月21日 Medicare改革に関する政治への信頼度
 Source : National Survey of the Public's Views on Medicare (Kaiser Family Foundation/Harvard School of Public Health)

処方薬Medicare改革の関する議論が大詰めを迎えている中で、上記の世論調査が公表された。その概要は次の通り。

高齢者は現行のMedicare制度にかなりの程度満足しているのに対し、現役はそれほど満足していない。

KAISER1


Medicareのプロバイダーとして、現行通り政府が好ましいか、民間プランが好ましいかについて意見を聞くと、高齢者は現行制度、若くなるほど民間プランを好んでいることがわかる。

KAISER2


処方薬を保険でカバーする場合、Medicare制度に含めて提供するのがよいか、全く別の民間プランを通じて提供するのがよいかという問いに対しては、ほぼ全世代がMedicareを通じた提供を支持している。

KAISER3


Bush政権が提案している、高齢者の処方薬に関する割引カード制度は、かなりの程度支持されている。

KAISER4


また、Medicareで処方薬をカバーする場合、連邦政府による薬価抑制策を望む声が強い。

KAISER5


Medicare改革について、AARPに次いで、Bush大統領への支持率が高い。民主党連邦議員、共和党連邦議員より高い支持を得ているところが興味深い。逆に、製薬会社、民間医療保険などへの信頼は低い。

KAISER6


こうしてみると、議会両院で、共和党議員が処方薬保険のプロバイダーに民間保険会社をあてようとしているのは、国民からの支持が得にくいようだ。Bush大統領からも提案されておらず、共和党議員のこの提案をBush大統領が落とすことができれば、またまたBush大統領への信頼が高まることになろう。穿った見方をすれば、やらせで共和党議員のやりたいようにさせておいて、最後は法案成立のためにBush大統領が収拾を図るというシナリオのような気もしてくる。

そのシナリオ通りにことが運び、Medicareによる処方薬費用のカバーや割引カードが実現すれば、再び、「Bush大統領のポイント・ゲット」ということになる。民主党の大統領選候補者達がいくら大風呂敷を広げて「Universal Health Care」を主張しても、Bush大統領は、小幅ながらも確実にポイントを積み重ねている。また、そうした積み重ねが、信頼感として世論調査に表れている。国民の関心が高い医療の分野で、しかも高齢者を対象としたMedicare改革で、民主党連邦議員がBush大統領に遅れをとっているという結果は、民主党幹部にとっては相当の衝撃であろう。

一方、議会では、民主党議員による修正法案が次々と繰り出されては否決されている。共和党サイドは、10年間で4000億ドル以上は支出できない、という主張で突っぱねているそうだ。この点については、Bush大統領からこの予算制約を守るようにと強い指示が出されているそうだ。

このように激しい応酬が繰り広げられているにも拘らず、上院Majority LeaderであるBill Frist(R-Tenn.)は、「月末には80票の賛成を得て上院を通過する」と極めて楽観的な見通しを示している。また、下院共和党議員も、大統領の支持を得られていない以上、Medicareと民間プランとの競争導入は、来週の法案審議の際に落とされることになるだろうと見ている。

なお、参考までに、次のリンクを張っておく。
両院法案の正確な比較表
両院法案による保険カバレッジの比較表


6月23日 Medicare改革に伴う歳出増 Source : The Effect on Direct Spending and Revenues of S.1, the Prescription Drug and Medicare Improvement Act of 2003 (CBO)

このところ連日のように、同じ話題(Medicare改革)が続いているが、それだけアメリカでは注目されている話題だということだ。上記Sourceは、CBOが、上院法案(原案)による歳出入の影響を試算したものである。

内容について特にコメントはないが、立法過程で、議論の真っ最中に、こうした中立的機関から財政的な影響度を数値として出してくることができるアメリカ議会には、本当に感心する。

上記試算のポイントとなる、処方薬に関する歳出への影響について引用すると、次のような表となる。ご参考まで。

CBO

6月25日(1) 規律と信頼 Medicare改革 Source : Public supports private sector options in Medicare (Galen Institute)
Medicare改革について、もう一つ世論調査が公表された。この世論調査は、今月18〜21日にかけて実施されたものであり、連邦議会での議論の真っ最中に実施されたものである。その意味で、両院の議論の模様を反映した最新の世論調査とも位置付けられるため、注目されている。

そのポイントは次の通りである。

@Medicareのbenefitsを民間保険プランを通じて提供することもできるようにすることについて、全体の82%、高齢者の67%が賛成している。

A上院で議論されている処方薬をMedicareでカバーする方法について、現在持っている処方薬カバー保険よりも悪くなると考えている高齢者は74%に達する。

B現在処方薬カバー保険に加入していない高齢者のうち、提案されている新制度に加入するという人は43%。

C66%の人は、「政府が処方薬保険を提供するようになれば、現在加入している民間保険がなくなり、政府に依存せざるを得なくなる」と考えている。

D医療・処方薬保険の提供者として、民間プランを信頼すると回答したのが54%、政府が関与しているプランを信頼すると回答したのが34%であった。高齢者に限定すると、両者は真っ二つに分かれる。

E51%の人達は、政府が処方薬保険に関与することになれば、処方薬の選択は制限されるようになると考えている。

F77%の人達(80%の高齢者)は、「処方薬をMedicareの対象に含める際、制度を維持し、将来世代に過重な負担を強いないために、高齢者本人も何らかの負担をすべきである」と考えている。

G高齢者のために処方薬の価格を下げることができるのは、政府であると考える人が44%、民間医療保険プランであると考える人がやはり44%であった。

H製薬会社は将来に向けて革新的な治療薬の開発を続けることが重要と考えるのが49%、開発済みの薬の価格を下げる方が重要と考えるのが40%であった。

IMedicare対象年齢の引き上げについては、賛成、反対が半々であった。


内容的には、共和党の主張をより色濃く反映させた下院案をサポートするような結論となっている。なお、世論調査の実施を依頼したGalen Instituteは、基本的には市場信奉主義だが、調査対象を見ると、民主党支持39%、共和党支持35%となっているので、ほぼ偏りは排除できていると考えてよさそうだ。

上の結果を見て、持った感想が、タイトルにある「規律と信頼」だ。

まず、「規律」である。上記Fは、まさに規律の表れである。しかも、高齢者の方が高い割合を占めているところが、さらなる驚きである。日本ではこうはいかない。Benefitは少しでも多く、burdenはできる限り少なく、というのが実情だ。これを政治も追認(追従)する。その積み重ねが、公的年金の将来負担増450兆円、国債残高450兆円である。何とも「規律」のない話である。

次に、「信頼」である。あるサービスのプロバイダーとして、民間と行政府のどちらを信頼するか、という問いに対する結果が、上記@、Dである。日本では、まず間違いなく、行政府に軍配が上がるだろう。日本の民間セクターのふがいなさとも言えるが、アメリカ固有の事情も理解しておく必要がある。

住民サービスを提供する自治体が財政困難から行政サービスの停止、さらに悪化すれば破産ということが起こり得るのがアメリカである。今年5月、オレゴン州の公立学校は、通常より一ヶ月早い夏休みに入った。理由は、州の教育予算が底をつき、教員の給与を払えなくなったというものだ。そういう自治体に、大事な医療保険プロバイダーを任せたくないと国民が思うのも自然である。アメリカ国民の民間セクター好きにも、こんな背景があるのかもしれない。

6月25日(2) Howard Deanの皆保険構想 Source : Universal Healthcare (Howard Dean)
民主党のHoward Dean(former Vermont Governor, D)が、さる23日、正式に2004年大統領選候補者として名乗りをあげた。彼は、元医師であり、Vermont州知事でもあることから、皆保険制度については、自分の最も得意とする分野であり政策課題であるとの自負を持っている。その彼の皆保険制度提案の概要も、先週、明らかになった。そのポイントは次の通り。

  1. 新提案の皆保険制度は、年間883億ドルが必要。これは、Bush大減税の半額にもならない。

  2. 25歳以下の国民の無保険者をなくすため、既存のMedicaid、CHIP(State Children's Health Insurance Program)の対象者を拡大する。この措置により、1,150万人に新たに保険が提供されることになる。

  3. 既存のFamilies and Children Health Insurance Programの対象者を、貧困基準185%まで拡大する。これにより、新たに1,180万人の現役労働者とその家族が保険対象者となる。

  4. 勤労所得の一定割合以上の保険料負担については、税額控除を提供する。これにより、550万人に保険が提供される。

  5. 企業が医療保険を提供する仕組みも残しておきたいが、企業に膨大な資金を提供する必要もない(注:Gephardt提案への対抗)。具体的には、従業員50人以下の企業の従業員に、連邦政府職員プランへの加入を認める。医療保険プランを提供している企業をよき企業市民と認める。企業への様々な税制優遇措置は、納税者と企業の間の契約とみなすべきである。(注:医療保険プランを提供しない企業には税制優遇措置を制限する、との意か?)

そして、ご丁寧に、自身の提案とGephardt提案の比較表も、次のような形で掲載されている。

Dean, Gephardt Health Insurance Plans
Side by Side Comparison


  Dean Plan
Data from Lewin Group Analysis for Dean Campaign
Gephardt Plan
Data from Thorpe Analysis for Gephardt Campaign
Newly Insured
(Out of 41 million)
30.9 million people
30.4 million people.
Net New Government Cost
(Per year, at full implementation)
$88.3 billion
$214 billion
Employer Mandates
  • Employers offering insurance must pay their share of premiums for two months after employees leave a job.
  • Family plans of employers offering insurance must cover dependents up to age 24.

All employers must offer insurance to all employees working 20 hours/week, and must pay at least 60% of the premiums.

New Net Business Costs Of Employer Mandates
$2.9 billion

$36 billion
$90 billion in new mandated business expenses, partially offset by 60% tax credit.

State Health Insurance Program Expansions

SCHIP replaced by Family & Children's Health Insurance Program, open to:

  • All children and young adults through age 24, up to 300% of poverty level, and
  • All adults ages 25-64, up to 185% of poverty level.

Parents of children already eligible for Medicaid and SCHIP made eligible for those programs

Individual Subsidies for Health Insurance

100% refundable, advanceable tax credits to uninsured, for premium payments in excess of 7.5% of adjusted gross income. 25% refundable tax credit for premium payments by workers in poverty, reduced credit for workers up to 200% of poverty level.

New Insurance Options For Individuals

New Universal Health Benefits Program, identical to the insurance program for members of Congress and federal employees, open to:

  • Individuals without access to group insurance (such as employer-offered insurance);
  • Self-employed;
  • Small businesses under 50 employees.
Individuals 55 to 64 can buy into Medicare, at full cost.

Payments to States

Federal incentive payments to offset 100% of new state costs for Family Health Insurance Programs.

Federal payments to cover 60% of state costs of insuring state employees



議会でのMedicare処方薬改革、民主党大統領候補者の皆保険構想が同時並行で進んでいる。Bush大統領への支持率にどう影響してくるのか、注目していきたい。

6月26日 Federal Funds Rate引き下げに疑問 Source : Press Release (June 25) (Federal Reserve)

25日、2日間の議論の後、FOMCは、Federal Funds Rate(FFR)の0.25%ポイント引き下げを発表した。ステートメントのポイントは、このプロが解説してくれているので、参照されたい。

Intended federal funds rate
Change, 1990 to present
Change
(basis points)
Date Increase Decrease Level
(percent)

2003


 
June 25 ... 25 1.00

2002


 
November 6 ... 50 1.25

2001


 
December 11 ... 25 1.75
November 6 ... 50 2.00
October 2 ... 50 2.50
September 17 ... 50 3.00
August 21 ... 25 3.50
June 27 ... 25 3.75
May 15 ... 50 4.00
April 18 ... 50 4.50
March 20 ... 50 5.00
January 31 ... 50 5.50
January 3 ... 50 6.00

2000
     
May 16 50 ... 6.50
March 21 25 ... 6.00
February 2 25 ... 5.75

1999
     
November 16 25 ... 5.50
August 24 25 ... 5.25
June 30 25 ... 5.00

1998
     
November 17 ... 25 4.75
October 15 ... 25 5.00
September 29 ... 25 5.25

1997
     
March 25 25 ... 5.50

1996
     
January 31 ... 25 5.25

1995
     
December 19 ... 25 5.50
July 6 ... 25 5.75
February 1 50 ... 6.00

1994
     
November 15 75 ... 5.50
August 16 50 ... 4.75
May 17 50 ... 4.25
April 18 25 ... 3.75
March 22 25 ... 3.50
February 4 25 ... 3.25

1992
     
September 4 ... 25 3.00
July 2 ... 50 3.25
April 9 ... 25 3.75

1991
     
December 20 ... 50 4.00
December 6 ... 25 4.50
November 6 ... 25 4.75
October 31 ... 25 5.00
September 13 ... 25 5.25
August 6 ... 25 5.50
April 30 ... 25 5.75
March 8 ... 25 6.00
February 1 ... 50 6.25
January 9 ... 25 6.75

1990
     
December 18 ... 25 7.00
December 7 ... 25 7.25
November 13 ... 25 7.50
October 29 ... 25 7.75
July 13 ... 25 8.00
A basis point is 1/100 percentage point.


これをみてもわかる通り、2001年1月から、通算13回で、合計5.5%下げたわけだ。確かに、今回の景気下降局面は、2001年3月から続いており、いまだ反転のメドは立たない。また、失業率も一進一退を繰り返しながらもじりじりと上昇している。イラク戦争も下火になり、国民の目は、身近な生活、つまり、景気や医療問題に移りつつある。

また、デフレ懸念に早目に処するということも必要となっていると言われている。デフレが現実のものとなれば、賃金の引き下げ、不良債権の大量発生と、経済に大打撃を与える可能性がある。

そうした中で、景気の上昇を確実にするためにFFRを引き下げる、というのは一つの手段であろう。

しかし、どうも本件に関しては、私はどうも納得がいかない。昨年11月の切り下げの時にも、少し記したことがある(Topics「2002年11月8日 Federal Fund Rateの切り下げとProductivity」参照)が、今回は、ますますその気持ちが強くなっている。

その最大の理由は、やはりproductivityの堅調な伸びである。



FOMCもこれは認めるところである。これだけ堅調な動きを示しているのに成長率に繋がってこない、失業率改善に繋がってこない、という苛立ちがあるのだろう。しかし、今のように金利が低い水準の中で、多少の金利を動かして、どれだけの効果があるのか。住宅ローン金利やオートローンも下がり切っており、需要をさらに掘り起こす効果がどれだけあるのだろうか。もう少し長期的に結果を待ってもよいのではないかと思う。

むしろ、金利引下げのマイナス効果は、よりはっきりと出てくるだろう。大企業が抱える企業年金の積立不足は、金利引下げのためにより大きくなる。これは最終的には企業利益、株主利益、従業員報酬の引き下げ効果をもたらす。

また、アメリカ社会では、non-profit機関が多く存在し、そこでの雇用も多い。Non-profit機関の多くはファンドの運用益によりランニングコストをまかなっている場合が多いため、金利が低下してくれば、活動を縮小せざるを得ず、雇用を維持できなくなる。

また、これは直感的なものでしかないが、一般家計においても、金利引下げが必ずしも支出増大をもたらすとは限らないのではないか。Enron事件以来、アメリカ労働者が退職後所得にと期待してきた401(k)が紙くずになったり、そこまではいかなくても資産の目減りは激しい。退職後の所得を確保しなければならないという脅迫観念を持った労働者、特に中高年の労働者達は、退職後所得の防衛策として、@退職を遅らせ、予定より長く働く、A支出を抑えて貯蓄を増やす、といった行動に出ている可能性がある。こうした中で金利が下がれば、より支出を抑える方向に向かうことになる。

そうした疑問をもちながら、FFR引き下げのニュースを見ると、この長引く景気低迷で、アメリカ金融機関の不良債権が急速に増大しており、その救済策として金利をさらに下げているのだろうか、とも疑いたくなってしまう。あ、それは日本のことか。

6月27日 FASBの新ルール Source : Accounting board to require quarterly reports on pensions (AP)
DBプランに関する情報公開の改善策を検討してきたFASB(Topics 「3月14日(1) アメリカのDBプランの課題」参照)だが、25日、仮決定を行った。

そのポイントは次の2点。

  1. DBプランに関する財政情報を四半期ごとに公表する。その際、年間拠出額に関する変動見込みも含めなければならない。

  2. アナリスト等が公表を要望していた、市場金利、株式市場の変動に伴う年金資産、給付債務の見込み額については、公表を求めないこととする。
上記2については、あまりにも変動が大きく、市場に間違ったメッセージを伝える恐れがある、との理由から見送られた、とのことだ。

FASBは、8月までには詳細な規定を公表し、今年末には発効させたいと考えているそうだ。

企業年金の情報も四半期ごとに公表されることになり、ますます財務とDBプランの密接な連関が必要となることとなった。やがて日本にも影響が及んでこよう。

6月28日 処方薬Medicare改革法案が両院で成立
27日、上院、下院とも、独自のMedicare改革法案を可決した。


報道等によれば、依然としてホワイトハウスは修正を求めているそうだ。来週から両院協議が開始され、来月中には署名、という可能性が高まってきた。


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